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Slaughter  作者: はく
19/26

Psycho Case5:CHAINSAWS

久々に目覚めが良い朝だった。

狭苦しく寝ていたのが嘘みたいだ。

ゼオは小さく蹲りどこか幼い子供のように、まだぐっすりと寝ていた。

こう見れば大人しくて可愛いもんなんだけどな…口を開けばルーカさんの言うとおりのクソガキになる…


「ほら、もう昼過ぎだよ、起きて」


ゼオの肩を揺さぶる。


「う…ん…ん…?」

「起きろって」

「バーカ…んがー…」


前言撤回


ダァン


2人はいつも通りカチカチのパンをかじりながらニュースを眺めていた。


「まさか人を起こすのに銃で頭ぶち抜く奴がいたとは…」

「フルオートじゃないだけマシでしょ」

「ありがとうございました。明日から僕もそうします」


『次のニュースです。昨夜またもや手足を引きちぎられた男性を発見しました。男性は意識不明の重体ですが命に別状は無いようです。警察は同一人物の犯行と見て、調査を進めております。』


「ひーおっかねぇなー」

「これ新聞にも載ってたよ」


ゼファーがゼオの前に新聞を投げる。

ゼオは目だけを新聞に向けた。


「あらホントだ、なんも読めねぇ」

「そうだった…まったく…まぁどうせ俺達が片付けるんだろうに…」


文句を言いながらゼファーは冷蔵庫へ向かう。


「サイコやろーばっかだな」

「人の事言えないよ俺達も…あっ」

「どうした?」

「パンの賞味期間一週間前だった」

「下痢ショットガンぶちかましたろか?」



午後7時 東地区 カジノ イルミナティ



「さあ皆さん!今日は巷で噂になっている物を入手してきました!」


仮面で目元だけを隠した男が言う。


「これがその、スノーヘブン!吸引するとたちまち気分が高揚!汚い言葉を使うなればぶち上がります!!」


男が袋に入った薬を掲げる。

拍手喝采。


「さぁ!皆さん楽しみましょう!」


ダァァン


二階にある中央ドアが勢いよく開く。

そこにいたのは既に血まみれのゼファーとゼオ。

結局のところニコルズはカジノのハックに失敗し、2人は強行突破としてカジノを訪れていた。


優秀な警備員がドアから離れた所々に2人配置されており、突然の出来事に無言で懐からマチェットを出し、ゼファーとゼオの制圧にかかる。


パララララララ


「きゃぁぁぁぁぁ!」


銃声に、同じく仮面を被った女性客が騒ぐ。

警備員2人は蜂の巣になり、出血以外動く事は無くなった。



ピィィィィィィィ


「みなさぁーーーん!パーティーを楽しみましょーーーー!!」


手すりに脚をかけ、2人は仮面の集団に向かって飛ぶ。


パラララララララ


空中で銃を集団に打ち込む。


「逃げろぉぉぉ!」


集団が騒ぎ出し、両サイドの階段から外へ逃げようとする。


「ゼファーそっち頼んだ!」

「OKー!」


ゼファーは頷き、空中から落ちている体勢のまま、身体を回転させ、腕に黒煙を纏わせる。

そのまま腕を振り、黒煙を先ほど脚をかけた手すりに伸ばし、吸い込まれる様に手すりに引き戻る。


「さぁさぁ!パーティーは始まったばかりだせぇーー!」


地に降りたゼオは高周波ブレードを出し、大勢に斬りかかり四肢が飛び血が舞う。


「さぁ戻って下さい」


ドアの前に戻ったゼファーは、両サイドからくる人に向かって銃を突きつける。


パラララララララ


「戻れ!死ぬぞ!」

「馬鹿か!?戻っても斬られるぞ!」


パラララララララ


「ぐぁぁぁぁぁ!」


戻らずに逃げようとした人が、どんどん 物 になっていく。


「警備はどうした!?」


先ほど薬を掲げた男が叫ぶ。

だが他の警備は既に2人の手により、この世にはいない。

