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“元”勇者はもう一度  作者: 半端者の柑橘系 
第一章 始まり編
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第3話 次の街と過去

療養を終え、目標のケジメをつける為にカイルは村を出ようとしていた。

「カイル君がいないと……寂しくなるな……」


この村付近は魔物は少ない。

あのジェナンがカイルがいない間に老人達を襲うとは思えないが……


何が起きるかは分からない。

次の街にいったらギルドの知り合いに頼んでおこう。


「大丈夫ですよ。街に着いたら知り合いに頼んで村を守ってもらうようにしてもらうんで」


無駄に金はある。

元勇者の頼みとなればまけてくれるかも……そんな打算的な考えもありつつ。


「俺みたいなやつを住ませてくれてありがとうございました!!」


綺麗に頭を下げたカイル。

彼らには、息子娘が街に出て行ってしまい寂しかったのも理由かもしれないが、そこには確かな優しさがあった。


「いいんだよ、頑張ってね! “元”勇者!!」


────────────

【ヴィルべ平原】


森や雲一つない青空。

動物やどこまでも続いている草原。


少しだけ緩急が激しいが、二人は体力には自信がある。


特に気にせず進む。


そうして。

ロイと共にある程度歩いた。

現在地はおおよそ南東部。


この平原はひたすらに魔物が少ない。

二〜三時間歩いたというのに、未だに戦闘がなかった。


そして、目指すは……

「目指すは王都・ヴィルべだ」


「そこで何すんだ?」

ロイは怪訝な表情となる。


「ギルドには俺の知り合いがいる。そいつらに村の護衛を頼もうかな」


村の老人達に深い恩があることは分かるのだが、カイルは村の人達をやけに気にかけていた。


何か事情があるのだろうか。

「街を行く前に、ある山へと行く」


「山?」


「ヴィルべ山。全くヴィルべヴィルべ……全部同じ地名だからありがたいんだか覚えづらいんだか」


やれやれと言った様子でカイルは呟いた。

「勇者時代、昔の王様が目立った地名のほとんどをヴィルべに変えやがった」


お陰さまで色々混乱したことがあったが、今はそれも思い出だ。


「その山に何が」


「ついてくればわかる」とカイルは言い残し、先程まである程度口を開いていたのに、山へ着くまで一言も喋らなかった。


────────────

【ヴィルべ山】


約二時間に渡って登山をすると、そこには小さな洞窟が。


相変わらずカイルは黙ったままだ。

どこか集中しているようにも見える。


「……カイルサン?」


「……まぁ黙ってついてこい」

それでも言葉には優しさが含まれていた。

とても集中している顔からは出される声色ではないが。


薄気味悪い洞窟を抜けると、巨大な岩と花々に囲まれた場所に出た。


「……!」

ロイがその綺麗さに見とれている時、カイルの目線の先にあったのは────


全身が影のようなものに覆われた……男。

それはある人に似ていた。


「これっ────!」


「俺(・)だ(・)よ(・)」

カイルでありカイルではない。

どこか暗く、どこか悲しい。


この美しい隠れスポットのような場所に、ただ佇んでいるカイルモドキ。


人として必要な何かがないこの……

「これは……俺の仲間であったミラが遺した“土魔法”の────まぁ言ってしまえば負(・)の(・)遺(・)産(・)だよ」


「土魔法? そんな魔法の種類あったか?」


魔法の種類は“おおよそ”四つ。

火・水・風・雷。


火は少々特殊だが、他三つは自然そのもの。

本来そこに新しい枠組みなどないのだが……


「ミラという天才が作ってしまった新しい形。新しい魔法」


そうしてミラは言っていた。

────カイル君。君は私のことを良く凄い人として扱ってくれるけど、実はそんなことないんだよ。


────は?


