impulse
「おっさんこれ」
Unreality社に戻った2人はニコルズにさっきのマッチを投げ渡した。
「マッチ……え?薬…?君たちは一体どこに行ってたんだ…」
「それ、表紙の文字読んで」
「え?ああ、カジノ イルミナティ だよ」
「まぁじ!?秘密結社が絡んでんのかよ!なんかこうわくわくするもんがあるなぁ!」
「いや…街にある巨大カジノの名前だよ、しかしなぜ薬が…」
「そのカジノ調べられませんか?」
「ああ勿論、ハッキングすれば内部に忍び込んで監視カメラを見る事ができるだろう」
そう言うとニコルズは大画面のモニターがあるパソコンの前に行く。
「ちょっと待ってね…衛星から場所を把握して電波に乗るから…」
ニコルズはパソコンのキーボードを叩く。
カタカタと言う音がやけに心地よい音で先ほどの戦いのせいで荒れた気を少しだけ落ち着かせた。
「あれぇ……」
なにやらニコルズはパソコンの前で首を傾げてる。
「どうなったんよ」
「ああ…侵入できないんだ…おかしいな」
「ははっおっさんも腕が訛ってきてんじゃね」
「何を言っているんだいゼオ君、ここはUnreality社だよ」
「んなこと知っとるわちょび髭」
「いやニコルズさんは髭生やしてないだろ」
「カジノのセキュリティくらいなら簡単に入れるはずなんだけど…気に食わないな…なにかあるのか…」
「なぁゼファー」
ゼオがゼファーに話かける。
まぁ言わずとも言いたい事はだいたい予想つくが。
ゼファーは頷きながら
「…わかってるよ、俺もそうするくらい」
「よし、おっさん、明日カジノに行ってみる」
「そうか、悪いけどそうしておくれ、とりあえず私はまだこれと格闘するよ」
「ああ、じゃあ、ガンバ、行こうゼファー」
ゼオはそう言って部屋に戻って行った。
「相変わらず人使い荒いなぁ…」
「悪い奴じゃないんですけどね、とりあえず頑張ってください」
「君だけだよ…珈琲飲むかい?」
「あ、貰います」
後日2人はカチカチのパンをかじりながらニュースを見ていた。
「なあゼファー」
「ん」
「俺のパンだけ模型とかじゃないよな」
「さぁ…そうかもね」
「ははっ、いつかみてろよ」
『次のニュース…なのですが詳しい情報はわかっておりません事を最初にお伝えします。』
「なんじゃそら、メディアも堕ちたな」
ガジガジもむもむ
『悪による悪の裁き…今巷で噂が流れている2人の少年の存在は皆さんは知っていますか?』
「ブッ けっほけほっ」
「なに吐き出してんだよゼファー確かにクソまじぃ模型だけどよ」
「こ、これって…」
「ん?」
「どう考えても俺達じゃないか!?」
「ふーん……って、はぁ!?」
『少年2人はSlaughterと名乗り、マフィアやギャング、薬物の売人などを残忍な方法で殺害し続けています。そして止めに入った民間人や警官、制圧に来た特殊部隊までも殺害をすると言うあまりに酷い残虐行為。それに対し接触した警部補は、こう語ります』
するとテレビ画面が変わり、先日会った警部が映る。
「あ、こいつあのひげちゃびん」
『Slaughter…彼等を許してはいけない…しかし悪が恐れているのは確かだ…彼等は手段を選ばないため非常に危険なので、もしも彼等を見かけてしまったら絶対に接触や干渉はせずに速やかにその場を離れる事、特徴は、2人組みで、片方は日系で黒髪もう片方は銀髪、2人共に白のパーカーを着ていて、首から黒の笛を下げている…この2人の存在に、今 国の上層部は動いており、対策を検討中です…』
『このニュースは以上となります。次のニュースです』
2人は開いた口が閉まらぬまま、テレビを唖然とした顔で見ていた。
「なんか、とんでもない事になってる気が…」
「俺ら許可してねーぞ!ギャラふんだくるか!」
「めちゃ犯罪者みたいなニュースだけど悪に知れ渡るいい機会…だな」
「まぁ…願ったり叶ったりぃ…?」
ニュースを見終わった2人はいつもの清掃服に着替え、部屋を出た。
2人は東地区にある巨大カジノに向かってUnreality社を出た。
相変わらずホームレスのたまり場だな…
夕方に出発したが、さほど暗くなく、こういう昼時もあるだろう。
