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“元”勇者はもう一度  作者: 半端者の柑橘系 
第一章 始まり編
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第8話 しぶとい!!

「霧散したって所からピントきたんだ。これが……俺という天才だー!!」


リゼルの剣によって霧散してしまった火魔法のエネルギーを風魔法で回収・反撃に繋げたロイ。


圧倒的な攻撃とは行かなくても、ダメージは与えられる。


「ッ……!!」

今の一瞬であそこまで閃いたのは、自分を天才だと思うしかない。


炎によって囲まれたリゼル。

そんな彼女は黙って、炎の中……その“一点”を見ていた。


まさかのリゼルは囲まれた炎にある弱い部分を剣で貫き、人一人入れる小さな穴を開けて、体を捻り脱出。


「あっつ……(こいつ……他の魔法同士併用できるのか。そんな事できる人久々に見たよ)」


彼女の服や肌が少し燃えたが、ロイの想定を遥かに超えてダメージが浅い。

だが……!


ロイは水魔法をロープのように扱い、剣をロイの方へ引き寄せた。

一度謎の引き寄せ能力を見せられたが……初めから相手の手に渡っているよりはマシだ。


「フン」と彼女はどこか気に食わない声を漏らすと、現在進行形で燃えている服をどこかの所へ適当に放り投げた。


そうして彼女はギャラリーの方へ立つと、リゼルはロイをどこか見直したような顔をしている。


「私の持ってる袋は今ので“二つ”。さて、楽しみましょう?」


「……かかってこいよ」


「ああそれと────」


「……あ?」

部屋の奥。

扉越しから何かが迫る音。


…………津波?


とんでもない音だ。

(まさか────!)


「私。自分の力は誇示したいタイプなの」

ドンと大きな音を鳴らして巨大な扉を、津波のような勢いで部屋に入ってきた。


体が水に流され部屋の中が水でどんどん浸水していく。

まさかこの手を使ってくるのは想定外。


「!!」

真上。

足を真上にして、こちらの頭を踵で潰そうとしてくる。


「ッ!!」

水中に急いで潜って躱す。

彼女は今まで会ってきた戦士に比べればリゼルは非力だ。


ましてや水中となれば躱すのは容易い。


「あぁ!!」

なんとか水中から脱出した。


ギャラリーの床まで水が浸水していた。

ここから一階まで目測でおおよそ五〜六メートル。


かなりの水がこの部屋を襲ったのだ。


「はぁ……はぁ……」

二転三転とする今の状況。

落ち着け。まだ慌てる時間じゃない。


(袋は今ので“二つ”……つってたけど、嘘だな。この大量の水も袋に入っていたのものか)


『秘包』その真髄は、異次元故の応用が効くところ。

リゼルは川の水を袋に入れて、大量の水を使ったのだ。


(袋は最低でも“三つ”……中身に入っていたのは

『剣』『水』そして『?』持ってる袋が三つだと仮定したら、残り一個の謎がある)



何か使えるものは……


「どこ見てるの?」


「!?」

リゼルに足を掴まれた。

有無を言わさず再び水中へ。


(水中で勝負するのはまずい! なんとか脱出しなければ……!)


どんどん奥深くに入ってしまう。

「ッ!!」


掴まれてない方の足でリゼルの背中を蹴る。

バシッという軽い音が鳴った。


何度も何度も蹴り飛ばすも、彼女は一切動じない。

これが身体強化が出来る者と出来ない者での差だ。


(いいね……!)


そのままロイを放り投げると、彼女は拳に魔力を込め始めた。


急いで頭を腕で防御するも、リゼルが狙うのはそこじゃない。


魔法使いで唯一身体強化できる、腹部を襲う。

「…………ッ!!」


カイル程ではないが、かなりの威力。

口から血を吹き出し……意識が朦朧としてきた。


身体強化なんて戦士程じゃない。

寸前でやれるだけ……


(さぁ。最後の袋だ)


こうして袋を開けるとそこから出てきたのは……

巨大な“杭”。


一回り大きいその杭は、ロイなどを潰すのには充分だろう。


もう魔力も体力もないだろう。

(魔力を削る為にわざわざ腹を殴ったのだからね!)


