↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
“元”勇者はもう一度  作者: 半端者の柑橘系 
第一章 始まり編
9/34

第9話 エースvsエース


「俺の槍をくらって耐えてる奴初めて見たぜ」


「……壊れない槍もな」


カイルとザルク。どちらもパワータイプの人間。


槍と肉体、どちらが優れているかを競う……というわけではないが、どうやらザルクはそう思っているだろう。


ググ……と槍と足が押し合う。

互いに引けを取らないパワーな為に、状況が一切分からない。


「!!」

ここでまさかのザルクが槍を離し、カイルの背後に回り込んだ。


拳に魔力を込めて、カイルの背中を殴り飛ばした。

なんとか受け身を取り反撃に出ようとするが……


既にザルクがカイルに追いついていた。

「グッ……」


防御に回せなかったカイルはそのまま奴によって腹部を膝蹴り。


今の数発でおおよそ敵の強さは分かった。

かなり強い。


それさえ分かれば充分。

「悪くない」


「あ〜? ……おっと!」


カイルはそこで反撃。

足を使ってザルクの頭を狙うも腕で防がれた。


「(重ッ!!)いいねぇ」

足を掴んで放り投げる。

ようやく地に足をつけた。


「…………」

四方八方を観察するカイル。

上も下も横も、全てが使えるものになるかも。


「どこ見てんだ?」とザルクは奥にある槍に目を向けた。


そうして……呟く。

「『跳べ』」


カイルの背後にある槍が、槍を中心とした小さな結界に囲まれた。


その後プルプルと震え出しまさかの突進。

余裕で躱すもその槍はザルクの手に渡ってしまう。


そもそもあの槍……全てに刃がある。

どこを持っても怪我してしまうような……


「そんなに珍しいか? 俺の槍が」


「怪我しないのか?」


「生憎肌が強いからな」

その発言はどうやら本当みたいだ。

強靭な肌は、諸刃ならぬ全刃の槍において一切傷ついていない。


「“元”勇者としても、久々にこんな楽しい強者と戦(や)れるんだ……長く楽しもうぜ。さて────『跳べ』」


ザルクの足下に結界が。

そうして一瞬でカイルの背後へ。


机に置いてあったナイフを拾い、ザルクによる槍の一撃を受け止めた。

「!!」


(重いな……)

そのままザルクを弾き飛ばし、両手にナイフを構える。

ナイフを順手と逆手を鮮やかに繰り返し、連続で斬撃を叩き込む。


(こいつ……ナイフに魔力をしっかり込めてるせいで防御に集中しちまうな〜パワーとスピードは五分といったところかな。だが魔力総量は俺の方が上だな)


そんなことをザルクは考えた。

間違いなくそれは余裕の表れで、現にカイルの連撃は槍で完璧に防がれてしまう。


その時フッと軽い音が室内に響いた。


(…………上?)


一つのナイフを頭一つ上に放り投げたカイル。

どうやらそのナイフに何かがある訳でも──────


「しまっ────」


視線をカイルから外してしまった。

時間にして数秒だがカイルにとっては充分すぎる時間だ。


即座にカイルは一つのナイフで、ザルクの肩と脇腹を切り刻んだ。

ザルクは机を蹴り飛ばし、距離を置く。


「いってぇな……」


微妙な距離。

この距離を埋めるためには当然……!


「『跳べ』!!」

壁に足をつけて、爆発するようにカイルに急接近する。


カイルは二つのナイフで受け止めるも、あまりの勢いに押し込まれそうになるもなんとか踏みとどまった。


「ッ……!」

ナイフにヒビ。

武器の差が出たか……


「重いだろ? どうする?」


「こうする!」

上にいるザルクを蹴り飛ばし、支柱の方へ。


奴はギリギリで支柱の前に止まり、支柱の後ろへと走る。


何をしたいか分かった。

急いで支柱の後ろに隠れたザルクを追う。


「よ〜っと!!」

ドゴォ!!と音を鳴らし、槍で支柱をカイルの方へ吹き飛ばした。


かなりのパワーだ。

一瞬でここまで……


「フッ」とカイルはそれを笑い、拳に全ての魔力を集中する。


ザルクと同じような音を鳴らして、奴の方へ支柱を打撃で返した。


(返してきやがった……!!)