人も少なくない。
ただ一つ確かに昨日とは違う事。
それは俺達2人の姿を見た人が口を開けながら目を丸くしたり、後ずさりしたり、ドアの戸、開けていた窓を閉めてしまう。
「おーおー!一躍有名だなぁー!」
「嫌な意味でね」
「んっ?なんだ?」
2人の前に…いや、数メートル先だろう、現れたのは明らかに悪ぶった集団5人に、気の弱そうな男性だ。
その気の弱そうな男は襟をつかまれこちらに近づいてくる。
男は明らかに涙目だ。
そして悪ぶった集団の1人が男の背中を押し蹴り、蹴られた男は俺達2人の目の前に倒れこむ。
悪ぶった集団はニタニタとゲスびた笑いを浮かべながら様子をうかがってくる。
「…ふぅ…まったく…ゼオ」
「おうよ、そこのあんた、後でサインやるわ、プレ値つくぞー」
ゼオは手に黒煙を纏わせた。
それをみた男は余計に泣きじゃくり、様子を見ていた集団も黒煙に恐れたのか笑うのをやめ、先ほどの人々のように後ずさりはじめた。
ブン
ゼオは腕を振った。
「ひぃぃぃ!」
トッ
黒煙はそのまま長く伸び、悪ぶった集団の1人に突き刺さった。
「えっ…」
突き刺さった本人もなにが起きたか、理解するまでに時間がかかった。
「あ…ぁぁぁぁぁぁぁ!」
「うるせぇな…見りゃわかんだろ!ささってんだ…よっ!!」
ゼオは黒煙の纏った手で握り拳を作り、パッと手を開いた。
ドパァァァンドチャドチャドチャ
どう思う? 一緒にいた仲間がいきなり弾けて、バラバラに砕け散ったら。
「う…うわぁぁぁぁぁぁ!」
集団の2人が逃げ出し、2人は腰を抜かした。
バダァン
脚に黒煙を纏わせたゼオが猛スピードで集団に突っ込む。
「ひぃっ…」
ズサァァァァァ
逃げた2人の前まで移動し、もう片方の手にも黒煙を纏わせる。
そのまま2人に向かって両腕を広げた状態で飛び、くるりと回転する。
フシッフシッ
ブシュゥゥゥゥゥ
頭に向かうはずだった血の流れは行き場を失い、外に向かって噴き散る。
「あ…あぁぁ…」
腰を抜かした2人は目の前で行われた狂気に足を引きずりながら後ずさる。
「い、いやだ……」
ゼオがゆっくり2人に近づく。
「あ、あああああ……へっ?」
後ずさった2人の真ん中にゼファーがしゃがみこんで座っていた。
「やぁ」
「う、うわぁぁぁぁぁぁ!!」
「ギャハッハッハッハッハッ!」
ゼオが爆笑する。
パララララララ
そのままゼファーは銃を顎の下に突きつけ乱射する。
ドチャァァァ
男の頭を吹き飛ばし、もう1人に銃を突きつける。
「まてゼファー」
ガシッ
ゼオは最後の1人の髪を掴んだ。
「ぐぁぁぁぁ!」
ゼオは男の髪を引っ張り、先程の泣きじゃくっている男の元へ連れて行った。
「おらよ」
ドサァ
「ひっ…」
「こいつらはお前を殺そうとしたんだ、死んで当然」
「ほらこれ…」
ゼファーは泣きじゃくる男に銃を握らせる。
「簡単さ、頭に向けて、指先をほんの少し引けばいい、それだけで人が死ぬ」
「や…やめろ…悪かった…悪かった」
「ほらよく狙って」
ゼファーが泣きじゃくる男の手に手を添える。
「そう、それで引くんだ」
「ひっ…ひっ…」
男は泣きじゃくるだけで手には力が入っていない。
「キャァァァァァ!」
騒ぎに気づいた市民が騒ぐ。
「警察!警察!」
「ほら、早くしないと警察が駆けつける」
「あ…あ…」
「さあ引くんだ」
「ひっ…」
「ほら…」
「ひぃ…」
パララララララ
ドチャァァァ
「あーあー…遅いから」
煙が上がる銃口と銃声は、ゼオの持つ銃から上がったものだった。
「のろいなお前、そりゃ虐められるわ」
「ゼオも待ってあげればいいのに」
「待つのは苦手なんだ、さ、行くぞゼファー」
「ああ」
「おっとそうだった」
ゼオは泣きじゃくる男の前に屈むと服に血でサインを書いた
「ほいほいこれこれ、苦しゅうない、必ずホームランを打つ、君も手術を頑張りたまえ」
「ゼオ、それニコルズって書いてない?」
「これ着てUnreality社に来たらコーヒー1杯無料だから頑張んな、じゃあな」
ゼオはそそくさと歩き始める。
「ま、冗談だから気にしないでよ」
「転売したらぶち殺すからなーー」
ゼファーはゼオを追う。