逃げ惑う人はもう半分もいないだろう。

逃げるよりも皆、頭を丸め震えて命乞いをしている。


「ふぅ、ざっとこんなもんか」


トッ


ゼファーが上から降りてくる。


「支配人はどこだ」


震えてる男に問う。

男は震えた手で薬を持った男を指差す。

2人は支配人である人物に振り向く。


「ひっ…来るなっ来るなっ」


腰が抜けた支配人は後ずさる。


「や、やるっ、これならやるっ」


2人の前に薬が投げ渡される。


「ありがと、踏んじゃおー」


ゼオは薬を踏み、支配人に近づく。


「ひぃぃぃぃ!」


支配人の前に行きしゃがみこんだ。


「お前、雇われなんだってな」

「そうだっ俺は上に言われてっ!」


怯えた男は、震えた声で言う。


「じゃあここのクソったれ支配人はどこだ!!」


ダッ


パラララ


隙を見て逃げ出した男をゼファーが撃ち殺す。


「ひぃ…話す!話すから命だけは…!」

「おけーおけー、落ち着いてーゆっくり、子供産んだ事あんだろー?ひっひっふーー」

「ゼオ、その人男だよ」

「支配人は…」


ブォォォォォン

ドッ

ブシィィィィィ


突然のエンジン音と共に、尋問中の男の上顎が吹き飛ぶ。


「なんじゃこりゃーーー!!俺ぁなんもしてねーぞ!」


ダッ


ゼオは後ろに飛び、ゼファーの横に行く。

ゼファーは、どこか睨んでいて、ゼオも睨んでいる方向を見た。


ブォォォォォン


睨む先にいたのは鎖のついたチェーンソーを持った金髪の2人の少年。

2人は、ブーツに半ズボン、Yシャツネクタイにベストを着てページボーイ風な服を身に纏っていた。

おかしな事に2人は目を包帯でぐるぐる巻きにして隠しており、口だけでニンマリと笑いながらゼファーとゼオの方を向いていた。


「なんだお前ら…」


ゼオが少年2人に問う。


「声だしちゃっていいのかなぁ?」

「クスクス…」


背格好からして、まだ14くらいの子供だ。

だがその口元は尋常じゃないくらい狂った笑いを帯びている。


「意味わからん事言うな」


ゼオはゆっくり横に移動する。

その動きに合わせて少年2人は顔を動かす。


「お前ら見えてんだろ!その隙間から!覗きとは趣味が悪ぃガキだな!」

「まさかぁ…こんな包帯ぐるぐる巻きで光すら見えないよぉ」

「うーん耳がずば抜けて良いってワケか…」

「あったりぃ」


ブォン


投げたチェーンソーは大きく円を描きゼオに襲いかかるがゼオはしゃがみこみ避ける。


「地獄耳ってやつか」

「そんなものじゃないよぉ」

「音の反射、それから僕達は世界が見えるんだ…」

「君は……パーカーを着ていて…手には日本刀かなぁ…」

「もう1人は…同じパーカーで手には銃、女の子かな」

「残念ながら男だ」


ゼファーが睨んだまま言う。


「そう睨まないでよクスクス」


ブォォォォォン


「Darknessをとってこいってメアリー様からの命なんだ…」

「メアリー?ははっ!おめぇらには目がねぇじゃねぇか!」

「そうしないとメアリー様にも執事さんからもご褒美が貰えないんだぁ…」


ダッ


金髪の少年の1人がゼファーめがけて走る。

ゼファーはすぐさま銃を向け撃つ。

パラララララララ


「ふっ…」


少年はジャンプし、身体を横に回転させながら銃弾を避ける。


「銃声と弾丸の微妙な音で!」


そのままチェーンソーを突き刺すように投げる。


ゼファーは当たるギリギリで身体をそらせ、銃を捨て、チェーンソーについている鎖をつかむ。


「バレバレさっ!」


その鎖を手繰り寄せるように自分が移動し、ゼファーの目の前まで移動する。


「なっ!?」

「そんな銃弾より!」


ガッ


少年はゼファーの顔に拳を食らわせる。


「ぐぁ!」


痛い…!?何故…まさか…いや考えるな…!攻撃を…!

