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“元”勇者はもう一度  作者: 半端者の柑橘系 
第一章 始まり編
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第5話 ぼちぼち

ソプーとの決戦。

これからカイルと並ぶ為には、これくらい乗り越えてなくては。


魔力精度。

純粋なコントロールだけでは上手くいなない。


(魔法の中にある一つ一つを意識するんだ)

水を手から出して、目では絶対に見れない水の“全て”に意識を向ける。


水魔法。

魔力が溜まる腹部。

そうして魔法を出す為に集中する手。


一つも取りこぼさないように。


水球の大きさがどんどん小さくなっていき、ロイの手よりも少しだけ大きくなる形へと。


「水魔法(アクア)!!」


ソプーに真っ直ぐ放った水球。

だが少し真っ直ぐ過ぎた。


「あ!」


スピード・威力共に申し分ないが、いかんせん真っ直ぐすぎる。


(避けられ────!)


「いいでしょう」

ソプーは手に強い魔力が籠る。

火でも雷でも水でもない。


もう一つの魔法。

「風魔法(ウィンド)!!!」


魔法の切り替え。

両手で風を盾のようにして、ロイの水魔法を受けた。


「ソプー!!!」


「……(受けやがった)」


遠くから観戦していたカロナとカイルは、少し驚いた様子。

彼の体が衝撃で大きく震えるも、雄叫びを上げて水魔法を真上に吹き飛ばした。


「はぁ……ハァ……ハァ……ハッ」


「ふぅ……ふぅ……フッ」

極限状態。

過集中と疲労。


そしてソプーが弾いた水球は上空で爆発。

互いに今できる事は全部やった。


「!!」

勢いよく鼻血がソプーの鼻から落ちる。

水から風に魔法を変えた代償。


「もうチンタラしてられん」


「……なら勝負しようぜ。俺の魔力精度とアンタの魔力精度」


総量の差なんて、精度……魔力コントロールが卓越したものとではさしたる差ではない。


魔力があっても体力がなくては戦いは続かないし、逆も然り。

ロイとソプーの二人は風魔法を手に纏い始める。


魔力精度が上昇した今なら勝てる。

確固たる意志を持って。


「ッ!!」


「……!!」


同じ回転で物凄い魔力がぶつかった。

近くの草花や森が、風の勢いに揺れている。

二人の魔法はかなり衝撃を生み出していたのだ。


「…………ッ〜!!」

魔力精度が上昇したとはいえど、所詮、付け焼き刃。

まだ鍛錬なんてしていないし、センスで補うのだって期待できないだろう。


「このままじゃ……勝つのは私ですぞ!!」


同じ回転の風魔法。

熟練の老兵と、魔法使い見習いの差なんてそんなもの。


(なら、一か八か────!!!)


腕を“曲げる”ように、右回転の風魔法を左回転に変(・)え(・)た(・)。

目的は相殺じゃない。


ジイさんなら自分の勢いについてくれると信じて。


(それでも勢いは一向に変わらない……ロイ君もソプーも均衡を保ってる。一体どうするつもりなんだろう……?)


そんなカロナの疑問を応えるように、状況が一変する。

「何っ!?」


半端な力。

それでも逆転し、勝利を掴みたいのなら。


「俺は……頭脳も天才だからな」


風と風のぶつかり合い。

互いに押し合っているのなら────


空気の流れが変わる。

つまり……


「体重が重いほうが……勝つ!!!!」


「おおおお!!?」

爆発したような音を鳴らしてソプーを奥へと吹き飛ばした。


────なんだこのオッサン……というかジイさん。見た目は俺よりガリガリなのに強ぇ!


