【05】 明石春菜の証言 ~転入手続きのために来た女性です~
丹沢「はい、お答えいたします。ひとつ目の質問につきましては、以前に二度ほどお会いしました。そして、二つ目につきましては、住民課窓口でのお客様と窓口担当職員という関係です」
立浪「『以前に二度ほどお会いしました』というのは、二度とも住民課の窓口で会ったということでいいですか?」
丹沢「そうです」
立浪「では、いわゆる『友達とか、恋人とか、そう言う関係ではなかった』と」
丹沢「はい」
立浪「その女性は、住民票の写しでも取りに来たのですか?」
丹沢「いえ、一度目は転入の手続きに来られました。しかし転出証明書をお持ちでありませんでしたので、帰っていただきました。二度目は転出証明書を持って見えましたので、転入の受付をさせていただきました」
人事課長「口から出任せを言うな! それも証拠がない」
立浪「誰かそのことを証明できる人がいますか?」
丹沢「二度とも、同じ職場の明石(春菜)さんが見ています」
立浪「住民課の明石さんが?」
丹沢「そうです」
秘書課長「では、明石さんをちょっとここに呼んで」
事務局記録係の鈴木主任が内線電話で、明石春菜を呼び出した。
鈴木「明石さん、ちょっと502会議室まで来てくれますか?」
◇
数分後、明石がやって来た。
立浪「その女性が『二度、転入手続きのために住民課を訪れた』ことに間違いはないですか?」
春菜「はい、間違いございません。近くで見ておりましたので」
立浪「課長から何か聞くことはありませんか?」
人事課長「ない!」
秘書課長「なし」
立浪「では、明石さん職場に戻られて結構です。ありがとうございました」
人事課長の分が悪くなった
人事課長「しかし、おかしいじゃないか!」
立浪「はい?」
人事課長「中牧秘書係長、もう一度、『市長への手紙』の『抱いている』部分をゆっくりと読んでもらえる?」
中牧「わかりました」
中牧は『市長への手紙』を手に取り、読み始めた。
中牧「『美浦市役所の職員が、昼間から女性を抱いていた。しかもその女性は大泣きしていた。』」
人事課長「もういい。ありがとう。ほら、『職員が、昼間から女性を抱いていた』と、あるじゃないか。
丹沢君は、『抱きつかれた』といっているが、覗き込んだ隣のおばさんは、『抱いていた』と、言っているんだよ。
過去に2回しか会っていない、というのを認めたとしても、3度目で仲良くなって『抱き合っていた』ということもあるだろうし、ここで、はっきり私がおかしいと思うのは『相手の女性は大泣きしていた』という点だよ。
私が思うに、恐らく丹沢君がだね、無理やり抱きついたんだと思うよ。
だから相手は泣いたんだよ。しかも相手はひとり暮らしだったんじゃないのか?
丹沢君は、誰にも見られず、自分の性的欲求を満たそうと抱きつき、部屋の中へ押し込もうとした。そこにちょうど、隣のおばさんが来た。そう言うことだろう」
丹沢は、あきれて口を開けて上を向いた。