泣きじゃくる男を背に2人はカジノへ急いだ。
ガシャーン
「ちっ閉まってやがる」
2人はカジノに到着したが、カジノは大きい門により閉じられていた。
「切って開けちゃうか?」
「いやいやもしなんもなかったらどうすんの。次人来たとき門がバラバラだったら逃げられるでしょ」
「そっか」
「それに、このカジノはどうもご親切のようだ」
ゼファーが顎でどこかを差す。
ゼオがその方向を見ると、何か看板らしきものがあった。
書かれていたのは一週間の開店スケジュール表だろう。
日月火水木金土
○ ○ ☆○
「今日は何曜日だったかな」
「今日は土曜日だ」
ゼオが携帯の画面を見る。
「ほらあってた、木曜日だ」
「…無駄足だったけど明日…この星マークの日か…なんで星マークなんだろ」
「そりゃお前きんたまキラキラ金曜日やないの、光るの知らねーの?」
「ゼオのは光るの?」
「七色に光る、フィーバータイム、見せてやろっか?」
「嫌だけど光るなら見せてよ」
「おう、ゲーミングちんこみせてやる、愉快な音も流れるぞ」
「冗談はさておき、問題はここが会員制なんだよねぇ」
「何言ってんだぁ?俺達はSlaughterだぜ?」
「なになに?Slaughterは通れるの?」
「ああ、Slaughterでな」
「…なるほどね」
2人は踵を返しUnreality社に戻って行った。
帰る間も街中は悲惨だった。
2人を見るや直ぐに逃げる人々。
警官ですら目を背ける。
「なんだよ…まじ悪者扱いだな」
「日頃の行いだなぁ」
ゼファーは呑気に通りかかった雑貨店の品を覗いていた。
店主は震えている。
「本当冷静っつかなんつーか」
ゼオはリンゴを掴んだ。
「うっわ…腐ってる、おっちゃんこれいくら?」
「お、お代は結構です」
「おー!随分気前がいいねぇ、まぁ俺金持ってないけどね」
ゼオは傷んだリンゴを道に投げ捨てた。
「食品衛生には気をつけな、ショットガンみたいな下痢しちゃうぜ」
「おじさん、これ貰うね」
ゼファーはお札を置いて店から出た。
「ゼファー金持ってんの?」
「外行く時たまにニコルズさんがくれるじゃない」
「はぁ??俺貰ったことねーぞ!?」
「ほんとに日頃の行いだね」
「一括請求してやるまじ!!てかゼファー何買ったん?」
「小物入れ、お金そのままポケット入れてたから」
「俺アタッシュケースで請求しよ」
2人はその場を立ち去った。
Unreality社に戻った2人はニコルズの元へ行く。
「おいおっさん!なんでゼファーにしか金渡さねーんだよ!俺にもよこせや!」
「あ、ああすまない、2人分をゼファー君に渡していたんだ、言ってなかったね」
「あん?なんで言わねーんだ」
「無駄遣いするからじゃない?」
「有意義な事は無駄じゃねーし!」
「わかったよ、後で半分渡すから」
「いえーーーい!なーに買おっかなーーー!!」
「…こりゃ明日にゃなくなるな…そういえばニコルズさん、カジノに潜入する方法、どうです?」
「残念ながら…未だにハックに成功してないんだ…」
ニコルズは申し訳なさそうな顔だ。
「なにやってんだよ」
「セキュリティーが凄いんだ…すまない…」
「まぁゼオ、できなかったものは仕方ない」
ニコルズに助け舟を出すようにゼファーがゼオに言う。
「そーだけどさ」
「ルーカさんにも訊いてみようか」
「えぇぇぇ…」
ゼオはルーカと名前が出ただけでとても嫌な顔をする。
「なんかわかるかもよ?」
「…わーたよ…おっさん、クソ女にコールしてくれ」
ゼオは渋々承諾し、ニコルズはルーカにコールし、ゼオにマイクを譲る。
「おい生きてるかクソ女」
ゼオが声をかけるとスピーカーからルーカの声が返ってきた。
「あら?どうしたの?次は毛が生えた?」
「とっくに生えてるわ!死ねボケ!」
「それに金曜日には七色に光そうですよ」
「あらぁゼファーくぅん!」
「愉快な音も流れるぞ、曲は鎌鼬に作ってもらった」
「…ふふっ、なにそれちょっと面白いわね」
「ルーカさん、東地区にある巨大カジノはご存知ですか?」
「あら、知ってるわよ」
「なんか怪しい噂とかありません?」
「それなりにはあるわね」
「例えば?」
