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“元”勇者はもう一度  作者: 半端者の柑橘系 
第二章 空中都市編
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第31話 求めるは師

「ん……」


目を覚ました瞬間、ロイの視界に映ったのはカイルとシアンだった。

そうか、負けたのか。

あの魔族に。


他に方法がたくさんあったはずだ。

真っ向勝負に負けてからは、相手の意をつくことばかりに意識が言って────

「(……ま、反省会は今じゃないか)何日経った……?」


「お前が眠ってからは大体三日だ。原因は奴に凍らされたことよりも、どちらかと言えば魔法の酷使だな」


「……こくし?」


遠距離で魔法をコントロールしていたことだろうか?

確かにアレは魔力消費だけじゃなく、頭も死ぬほど痛かった。


「魔力を知覚するのは基本“頭”よ。それをコントロールするのも頭の中にある神経が基本だからね」


すると扉を開いて入ってきたのは……女王であるセーナだった。

シアンが一気に緊張した面持ちになり、カイルが嫌そうな顔をセーナに向ける。


そう言えば気絶する前に彼女がいたような……

セーナは妖艶な笑みをロイへと向けながら、彼に衝撃的なことを聞く。


「ロイ? こんな“不出来な先生”よりも私の所で鍛えてみない?」


不出来な先生と呼ばれ少しムッとしたが、ロイはジェーグナーに負けたことを思い出した。

全身を氷漬けにされると魔法使いは手も足もでないとは。


「……なんでロイを?」

警戒した様子でカイルは彼女にそう訊いた。

(女王に文句を言うのは怖いので)黙ってシアンも頷く。


仲間を知らないところに託すというのだ。何か考えがあるのだと疑ってしまう。

いくら彼女が「悪いようにはしないわ」と言ったところで。


「……カイルサン……行かせてくれないか?」


「彼もそう言ってるけど?」

「お前は黙ってろ」

カイルは彼女の言葉を覆うように語ると、彼はロイの目をじっと見る。


……本音を言えば彼女を心の底から信頼していないわけではない。

間違いなく女王達の所に置けば強くなる……と思うのだが。


重要なのは何を学ぶか。

成長と言っても、必要なのは奴に勝つ成長だろう。


「あなたの期待は裏切らないわ」

カイルの肩をゆっくり撫でながら、セーナはカイルの首近くで呟く。

ロイの考え、女王の自信。

“どちらも”信用してみるべきか。


「強くなって帰ってこい。シアンは俺の下で鍛える」

魔法使いのロイは確かに教えられるものは少ない。

彼の才能により成長スピードを少し頼りすぎていたようだ。


シアンはカイルと同じ身体強化が出来るタイプ。

アンと共に戦士の戦いを教える。

そしてセーナ達、国の人間はロイに魔法使いの戦いを教える。


方針は決まった。

後はロイの怪我が治り次第、鍛錬開始。


────────────

【四日後:城内】


ロイは再び城へと向かう。

正直、女王との城でのやり取りはトラウマに近いが強くなるためだ、やるしかない。


城の奥へと案内人に案内されると、ロイの目に見えたのは……とても広い稽古場だった。


「……スゲェ」

この街にきてからずっと同じことを呟いてる気がする。というか規模がおかしいんだよこの街。


城内は埃一つなく綺麗だし、彼女の威厳と潔癖さを表しているのだろう。

……そう言えば彼女を暗殺しようだとか、失脚させようとしたいというマイナスな言葉は聞かない。


もしかしたら、思ったより人気があるのかもしれない。


「ようやく辿り着いたの?」

すると稽古場にあるもう一つの扉から、セーナは入ってきた。

いつもの綺麗な衣装ではなく、戦闘用の華やかさと動きやすさに注視した服を着ていたセーナは、その赤眼にロイを捉える。


「……槍!」

随分とシンプルな槍だ。

変な装飾もなく、刃先がただ煌めいていた。

あの刃先に斬られたら即死するだろう。


……そう言えば療養中カイルが言っていた。



────あいつの強さは今の俺と同じくらいだ。そして決して真(・)正(・)面(・)から受けるなよ。


“同じくらい”。

本当にカイルという人は人をビビらせるのが上手い。

現に今、ロイのプレッシャーは半端じゃないほどにかかっている。


「ごめんなさいね。私、手加減苦手なの。