────ふふっ。謙遜とかじゃなくて本当。私なんかが思いつくことは、皆思いつく。


────……つまり。


────うん。誰もが知らない新しい魔法を編み出す人が現れる。


魔王討伐に向けた旅の途中。

「何へんなことを言っているんだこの人」なんて思ったりしたカイルだったが今それを痛感している。


魔法というのは、誰がどう定めたのかは不明。

神が作ったなんていう人がいるが、人間があたらしく作ることが出来る。


きっとそうではないのだろう。

「今奴には三重の封印が施されている。抵抗も……していない」


一度も動いた様子などなないことから、製作者(ミラ)が消えたことで力が発揮できなくなった……はずだ。


「なんでコレを作り必要があったんだ?」

こんなやばいオーラを出す奴、そしてミラというコントローラーを失ったら暴れる可能性だってあったと言うのなら、尚更。


ロイの疑問は至極真っ当なものだった。

「四……いや五年前だな。あん時はまだ結成したてでな、チョーシ乗ってたんだよ」


苦い思い出。

力だけで言えば、四年前も五年前もあまり変わらない。


それでもこうなったのは、“調子に乗った”の一言に尽きる。


「別に誰かが死んだ訳でも、傷ついた訳でもないさ」

ただ魔物が強かった。


「ここには、魔王の支配を強く受けた魔物……赤龍がいたんだよ」


ミラがあの時、カイルの分身を作って漸く状況が良くなり逆転。


もしかしたら旅はあそこで終わっていたかもしれない。


「……それだけの話さ」

あそこから、個々の力だけで解決していく戦いをやめた。そうやって連携を強めて、魔王に勝った。


それだけのこと。

村の人を守る為にはここの監視が必要不可欠。


もし……

「もし、こいつが剣を持って街や村を襲撃したら、理不尽な大量虐殺が起きる」


それでも今は動いていないようで安心した。

急いで王都へと向かい、監視をつけさせなければ。


「行くぞ」


……


…………


………………


ピシッ。


────────────

【王都ヴィルべ】


山を降り、二人は草原を駆け抜け、王都ヴィルべに到着。


特に苦戦することなく進んだ。

この街は法に縛られずのびのびとしている街。


……国民は。


貴族は今も皇族の一人になる為に争い続けている。

それでもある程度の平和が続いているのは、運がいいのかなんなのか。


レンガの家。

昼から国民と兵士が酒を飲んで楽しそうにしている。


「そう言えば、カイルサンの顔がバレたら大変なんじゃないか?」


「ま、俺の顔が世界に知られてるわけじゃないしな。名前を叫んだらやばいけど」


そんな明るい街の奥には、大きい城。

純粋な城の大きさだったらこの世界でもかなり上の方だろう。


二人が目指すべきはそこにある冒険者ギルド。

「ロイ。お前は魔法をどれくらい扱えるんだ?」


「回復(ヒール)以外なら使えるぜ! 魔物との戦いは色んな魔法を“バランス良く”使っていたんだ」


「何?」

怪訝な表情をロイに向けた。


「え?」


「なるほどな」

自称天才だと思って大変そうだと思っていたが、どうやら本当に天才らしい。


本来魔法を使う際は一(・)つ(・)の(・)み(・)。


魔法使いは何故か体の芯に魔力が集まる。

そこから火→風、風→水などの属性を変えると肉体にダメージが走るのだ。


カイルだって一つの魔法を使ったら、他の魔法を使おうとすると肉体負荷がかかる。


(……つっても、そんなの初めて聞いたぞ、こいつ……本当に────)


体質の有無だけじゃ到底そうなるとは思えないが、今は頼れる仲間。


それだけで充分。

「? カイルサン?」


「なんでもない」


【冒険者ギルド】


四年ぶりにこういう所に来た。

相変わらず、十人十色のメンバーが集まっている。


酒場も兼任しているこのギルドはちゃんと機能しているのだろうか……?


そんな事を思いつつ、カウンター席の端。

片手で謎の液体を握りながら酒を飲む男に近づく。


「よぉカイル……と、新しい仲間クン」


カイルの方へと振り向く前に、一瞬でこちらを気取られた。


その様子にどこか安心したように息を吐いたカイル。

そうして男の隣に座る。


「久しぶりレリル。出世おめでとう」


「死ね!!」


(仲悪いのか……?)


レリル・エンド。

ある程度の権力・武力を持った“ギルドの人間”。


ボサボサした白髪と、綺麗な灰色の服。

その目には黒いクマが出ていた。


頭がキレるし、有能な人間。

そして戦友でもある。


「頼みたいことは俺の分身の監視だ」


「……だと思った」

ギルドの人間。

レリルは一体何者なのだろう。


そんな事をロイは思ったのであった。


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