ゼファーは鎖を掴んだ逆の手に銃を出現させ、少年に突きつけ放つ。


パラララララララ


しかし少年はゼファーの手を掴み弾道を反らす。


「熱くて!」


そのままゼファーの腹に膝蹴りを食らわす。


「ごはぁ!!」

「ゼファー!!」


ゼオが叫び、ゼファーの助太刀をしに突っ込む。

しかし少年は1人ではない。

もう1人がゼオに向かって突っ込む。


「らぁ!」


ゼオは高周波ブレードを振る。


ガシッ


しかし、素早い一撃にも関わらず、少年は振り下ろしているブレードの峰を掴む。


「硬くてっ!」


峰を掴んだまま、少年は回し蹴りをゼオに喰らわす。


「ぐっ!」


ズザァァァ


ゼオは吹っ飛び、地面に滑り込む。


「おっきいのがっ!」


ゼファーを相手していた少年が膝蹴りされてうずくまったゼファーの尻を思いっきり蹴り上げる。


「がっ!」


ゼファーは海老反りになり、ゼオの元へ吹っ飛ぶ。


「僕らは欲しいんだよぉ…」


少年2人はゼファーとゼオの方を振り向き、チェーンソーを構えた。

その口からは涎が垂れている。


ブォォォォォン


「はっ……ガキのくせにとんでもねぇ変態に仕上がってんな」


ゼオが膝をつきながらゼファーに言う。


「可哀想に…いててて…」


ゼファーとゼオは立ち上がり、高周波ブレードを出現させる。


「ガキ殺すなんて少し気が引けるんだけどな…」


ゼオはコキッと首を鳴らした。


「あのチェーンソー…強力だな…防ぎきれるか…」


ゼファーがゼオに小声で言う。


「無理無理!君たちはこれで裂かれるんだよ!」

「ちっ…小声の意味ねぇな」

「勝ち目は無い訳じゃない…」

「でもどうすんだゼファー」


ゼファーは唾を飲む。


「こうさ…」


ダッ


ゼファーが少年に向かって走る。


「きた♪」


ブォォォォォン


少年2人は一斉にゼファーにチェーンソーを投げる。


ゼファーは寸でで上に飛び2人の少年の間に着地する。


「はぁ!」


高周波ブレードを振るが避けられ2撃が来る。

それをかがみこんで避け、伏せた勢いで片方の少年の脚を蹴る。


「いったぁ…!」

「ゾディ!」


ブォォォォォン


上からチェーンソーが降り注ぐが、その場で回転し、避けて間を離す。


「めっちゃかっけぇじゃん!なにそれそんなことできんの?」


高周波ブレードを突きつけながら後ろ歩きで戻ってきたゼファーにゼオは言う。


「聴覚なんて気にせずに…技で行けばいい…1人1人はルーカさんより弱いよ…」

「ははっ!ただのガキってこったな!」

「だけど相手も2人だ…しかも痛みがあると言う事は水晶持ってる…注意して行かなきゃ」


ゼオはそれを聞き、頷き、構える。


「へ、へぇ…焦らなかったのお兄さん達だけだよ…」


少年2人も体制を立て直す。


「けど…」


ダッ


少年の1人がゼオに向かって走る。


「お兄さん達だって1人じゃ強くない!」


ブォォォォォン


懐に潜り込まれ、下からチェーンソーを突きつけられる。

身体を反らし、高周波ブレードでチェーンソーを受ける。


ヂヂヂヂヂヂヂヂヂ


壮絶な鍔迫り合い。

押された方が負けだ。


「ふぬぅぅぅぅ!」


刃から伝わるチェーンソーの振動が、身体を押す、負けじと押すも、揺れが強くなる一方だ。


キィィィン


「!!」


鍔迫り合いをしていた高周波ブレードが音を立てて折れた。

そのため、チェーンソーがそのままゼオに襲いかかる。


「うぬぁっ!」


ギリギリでかわすも、腕を掠めてしまった。


「てぇぇっ…!」


ゼオは少年と間を開け、再び高周波ブレードを出す。


「くそ…クソ女の合金でもチェーンソーは無理なのか…?」

「あっはっ」


ゼオに襲いかった少年が口を開ける。


「このチェーンソーもルーカお姉さんの合金製なんだよねぇ」


ブォォォォォン


「なんだと…」

「ゼオ…いけるか…?」

「…やべぇかも…」


ゼファーは高周波ブレードを構える。


「あのチェーンソーさえどうにかなれば…」

「同時に行こう…」

「ああ…」


ゼファーとゼオは構える。

そして脚に黒煙を纏わせた。


ダッ

ビュォォォォン


「もらいぃぃ!」

「なっ…!」


黒煙の纏った脚の速さには気づいておらず、ゼオは少年に斬りかかる。


ガァン ギギギギギギギ


再び鍔迫り合いが始まる。