勝ちの確信。

“見た所”ロイにはもう魔力は────


(風魔法(ウィンド)!!)

目をカッと見開き、急いで風魔法で天井を突き抜けて3Fへと杭を吹き飛ばした。


(こいつまだ魔力が……! とんでもない魔力総量だな)


とんでもない魔力総量。

人並みなんかでは……到底ない。


このまま水中で魔力を失うまで攻撃し続けるのは、得策じゃない。


(ならこのまま、ギャラリーに上がって奴が溺死するまで水中で落とし続────ッ!?)


先程の仕返しと言わんばかりにロイがリゼルの片足を掴んだ。


ロイの片手には風魔法の残りが。

風を片手に溜めて、一気に爆発させることで数メートルの距離を一瞬で追いついた。


「ごぼべぶく(どこへいく)!?」

水中なので何を言っているかはわからないが、言っている意味はわかった。


だがどうする?

このまま彼女の足を掴んだところで、何かが変わるわけでも────


(“我慢”してみろ。こっからは……消耗戦だ!!)


「!!?」

突如ロイが全身を使って雷魔法を発動。

電撃が水中を伝って、リゼルを襲ったのだ。


圧倒的な電撃。

ある程度、自身の魔力を雷に変えてしまえばダダ漏れとなりおおよそ四メートルの水中に雷が伝わった。


「ガッ……ぐぅぅ……!!」

感電。

全身を満遍なく身体強化するだけで、雷が体内に入る致命傷はなんとか避ける。


今彼女がやるべきは素早くロイの腕を引き裂き、脱出すること。


耐え忍ぶのはどう考えても得策じゃない。

このままじゃ……死ぬ。


「ッ!! ッ!!」

片足でロイの頭を踏み潰すも、彼は腕を一切離さない。


(こいつ力強……!)


ロイより少ない魔力総量で、尚且つ全身を強化している以上、非力なリゼルではロイの拘束は解けない。


(しくったなぁ……! 剣をとって置けば脱出なんて簡単だった!!)


自分のミスを悔いても仕方がない。

どう足掻くかが重要だ。


(どうする!? 水量を更に上げて感電範囲を増やすか!? いくら奴の魔力総量でも……いやダメだ!!

奴に対応されたら今度こそ詰む!!)


魔力による身体強化で耐えるのは、ある意味“魔力で耐える”のと同義。


雷魔法はある種、魔力での攻撃。

魔力と魔力がぶつかり、中和することで完全な防御と化すのだが……


現在、鋭い一撃がリゼルの魔力を徹底的に削っていた。


このまま耐え忍んだところで魔力が尽きるだろう。


(シンプルな握力だけなら、俺の方が上!! このまま勝つまで耐えてやる!!)


いくら雷を発して、雷同士ある程度中和させていても感電によるダメージは避けられない。


魔力を失うか、酸素を失うか、体力を失うか、どれか一つでも無くなれば……死に近づく。


(……ッ〜!!)

(……ッ!!)


強烈に感じる“死が近づく感覚”

死神がどちらの命を奪るかを嘲笑いながら見ている感じ。


「………………」

リゼルはここでまさかの『命令』


────更に、一度だけだが命令をすれば手元に戻すことが出来る。


そのままリゼルは川の水を袋に収納。

服がびちゃびちゃで重い。


(だけど、あいつはもっと重そうだね?

水の中に連れていった時も、あいつに腕を掴まれた時も、あいつはどこかどんくさかった)


無理もない、彼女の重い一撃と自身の雷による一撃をもらったのだ。


魔力は尽きかけていてもおかしくはない。

互いに息を整えた。


(もう奴は見くびらない! 魔法をコロコロ切り替えられたとしても、奴はもう限界だ!!)


一度は見誤ったが、緊張や焦りを消してもう一度見ると……奴には魔力がほとんどない。


(一かバチか決めにくるだろう! 最後の抵抗による最大魔法を!! 使ってこい!!)