「そうねぇ、毎週金曜になると薬物パーティーしてるとかかしら」
「それだよビンゴ」
「少女が支配人してるとか…」
「その噂は何度か耳にしますね…」
「そして…」
「そして?なんだよ焦らすなクソ女」
「その少女こそFEARの幹部だ…とか」
「…今なんて?」
FEARの幹部…?
「だから、その少女こそFEARの幹部、ロリータドールよ」
「まじかよ良いこと聞いた」
「良い情報だ…ありがとうございます、ルーカさん」
「いいえーまたいつでも連絡してきてね。ゼファー君ならこっちに会いに来てもいいから」
「は、ははは…それでは」
ゼファーは通信遮断ボタンを押した。
「明日、薬物パーティーがあるんだよな」
「そう、そこにその、ロリータドールが来るのかもしれない」
「よーし明日に備えてシャワー浴びて寝るぞー」
ゼオはハキハキと部屋に戻っていった。
「…じゃあ俺も戻りますね」
「あ、あああっごゆっくり」
ニコルズに一礼し、ゼファーはゼオの後を追い部屋に戻っていった。
「ゼ……今日も起……4……よ……」
どこからか聞こえる声。
自分は今どうなっている?
ゼファーはうっすらと目を開ける。
そこは真っ白な壁の病室だ。
そしてその声の主が解った。
「……母さん…?」
仰向けで寝ているゼファーの横に、見慣れた母の顔が覗いていた。
「ゼファー!」
母さんが叫ぶ。
それに反応した父と兄弟達が駆け寄る。
「ああ神様…!」
「お兄ちゃぁぁぁぁん!」
ゼファーは身体を起こした。
「父さん……ジョシュ…サラ…?」
ゼファーの両親と兄弟が皆ゼファーに抱きつく。
「ああ神様!有り難うございます!」
「ゼファーぁぁぁ!」
「お兄ちゃん!」
「えっとこれは一体どうなってるんだ……?」
何が起きたかわからないゼファーはそのまま抱きつく家族を見るしかなかった。
「…ゼファー…」
「よく還ってきてくれた…」
全員がうつむいてた顔をゼファーに向けた。
優しくて美人な母
はしゃぐし馬鹿だけど頼りになる父
泣き虫な弟
男勝りな性格な可愛い妹
全員、人間と思えない悪魔の顔をしていた。
Project the Darknessssssss
「っっっわぁっ!」
……気がつくとそこはUnreality社にある自分達のいつもの部屋。
「……ほんとに最悪……酷い夢だ…」
ふと横で寝ているゼオを見るが、そこにゼオはいなかった。
「あれ?」
身体を起こし、辺りを見回す。
「ゼオー?」
ゼファーはベッドから出て、辺りを探す。
しかし、バスルームやトイレ、どこを探してもゼオはいない。
「っかしーな…服はあるんだけど……」
いつもの服は、脱ぎ捨てられていた。
つまりゼオは寝間着の短パンにタンクトップパーカーのまま、どこかに行ってしまったのだ。
とりあえずゼファーはニコルズに電話で知らせる。
「もしもしニコルズさん?夜中にすいません。」
『どうしたんだい?』
「そっちにゼオ行ってません?」
『いや?来てないよ?』
「…そう…ですか…」
『どうしたんだい?』
「ゼオがいないんです、どこを探しても、しかも寝間着のまま…」
『なんだって…!?直ぐに防犯カメラをチェックしてみるよ!』
プッ ツー ツー
電話が切れ、静けさが戻る。
とりあえず服を着替えよう。
冬ではないが、肌寒い時期だ。
死にはしないがゼオが心配だ。
ゼファーは服を着替え、部屋を出た。
「!!…なんだこれっ…!」
部屋を出ると、廊下に出るが、そこに置いてある機材等が真っ二つになっていたり、派手に壊されていたり、壁には大きな切り傷やへこんだ跡がいくつもあった。
「なにが起きてるんだ…!?まさかFEAR…!?」
すると廊下の奥からニコルズが駆け足で向かってきた。
「ゼファー君!」
「ニコルズさんっこれは!?」
ニコルズの額には冷や汗が流れている。
「ああ…よく聞いてくれ、防犯カメラを見てみたんだ…」
「ええ…」
「裸足で寝間着のままのゼオ君がおかしな様子で暴れまわっていた…!カメラでは確認出来なかったがDarknessが発動してる…機材が勝手に…!」
「で!?ゼオはどこに!?」
「玄関の方に行ったよ!」
「直ぐに探しに行きましょう!」
くそ…どうなってる!?