「無駄だね…!また折ってやる!」

「ふっ…」


ゼオは鼻で笑う。


「そーかよ」


ゼオは片手に銃を出現させる。


「くっ…!」


パララララララ


少年は間を開け、飛び、身体を回転させ、弾丸を避ける。


「おせぇ!」


少年が着地した所に銃を構えて放つ。

しかし少年は咄嗟にチェーンソーを壁に投げて突き刺し、刃の回転を利用して瞬時に間を離した。


「ちぃ…」


ドォォン


「がっはっ!」


何か叩きつけた音がしたかと思えばゼファーがもう片方の少年を突き飛ばして、壁に激突させていた。

少年は気を失ったようだ。


「ゼファーやるぅぅ!」

「声大きいよ、聞こえちゃうでしょ?」


ゼファーがニッっと笑うとゼオの相手していた少年がゼファーに向かって走っていった。


「ゾディ!お前ぇぇぇ!」


少年はチェーンソーをゼファーに投げた。

ゼファーは高周波ブレードを飛んできたチェーンソーの鎖の間にうまく刺し、壁に突き刺した。

そして黒煙ブレードを纏わせ、少年の胸に突き刺す。


よしっ…。


ドサッ


倒れたのはゼファーだった。


ゼファーが身に起きた事態を把握するまで時間はかからなかった。


「くあぁぁぁぁぁぁ!!!」

「ゼファー!」


ゼファーの右足は膝から上が切断されていた。


今まで考えた事のない尋常じゃないくらいの激痛が走る。

ゼファーは冷や汗をかき、痛みに顔を歪ませ、少年を睨む。

少年の手には高周波ブレードが握られていた。


「丁度足元にあって良かったよぉ」


少年は高周波ブレードをゼファーに突きつける。


「僕たちの勝ちは目前だね」


ダッ


「てめぇぇぇ!」


ゼオが猛スピードで少年に突っ込む。


カァン


高周波ブレードを振るが、弾かれる。


「くっそが!」


パララララララ


銃を放つと少年は持っていた鎖を引き、自分の身を遠くへ移動させる。


「くっそ…!」


ゼオはゼファーを抱きかかえ、さらに間を開ける。


「くぅぅ…!」


激痛に声を上げるゼファーを端に座らせ傷口を抑える。


「ゼファー!大丈夫か?」


「いっ…た…ああ…」


「クソっクソっ!し、止血!」


ゼオは辺りを見回すが、止血させる物がない。


「クソ、クソ、クソ………そうだ…ゼファー、服脱がすぞっ」


ゼオはゼファーのパーカーを脱がし、切断された脚に巻き、止血をする。


「よし…これで少しは…」

「やば……ゼオ…死ぬ…痛い…」


ゼファーは涙目で俯きながら嘆く。


「待ってろ、待ってろ、あいつら…ふーっ……やってくる…」


ゼオはゆっくり少年に向かって歩き出した。

焦るな…焦るな…ゆっくり…チャンスを待て…

ゼオは少年を睨みながら近づいて行く。


「そう怒らないでよぉ」


ブォォォォォン


少年はゼオに向かってチェーンソーを薙払った。


「…けぇ!」


当たる寸前にゼオはチェーンソーの刃がない表面を殴り上げた。


「うわっ!」


少年は突然の事に驚き、体制を崩す。


「らぁぁぁぁぁ!」


その隙を見て、ゼオは少年に斬りかかる。


「くっ」


キィィィン


少年は持っていた高周波ブレードで攻撃を受け止めた。


バッ


しかしゼオは高周波ブレードを捨て、少年の頭上を飛び、少年の後頭部にあった包帯の結び目に手を伸ばし、一気に引いた。


「うわぁぁぁぁ!」


ドン


チェーンソーが地面に落ちた。

少年は手で両目を隠し、ふらつく。


「くっそぉぉぉ!」


チャラッ

チェーンソーを手繰り寄せ、ゼオの方を向いた。


「!?…なるほど…黒煙ブレードが効かねーわけだ…」


前髪の奥。

少年の左目には、水晶が埋め込まれていた。


「バレちゃったんなら仕方ないやぁ…」


もう片方の目は普通で青い目をしてゼオを見ていた。


「…見えんのか?」


その問いに少年は口を笑わせた。


「片方はね…見えてるよ…」

「片目か、まぁ好都合ってやつだ」

「何が好都合だぁぁぁ!」


少年は、チェーンソーについているエンジンをかけるワイヤーを引っ張った。


ブォォ…


「!?」


ブォォ…


少年は何度もエンジンをかけ直すが一向にかからない。


「バァァァカ!」


ダッ

ガッ


ゼオは少年に突っ込み、チェーンソーを掴んで、刃を少年の身体に突きつけた。


ドンッ


そのまま壁に押し、少年を動けなくする。


「ガァァッ!」