その反撃を確実に躱してカウンターを叩き込む。

ロイの反撃規模は確実に強いだろう。


「リゼル、この“勝負”俺が勝つ」


「あっ……そう!!」

リゼルは真っ直ぐロイの方へ走る。

拳に全ての魔力を込めて。


それに迎え撃つ為に、ロイは魔力のほとんどを手に込めた。


「火魔法(フレア)!」

大きな火球がリゼルに迫る。

今まで一番無駄がなく、速い。


「……遅すぎるよ」


躱された。



これで更に迫ってくる。



死ぬ。



もう────


ザシュッ。

「!!!?」


“リゼルの”背中に強烈な痛み。

まるで後ろから斬られたかのようだ。


地面に倒れた。

痛み……剣……


「まさか!!」


────ロイは水魔法をロープのように扱い、剣をロイの方へ引き寄せた。


(ずっとどんくさいと感じていたのは体力切れだけじゃなく、ずっと────)


「俺は腕に水魔法(アクア)で作ったロープで、ず〜っと、あの剣を手繰り寄せていたんだ。お前がこの部屋を水まみれにした時から今に至るまで」


とんでもない魔力消費だったが、やる価値はあった。

剣が重い為に素早い動きはできなかったが。


「……まさか……出し抜かれ……るとはね」


「俺だからこそ出来た“業”だぜ」


「……ふふ……そう……だね」

勝敗に文句はない。

あの時完全に負けた。


リゼルはそのままゆっくり目を瞑った。



────────

【数分後】


「ん……えっ!?」

応急処置をロイがしている。

なんで……?


「どうして……?」


「俺は“不要”な人殺しはしないタイプだ。つかお前、人殺したことあるのか?」


「……そりゃあるわよ」


「そうか。なら尚更……生きて償え」

偉そうに呟くロイ。

殺し合いはもう終わった。


なら殺す必要などない。


「……そう」


どこか嬉しそうに、そしてどこか悔しそうに呟く……リゼルなのであった。



────────

【1F:カイル】


時間としてはロイとリゼルが接敵した時。

カイルは巨大な広場の近くにいたのだった。


1Fにも2Fにも社交場を作っているとは……

一体ここに何人呼ぶつもりなのだろうか。


「………………」


辺りを根気よく確かめながら、一つ一つの部屋に入ろうとするも……


「……なるほどなぁ」


扉を開けると全く関係ない部屋に繋がる。

どうやら異能力によって、同じ扉同士で繋がっているらしい。


(そして壁もクソ硬い。まるで魔力による身体強化をしたみたいだ)


この城全体が異能力によってコントロールされていると見て良いだろう。


今こうして調べさせてくれるのは余裕の表れか、それとも何かしらの制約があるのか。


(探知も上手くいかねぇ……どうやら、足で探るしかないみたいだな)


ロイがどこにいるかも怪しい。

さっさとカロナかロイと合流しなければ。


そうして1Fの社交場に繋がる扉を見つけた。

フロアマップなんて知らないから、もしかしたら最低でも2Fにショートカットできるかも。


そんなことを考えていた時。


「……!?」

近くから酷い異臭が。

血の匂い。


部屋を開けるとそこには、城にいた兵士が見るも耐えない程にバラバラにされていた。


「…………」


戦って散った兵士に敬意を表しつつ、遺体を調べる。


彼らを見るに、“槍”か何かで貫かれたり、“殴打”されてこうなったように感じた。


「さて────」


「あ〜マジで迷子だ」

奥の社交場から聞こえた。

気配から察するに、どう考えても兵士ではないだろう。


扉を開けると────



「あ」「あ」


まさかの部屋ワープなし。

鉢合わせてしまった。


男の槍には血が。

どうやらこいつが……


そんなことを考えた瞬間にはもう、二人は攻撃の姿勢を取っていた。


槍と足。

均衡をとった二つの攻撃が、ぶつかる。


「俺の槍をくらって耐えてる奴初めて見たぜ」


「……壊れない槍もな」


別の場所で、各陣営のリーダーであり、エースがぶつかる事に至った。





















次回

第9話 エースvsエース

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