槍をバットのように使おうとした瞬間。

支柱が“砕けた”


殴られて更に加速した支柱よりも速く移動して、追いつき、破壊。


支柱“だけ”を見ていたザルクにとってそれは想定外の択だった。


壁の方へと殴り、ザルクは壁にめり込む。


「!!」

それだけで終わらせず、ザルクごと強化された壁を破壊して隣の廊下へと突入した。


三撃目を叩き込もうとするも、流石にそれ以上は看過できないと、ザルクは槍でカイルの脇腹を殴打して吹き飛ばす。


社交場から広い廊下へ、大量の絵画がそこにはあった。


ザルクはプッと口に溜まった血を適当に出して、頭を回転させる。


(勇者……思ったよりテクニシャンだし、やりづらいな……ナイフとか、なんでも武器にするタイプだ)


(こいつ本当に硬いな。さっきの一撃も大して効いてる気がしねぇ)


互いに大怪我をしている訳ではないのだが、確かなダメージを受けている。


余裕こそあるが、これ以上無駄なダメージを受けたくはない。


(能力で一気に加速するのは得策じゃ……ないか?)


ザルクの能力『跳躍(トランポリン)』

反発性が高い小さな結界を自身の足元や指定した“物”に貼ることで、高い跳躍性を誇る。


唯一で最大のデメリットは連発ができない。

ずっとバウンドし続けることはできないのだ。


(このまま攻め続けるのが〜一番かな)

ザルクの思考はまとまった。

どのみち相手はミスしてくれないだろうし。


真っ直ぐカイルの方へ走る。

どんと構える彼の防御を崩すには……!


槍を真横に振るい、カイルはそれを躱すために軽く跳ぶ。


腰を捻ってザルクの肩へ回し蹴りを叩き込もうとするもギリギリで防がれてしまう。


やはり硬い。

大した身体強化をしていないというのに。


槍による突きの連撃を躱しながら、反撃の機会を伺う。


「そこだ」

カイルの足元を狙った攻撃を、やり返すように躱して足で槍を踏みつけた。


「上がんね……」

真上に槍を振り上げて、カイルごと吹き飛ばしたいのだが────


一切上がらない。

だがこのまま力比べをするやつじゃない。


(このまま槍を壊す!!)


カイルとザルクがいる床に大きなクレーターができる。槍を上げようとする力と壊そうとする力。


反発し合う力がぶつかり合い、建物内にどんどんヒビが入っていく。


「ッ!!」

「……ッ!!」


このまま槍が壊れるまで、力の均衡を取り続ける。

そう思っていたカイルだったが……


槍が一切壊れない。

相当いい素材で作られているようだ。


「ハッ! 『跳べ』!」

力の均衡を取るのをやめて、カイルの方へと『跳んだ』ザルク。


この廊下の高さは相変わらず高い。

今の『跳躍』で数メートル跳んだ。


「……!」

かなり高く跳んだために地面を見ていたカイル。

ただザルクは違う。


既に拳を振り上げていた。


「ガァッ!!」


奴の拳によって地面に叩き落とされたカイルは、口から血を吐き出しつつもすぐ姿勢を整える。


前を見た頃にはもうザルクは槍を振りかぶっていて……


「クッ……ソッ!!」

反撃として強化した拳で返す。


ガキン!!という肉体と槍がぶつかったとは思えない音が廊下中に響くと────


カイルの拳から血が吹き出た。

(────もう魔力が……!)


魔力による身体強化が不充分。

彼は回復こそ速いも減るのも速い。


反射神経や間合いなどの細部の衰えは、“不要な”ダメージとしてカイルを蝕み続けていた。


一瞬だけだとしても怯んだ隙を見逃さず、槍でカイルを真上に吹き飛ばす。


シャンデリアの上に立つ二人。

第二ラウンドが始まった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。