少年は痛みと疑問に声を出した。


「なぜっ…かからない…」

「へっ、ちゃんと自分の目で確かめてみなちゃい」


少年は右目で、チェーンソーを確認する。


「!!!」


チェーンソーの刃の根元には包帯が絡みついていた。


「なにぃ…!」

「包帯取ったら目が見えんだよな…片目だけだけど、人間ってのは聴覚より、視覚を頼りにするもんだ、お前が左手にチェーンソー持っててよかったぜ…」

「くっ…、子供の僕を殺すのか…人でなし…」

「お前らみたいなガキの頃から人を殺す人間は人間じゃねぇ…残念だが俺らの勝ちだ」

「じゃああんたらは!!」


いきなり少年が怒鳴り上げる。


「あんたらだって子供だ!僕たち以上に人を殺して生きているあんたらだって人間じゃない!」


ゼオは目を見開いて少年を見る。


「俺達はSlaughterだ、SlaughterでありDarkness、悪を滅ぼす為なら…」


ゼオはニヤリと笑い絡みついている包帯を掴む。


「や、やだ…」

「俺達は人間じゃなくていいんだよ!!」


ギギギギギギギ ブチン


ブヂヂヂヂヂィィィ


「ニギヤァァァァァァァァァァァ!」


エンジンがかかりチェーンソーは少年の身体に食い込むように回転する。


「エドォォォ!」


ゼファーに吹っ飛ばされた少年、ゾディがゼオに向かって走る。


ダァン


銃声がして、ゾディが倒れる。

撃ったのはゼファーだ。

苦痛の表情で銃を握りしめていた。


「脚を…返して欲しいんだ…」

「くぁぁぁ…!」


銃弾はゾディの脚を掠めただけだがサイコパスと言えど子供。

激痛なはずだ。


「エド……!」


ブヂッヂィィィィ


「ガッ…ゲボォァ…」


ゼオは返り血と刻まれた肉と臓器を浴びながら刻み続ける。


バギバギバギィ ブヂィ


ドチャ


骨が折れる音がして、

少年 エドの身体は左肩から右脇にかけて両断された。


「ゾ…ディ…」


血を交えた声でゾディと言うとエドは息耐えた。


「エ、エド?エド…?」


ゾディは脚を引きずりながらエドの遺体に近づく。


グシャァァ


ゼオはそれを後目にエドの遺体の頭を黒煙を纏わせた脚で踏み潰した。


「やめろぉぉぉ!」


ゾディは包帯の隙間から涙を流した。


ゼオがエドの頭を踏み潰したため、左目の水晶も破壊され、ゼファーの脚が吸い込まれる様に元に戻る。

脚が戻ったゼファーはその場で安心したように倒れ込む。


「…えせ…」


ゾディはゼオの脚にしがみつき、力が無く座り込む。


「返せよ…エドォ…返せよ…」


ドンッ ドンッ


ゼオの脚を泣きじゃくりながら叩く。

しばらくしてゾディはただ泣くだけになった。

ゼファーとゼオはその光景を足下で見ているしかできなかった。


「…死ねばいいんだ……」


ゾディは口を開いた。


「死ねばエドに会えるんだ…」


ゾディはそばに落ちていた高周波ブレードを拾い上げ自分の首に降った。


ガシッ


「…?」


首に刃が食い込まないのを疑問に思ったゾディが、高周波ブレードを見る。


ゼオが刃を握り、睨みつけていた。


「ゼオ…」

「ど…して…」


「殺させるかよ…死んで兄弟に会えるのが幸せなら俺達はそれをぶち壊す…会わせてたまっか…」


ゼオは高周波ブレードの刃を握りしめたまま、ゾディの手を叩き、手を離させる。

ゼオの手からは血が滴り落ちていた。


「どうして…僕は2人じゃないと生きてけない…」


ガシッ


ゼオはゾディの髪を掴み、自分の顔に近づけた。


「俺達が連れて行く。」

「…ゼオ!?」


またもゼオの意外な行動が見れたゼファーは驚いたが直ぐに微笑んだ。


「大人しくしろよ、さっきのせいで手ぇ痛ぇんだからな」

「…わかったよ…」


ゼオは立ち上がる。


「じゃあ行くぞ、立てるか?」

「痛いけど…」


ゾディはのろのろと立ち上がる。


「ちょっと待って…」


ゾディはそのままエドの遺体のそばに向かう。


そして再び座り込む。


「うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!」


泣くゾディを見ながらゼファーとゼオは初めて、死と向き合う事、大切な物を奪ってしまった事に口を閉じ、目を下に向け罪悪感を感じた。

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