あの時の発言で閃いた。

これで漸く────


「俺の勝ちだ!!!」


ロイの勝ち。

それを見た瞬間、カイルとロイの二人はすぐ駆けつけた。


「良くやったな!」

カイルはロイの頭を雑に撫で回す。


魔法使いとして一歩前進。

しかもあの老兵に、とても凄いことだ。


「いやはや……凄まじい才ですな」

ボロボロになりながらもどこか余裕そうに呟いたソプー。


「流石は勇者の新メンバーといったところでしょうか」


「“元”な」


「てか! ジイさん大丈夫か?」

ロイは今更思い出し、ソプーの方を見つめる。

「しぶといのが取り柄なのでね」と簡潔に語り、彼はカロナに視線を向けた。


「カイルさん。あなたに頼みたいことがあるんです」


「……政治に関わるつもりはないぞ」


「いいえ。あなたにはある者が暴れないようにしてほしいんです」


「ある者?」

ロイが首を傾げると。


「父が辞めて、別の人間が国王になった瞬間から今までヴィルべの名を継ぐ者が国王になるという暗黙の決まりがなくなりました」


「この国も血から脱却したのか」

カイルはどこか感嘆したように呟いた。

一族で国を運営していくことも完全に悪いわけではない。


だが、貴族には貴族の、民には民の考えることはある。


それに寄り添える貴族がいれば、国は更に繁栄するだろう。


「そして今、継承戦は私の兄と無名のヴィザといつ人間に絞られました」


どこか面倒くさそうにカロナを見るカイルとロイ。

“厄介ごと”を体現した依頼だ。


「最近。そのヴィザという男が謎の人間と山に出て“何か”を調べていました」


「!」

──── 何故か最近、分身の辺りを調べてる“この都市”の人間がいる。もしかしたら────


まさかレリルの言葉がここで繋がるとは。

そのヴィザという男を止めなくては。


「その“何か”は調べて────」


「それは五年前。ある天才(ミラ)が遺したものだ」


「えっ?」


「土魔法────全盛期の俺がそこに眠ってる」

残念ながら今も分身をどう対処するかは考えついていない。


本当ならレリルを仲間にして一緒に戦ってもらいたかったのだが、生憎逃げられた。


自分たちが残してしまったものは、自分たちで片付ける。


それがケジメの一つにもなるのだから。

もう一度、戦わせてもらおう。


あの時の“力”と。

「分かった。手伝おう」


────────────

【???】


「君達は“もしも”がダメだった時用のメイン部隊だ」


ヴィザは卑屈な笑みを浮かべて“三人”にそう語る。

その三人のリーダーのような男が槍を強く地面に突き刺した。


男はヴィザを睨みつけると、一瞬だけ驚いたように背筋を震わせたが、すぐにいつもの笑みを浮かべる。


「で? 聞きたいのは一つ。報酬は?」


「大量の金貨を渡させてもらおう。何十年も遊んで暮らせるような」


「おけ」


「おい!! 本当に成功するんだろうな!? 勇者カイルもここにいるんだぞ!!」


「あ〜? ハッ。俄然燃えてきたな」

それを聞いた三人はどこかへ行ってしまった。


(……スラム暮らしのカス共が)


分身さえ手に入れられれば、この国…更には世界を牛耳れるかもしれない。


今や力関係はあっちの方が上だが……上手くいけば。


そんな考えをなんとなく察しつつ、雇われた三人はこれからについて楽しそうにしていた。


「いいの? あんな“小物”に依頼して」

女の戦士がそう語ると、もう一人の戦士も黙って頷く。


「いいんだよ」

リーダーの男は常にドスの効いたとても低い声色。

“全てが刃先の槍”を持って、どこか適当に呟く。


「勇者と戦(や)れるなんて────最高だろ?」


────────────

【宿】


教会にいる僧侶さんにソプーとロイを治療してもらい、ソプーと別れた。


「あのジイさんは戦いに参加させるのか?」


「状況によるかな。ソプーはかなりの歳だし」


ロイとカロナ、同世代の二人は思ったより仲がいいらしい。


同じ十六歳でここまでの才能。

どちらも何年後を期待したい。


「つかカイルサン。こっからどうするんだ?」


「結局は継承当日になるまで待機だな。事を起こすならその日だろう」


「同感」

カイルの言葉に頷くカロナ。

継承日まで残り一週間。


どうなるかは分からない。

戦況については一切読めない為に、あらゆる状況に適応できる力と知識が必要だ。


「その前にお前たちを鍛えてやる」


「魔力関係ですか?」

「やっぱり総量をバーンと伸ばしてからの精度練習だろ!?」


二人の言葉に対して首を横に振るカイル。

「あ〜……そう魔力総量ってのは身長みたいなもので遺伝とか才能寄りなんだよな……」


五年前から様々な強敵と戦ってきたカイルだが……魔力総量に関しては全く伸びなかったのだ。


鍛錬した所で、雀の涙だろう。


「「え〜」」


「だからやることは魔力より肉体(フィジカル)」

この一週間で超ハードの……


「トレーニングだ」

最悪の筋トレである。





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