Darkness…一体何がしたい!?
「ああ!急ごうっ!」
ゼファーとニコルズは玄関に向かい走り出した。
玄関に向かう途中ゼファーが手に黒煙を纏わせた。
「ニコルズさん、手分けして探す事になるかもしれません、ですがこの街は物騒です、夜は尚更、これを持ってて下さい」
ゼファーはニコルズに銃を渡した。
「あ、ああ、ありがとう、使う事がない事を願うよ」
2人は玄関を出た。
「これは…!」
寝ていたであろうホームレス達が惨殺されている。
「…ゼオは普通こんなことしない…」
そうだいつもゼオはホームレスを無視するか、からかってるか、たまに仲良くなってる者もいる。
絶対殺したりはしない。
「足跡だ…」
血の足跡が外に向かって伸びている。
「行きましょう…ゼオはDarknessに操られて…」
「そうだね…早くしないと犠牲者が増える…」
2人はゼオの捜索を始めた。
「くそっ…足跡はここで途絶えてる…」
血の足跡なんて砂やゴミなどで薄れて直ぐ消えてしまうだろう。
やはり苦労して探すしかないか…
「二手に分かれましょう!1時間後、Unreality社で!」
「そうだね、それが賢明だっ!」
ゼファーとニコルズは二手に分かれることにした。
しかし、ゼオが行きそうな場所を探しても、Darknessに操られて自我を失っているせいか、見つからず時間だけが流れていった。
ゼファーの焦りと不安はより強くなっていった。
それと同時にDarknessに対しての怒りも湧いて出る。
「なんで見つからないんだ……くそっ…くそ…Черт……Черт возьми!」
叫んでも何も見つからない。
後はニコルズの結果に期待するしかない。
ゼファーはUnreality社に向かって俯きながら歩いていった。
帰る最中の事だった。
ゼファーはなにやら通行人が慌ててどこかに向かって駆ける姿をちらちら見る。
ダメ元で訊いてみるか…
「あの…なんの騒ぎですか?」
ゼファーは急ぐ若い男を引き止め、問う。
「男の子が人を殺してるらしいっ!居合わせた警官もろとも!凄いのが見れるぞ!?行かない手はないだろう!?」
「…なんだって!?」
ゼオだ、警官もろとも殺す子供と言って思いつくのは俺達くらいだ…!
