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“元”勇者はもう一度  作者: 半端者の柑橘系 
第一章 始まり編
18/34

第17話 次へ

今回短め

【村】


「ああそうだ。カロナ、これからどうするんだ?」

カイルはそう訊く。

あわよくば仲間にしようという目論見があった。


そんなことを言われたカロナは「う〜ん」と悩み出すかと思ったが、彼女は心に決めていることがあるらしい。


「“私”ことカロナはもうこの世にいない。

だから……国が安定するまでは“ログロ様”を支えつつ────ヴィルベ家長女は病死により……この世を去る」


それがログロと決めた約束だった。

邪魔者(ヴィザ)を退け、ログロが死んだ両親の代わりに国の舵を握る。


二年続いた“カロナのふり”をやめて、“彼女”に戻るのだ。国の一人としてではなく、一人の女の子として。


「……なら尚更。それが終わったら俺たちと来ないか? 迎えにいってやるからよ!」


ロイが叫ぶとカロナは嬉しそうに彼を見る。

……だが、それでも彼女は首を縦に振ることはなかった。


本当はついていきたい。

きっと楽しい旅になるのであろう。


それでもやりたいことがあった。

「私は……“私”になってこの世界を自分だけの目で見ていたいの」


カロナが作った仮面を剥ぎ、“彼女”に戻る。

そこからがスタートなのだ。


「そっか」

ロイは少しだけ寂しそうに笑い、カイルと共にどこかへ行こうとする。


カイルはこういう時どこかあっさりとしている。

勇者時代に別れと出会いをたくさん経験しているからなのか。


本当に淡々としているのだ。

「またな」


「じゃ〜なー!!」


国に続く道と次の国での分かれ道。

カロナと別れた二人は手を振りながら、別の道へ進んでいく。


「…………」

これを言うか悩むカロナ。

少し気恥ずかしいが、やらない後悔よりやって後悔しよう。


「ロイ!!」


「ん!?」

相変わらず雑な返答。

ロイらしいと言えばロイらしいが……


「ありがとう。私を信じるって言ってくれて!また会いましょう!!」


「……!」

カロナの表情に“何か”を読み取ったのか、ロイはどこか真面目に答えた。


「当たり前だ」

真面目な表情でロイはそう返す。

こんな旅をしている以上、いつ死ぬかもわからない。


しかもカイルは魔王軍の奴らとも戦うだろう。

もしかしたらロイもそれに巻き添えになるかもしれない。


ロイだってそれは分かってる。

でも……憧れてしまったのだ。勇者であったカイルに。


「じゃあな!」

真面目くさった顔をした後、満面の笑みでそう叫ぶ。

カイルは二人のやりとりを見てどこか楽しみそうにただ黙って見ていた。


これから何が起きても二人の仲は変わらないだろう。

そう思って────


(じゃあね、勇敢な変な人たち)