徹底的にやってあげるからかかってきなさい」


辺りはちゃんとレンガで作られているから、何使っても問題はない。

徹底的に戦うまでだ。


「…………クソッ」

隙がない。

ピンとした姿勢のなんと無駄のないことか。

“無駄のなさ”だけならカイルより上かもしれない。


すぐさまロイは得意魔法である火魔法の弓を作る。

アン戦で、火魔法をわざわざ弓の形にすることで跳ばすイメージがしやすいことを知った。


「ッ!!」

勢いある火の矢がセーナに迫るも、彼女は槍で軽く弾いた。


「あなたね……魔力量があるのにどうして変に制御するの?」

相手は魔法使いだから魔法で返してくれるし、当たったら効く。

だが今の相手は身体強化できる人間だ。


パワーや肉体強度は一般人とは比にならない。

「……魔力を制御しないと勝てないからだ」

 

「……なるほどね」

魔力総量ではジェーグナー(あいつ)に勝ってたはずだ、それなのに火魔法の押し合いで負けたのは、コントロールの差だ。


残念ながら魔力だけでは勝てない。

それが魔法なのだから。


「魔法使いなんて誰でも、自信のある魔法の一つや二つくらいは持っているものよ。

もう少し初心に戻ってみたら?」


「ぐぬぬ…………!!」


というか女王も魔法使いじゃないのに、どうして俺を教えられると思っているんだ?

「出力を上げるために制御が必要じゃないのか?」


「制御制御なんて、馬鹿の一つ覚えみたいに言わないことね。それを“誤魔化す”のも技術のうちなのに」


苦手な分野に向き合うのは尊いことだとセーナは思う。だが、必要以上に向き合うのは違うだろう。

今のロイに必要なのは、使える“手”の取捨選択だ。


────────────

【カイルとシアン: 都市外】


流石に城の中には稽古場は一つしかない。

安定した場所が欲しいなら、空中都市から地上に降りるしかないのだ。


アンの鍛錬は……暫くいい。

元から一人の戦士として完成されてるし、殺し合いの経験不足とは言えど馬鹿じゃないから、あっけなくやられることはないだろう。


「カイルさん! 何から教えてくれるんですか!」

やる気がみなぎっているシアン。

そう言えばフィジカル系の“トレーニング”しかやらせてこなかった為に、こう言った“戦い”の類を教えるのは初めてだ。


「応急処置だ」


「えっ?」


「後受け身」

カイルが教えるのは基本コレだ。

殺す技術よりも、殺されない技術。


シアンやロイが思う強さとはかけ離れたものだが、“ずっと戦う”強さと、“いつでも逃げれる”強さは早めに覚えて損はない。


彼の教育は、死んでほしくないという思いが詰まっているのだ。


「じゃあやって行くぞ」


────────────

【ロイ:城内】


「だっ!?」

もう何度、セーナの槍によって吹き飛ばされているのだろう。


魔法を放つ→弾かれて→近づかれて→ぶっ飛ばされる。


一生このループだ。

初心に帰ると言ったって……どこまで戻ればいいか分からない!


(初心……どうするのが正解なんだ……!?

俺がなんで最強の魔法使いになりたかったんだ!?)


…………


………………そんなもの決まっている。


────俺が……並ぶ!!

俺にとって最強の人間はカイルサンだけ。

並びたい、もっと強くなってみたい。

これだけが原動力。


バッタバッタと剣や凄い魔法で敵を薙ぎ倒していく、あの憧れ達に追いつくためだ。


「そんなの……クソ程シンプルだったぜ。

火魔法(フレア)ァ!!!!」


ロイはそのまま大きな“火炎”がセーナの所へ発射。

奴に向けた火炎放射よりも、更に速く……“濃い”


「おっ」

彼女の槍とロイの火炎がぶつかる。


「グッ……ッ……!!!」

自分が思ってるよりも、彼の魔力総量は多い。

常に消費する感覚にビビって、逃げ腰になっていたんだ。


(魔力をどんどん消費しろ!! この女をこのまま燃やし尽くし────……なんだ?)


視界の端。彼女が……動(・)い(・)た(・)。

槍から、彼女の全身を────“紫色”の炎が覆う。


そのままロイの炎ごと喰らいつくしてしまった。

「(なんだあ────)ごっ!」


気がついた瞬間、彼女の槍がロイの背後に迫り……そのままコンと強く叩いた。


「いいわね。ちょっと本気出しちゃった♪」



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