「案内してくださいっ!」
「こっちだ!」
ゼファーは男について行く事にした。
「ほらっ、あそこだ!」
着いた先は野次馬の人だかりでいっぱいだった。
「ゼオ!」
案内してくれた男に礼も言わず、人だかりで見えぬが、その先に居るであろうゼオの名前を叫び、一心不乱に走る。
「通して下さい!」
ゼファーは人だかりに突っ込み、人を押して通って行った。
「あっ君!それ以上は危険だ!」
野次馬の1人が叫ぶが、そんなのどうでもいい。
やがて野次馬の最前線からゼファーは抜け出した。
そこには人間の死体が散らばり、地獄絵図さながら、その中央に闇雲に黒煙ブレードを振り回し、叫び狂う寝間着姿のままのゼオの姿があった。
「あ゛ぁぁぁぁぁぁ!」
「ゼオ!」
ゼファーがゼオの元に駆け寄る。
「Tear meat!!!」
ゼオの声はよく見る夢のDarknessの声のように唸りあげていた。
ブォン
ゼオがゼファーに向かい腕を振る。
間一髪でそれを避け、ゼファーはゼオに捨て身でタックルし、突き飛ばした。
「おおぉっ…」
見ていた野次馬が声を洩らす。
ゼオは飛び、壁にぶつかり、座り込む。
ゼファーもタックルと同時に転ぶが、すぐさまゼオに駆け寄る。
「ゼオ!おい!大丈夫か!?」
ゼオは立て膝でしゃがみこんでいる。
その横に駆け寄ったゼファーはゼオの肩を揺さぶる。
するとゼオはゼファーに顔を向けた。
ゼオは血だらけで、無表情のまま泣いていた。
「…ゼオ?」
「…Darkness…」
ゼオはそう言い、ふっと身体を崩した。
「っと!」
ゼファーはゼオを支える。
「…帰ろう…ゼオ…」
ゼファーはゼオを背負い、Unreality社に帰るため、野次馬の方へ歩き出した。
「ちょっと待ちなさい!」
野次馬の1人の男がゼファーの前に立つ。
「通して下さい…」
「そうはいかない、その子は危険だ、知り合いかなにか知らんが野放しにはできない!」
それを聞いた他の野次馬達が
「そ、そうだそうだ!帰すんじゃねぇ!」
「警察に突き出せ!」
と騒ぎ始める。
「通して下さい…」
「さあ、その子を渡すんだ」
「通して…」
「さぁ!」
「通せっつってんだ!!!」
ブォン ブシッ
渡せと言ってきた男の首は地面に転がった。
ゼファーの手は黒煙ブレードが纏っていた。
「うわぁぁぁ!こいつもバケモンだ!」
「ま、待て!この2人昨日のニュースの…!?」
ニュースの事を耳にした野次馬は、静かになり、唾を飲み込む。
「もう一度だけ言う…そこを通せ!聞けないなら一般人だろうが殺すぞ!!」
そう言った刹那、ゼファーの目の前にいた野次馬達は道を開けた。
ゼファーはそこを通って野次馬達を抜けた。
その野次馬達より少し離れた場所で、ニコルズが心配そうにこちらを見ていた。
「見つかったようだね」
「ええ…」
3人はUnreality社に向かい、夜の街を歩いた。
Unreality社に戻り、ゼオをロビーの椅子に下ろす。
すると意識を失ってたゼオがゆっくり動き出した。
「ゼオっ」
「ゼファーがキレるとああなるんだな…おっかねおっかね…」
ゼオはよろよろと立ち上がり、歩き出した。
「大丈夫か…?」
「…んだよこの姿…血まみれじゃん…シャワー行ってくるわ…」
ゼオはのろのろと部屋に戻って行った。
「大丈夫…なのかな…」
「まぁ…いろいろ問題だらけだけど大丈夫なんじゃないかな…」
「はぁ…」
「ゼファー君も私の所で良かったらシャワー貸すよ?」
「ありがとうございます、お借りします…」
ゼファーはシャワーを浴びに行った。
シャワーから出て、部屋に戻ると、既にベッドでゼオが横になっていた。
ゼファーはその横に座る。
「大丈夫か?」
「……大丈夫じゃねぇわなぁ」
「ま、そうだよね」
ゼファーもベッドに入り横になる。
「らしくない、今日は控えめな寝相になるね」
「あー、そうだな……」
いつものゼオではない。
どこか疲れきっている様子だ。
「そうか…じゃあ」
ゼファーは大きく大の字になった。
「やりたかったんだーー!この寝方!さいこーー!!」
ゼファーは足をバタバタさせる。
元気づけようとしてくれているゼファーに安心したのかゼオは ふっ と笑うといつの間にか眠りについていた。
ゼファーは考え事を少ししていた。
Darkness…お前は一体何を求めている。
もっと人を殺せって?
確かに最近はFEARの連中ばかりで、街にいるそこらの売人やらの犯罪者を殺す事は少なくなった。
それが原因なのだろうか。
どっちにせよ、俺達が人を殺さない日が来るのだろうか。
そう考えてるうちにゼファーも眠りに入っていった。