────────

【カイル】


「さて! こっからどうするんだ?」

ロイがそう訊くもカイルは何も言わない。

真っ直ぐな目ですぐ近くにある森を見ていた。


何度名前を呼んでもカイルは返答してくれない。

彼の様子は攻撃態勢。


ロイも何がなんだがわからないが取り敢えず構える。

「…………レリル! 俺を驚かすな」


「フッ。悪いな」

彼が見ていた巨木の後ろから、見覚えのある男・レリルが出てきた。

「あー!」とロイが叫ぶ。


レリルは相変わらず疲れた顔をしながら「よっ」と呟いた。

ギルド職員のエース。

出世と降格を繰り返す、異例の男だ。


カイルが言うには、今の自分と遜色ない実力の持ち主らしい。

片手で液体金属を遊びながらレリルは口を開いた。


「ほれ、頼まれていた“ブツ”だ」

そうして渡されたのは、二人の冒険書カード。

自身をギルドに登録していることを示すカードである。


「助かったぜ」と“ブツ”を渡されたカイルは二枚分のカードをまさかのビリビリに破った。


「え……? アンタなにやってんだ!?」


「これさえなければ面倒なしがらみにまきこまれずに済む」

このカードには特別な“細工”が施されおり、魔物を倒したりすると記録がギルドに転送されるシステムだ。


ここら辺りは魔物が極端に少ないために、ギルドに“勇者カイルが活動している”と知られることはなかった。


「面倒ごとを押し付けられるのはごめんでね」


誰かのために戦うのはいいが、ギルドのために戦うのはごめんだ。

鬱憤が晴れたのかカイルは清々しい顔をしていた。


「本当にこれだけでかわせるのか?」


「まぁ。無理だろうが……それでも多少はマシになる」


「……その後は?」


「女(・)王(・)サ(・)マ(・)に会いに行く」


心底嫌そうに呟いたカイル。

その様子にレリルは吹き出した。


「プッ……! お前あの人と仲悪いもんな」


「あぁ……」


「……誰の話なんだ?」

我慢できずにロイが口を挟むも、「後で話すよ」と返され知ることはなかった。

そのままレリル・カイル・ロイの三人で森を歩きながら、ロイは一つ疑問が浮かんだ。


「お前いつまでついてくるんだ?」

ギルドカードを破壊するためにわざわざこんな所にカイルが呼び寄せたのはわかるが……そこから一緒に歩きすぎて新しく加入してきた仲間だと勘違いするところだった。


彼は疲れ果てた目をロイに向けると、眠そうな低い声のまま語り出す。

「そりゃ、目的地が同じだからだよ」


「なに!?」


「俺の旅の目的はなんだっけ?」

カイルの言葉にロイはわからず唸る。

面倒な目的だったのは覚えているのだが……


「……勇者時代に残して“しまった”もののケジメをつけるためだ」


今から向かうのはそれ関係。

ミラが遺したものは壊せば終わりだが、今回は“壊す”のも“封じる”のも無理だ。


「……僧侶セシーの大切な“妹”に会いにいく」


「勇者パーティ一員の……妹ォ!?」

ロイのリアクションはいつ見てもオーバーで面白い。

揶揄いがいがあるというか。


セシーが遺してしまった妹は、姉が死んだことを知っている。

……パーティの三人が死んだ三年前に、カイルが伝えたのだ。


彼女は心の底から悲しみ、酷いストレスを抱えてしまう。


村の一員や両親が何度も慰めの言葉を送っても、心の底から彼女を救うことはできなかった。


それでも時間はある意味無慈悲に、心をゆっくりと救っていく。


「要するに乗り越えた。乗(・)り(・)越(・)え(・)さ(・)せ(・)て(・)し(・)ま(・)っ(・)た(・)とも言えるな」


死んだことを伝えた時、カイルは死ぬほど殴られた。

レリルは止めようとしたが、カイルはそれを黙って受けたのだ。


「あの時のこいつは顔真っ赤にしてたな」


「カイルサンに傷つけたのか?」


「身体強化はしてねぇよ。それでも……彼女は戦士の才能があるからな。とんでもない出力なんだ」


彼女はセシーが死んだことを乗り越えた時。

一つ問題ができてしまった。


「彼女に……もう一つの“ナニカ”が出来てしまった。

度々“人格”の主導権を奪って暴れてしまう」


幸いなのはここ数年、無関係な人間を襲うことはしないということ。


魔物を倒したり、レリルかレリルの部下と戦わせたりすると満足して“返してくれる”のだ。


人格の分裂……

強烈なストレスを感じてしまい、新しい人間が生まれた。


「もしかしてそいつも……」


「“魔力関係”なら世界レベルだな」


「もしそいつが死ぬほど暴れたら?」


「死ぬ気で止めるぞ?」


「…………」

まずい。

いずれカロナに会う約束をもう破りそうだ。


こいつら本当に戦うつもりだ。

強くなるのは大歓迎だが、ここまで天井組と戦わせられるのはくたびれる。


「……マジで言ってんのか?」


「まぁそんな硬いこと言うな」

ロイの背中を軽く叩きながら、カイルは彼女がいる村へと向かう。


「……どうにかなんねぇものかな」

正直言ってカイルだって、彼女ことをなんとかしてやりたい。


人格が戻ったら強烈な筋肉痛や骨折の痛みに襲われるのは可哀想だが────


今のカイルにはどうにもできない。

戦わせて改心することができるのなら……


そんなことを考えながら、三人はあの村へと重い足取りで進んでいくのであった。















〜人物紹介〜


分身(過去カイル)

評価(五段階)


パワー 5

スピード 5

テクニック 5

魔力操作 5

魔力総量 5


詳細

ミラが編み出した土魔法によって生まれた────

『魔法構造体』


五層に分けられている封印を全て解くと、世界に匹敵する実力を持つ。

カイル達と死闘を演じた。


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