↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
“元”勇者はもう一度  作者: 半端者の柑橘系 
第一章 始まり編
16/34

第15話 天井二人

再び戦場に舞い戻ったカイル。

その目にはもう迷いは感じられない。


後は押し切るのみ。

「よく刃先に気づいたな。そしてそれを良く実現した」


カロナとロイに視線を向け、カイルは「後は任せろ」と告げて分身へと近づく。

分身も気づいているのだろう。


ここが正念場だと。

彼女たちの活躍により、分身が持つ剣の刃先が欠けている。

完全に納刀された一撃を軽減させるには至らないが、それ以外の一撃はダウンするだろう。


(通常の斬撃だけでは俺を殺すことはできない。奴はそう考えて、無理にでも納刀してくるだろうな)


普通の打撃じゃ、癪だが大したダメージは与えられないだろうし、耐えられて納刀されるのが一番良くないパターンだ。


つまりは────

(武器を狙いつつ、分身を止める!)


やるべきことがハッキリした。

久々に、“次”を気にしない戦いをする。


『!!』

一瞬でカイルは分身の前に立ち、奥の部屋へ蹴り飛ばした。


完全に警戒していたはずなのに、カイルの接近に気づけなかった分身は、かなり驚いた様子だ。


奥の部屋へ吹き飛ばされた分身は、カイルによる蹴りの威力で壁を壊しながら部屋へ。


「……(この部屋は)」

そう言えば2Fにも同じようなものがあった。

絵画や展示物などがたくさんある部屋。


貴族のお気に入りは、質の良い物しかない。

……予想外な使い方ができるほどに。


「さて」

近くにある甲冑が持っていた槍を持つ。

分身の止め方など至ってシンプルだ。


攻撃し続けるのみなのだから。


カイルは息を吸い、ドドドド!!と槍による連撃を分身に叩き込む。


『……!!』

その連撃を神技と見違えるくらいに防ぐ分身だが、奴は“ある事”を気にしているために……


ドシュッという音。

肩から血が吹き出た。


剣(・)が(・)壊(・)れ(・)る(・)こ(・)と(・)を気にしてしまい、防御が甘くなったのだ。


『?』

分身の視界一杯に暗闇が広がる。

身動きが取れない。


それもそのはず、カーペットを体に巻き付けて動けなくしたのだから。


「ふっ!!」

抵抗されるよりも速く上へと蹴り飛ばし、天井を破壊させて2Fへ。


────普通の打撃じゃ、癪だが大したダメージは与えられないだろうし……


「……チッ」


自分で考えたことだが、やはりムカつくものだ。

三回に渡りこいつを遠くへ蹴り飛ばしているのに、大したダメージを与えられていない。


天井を壊して二階へと突入した分身とほぼ同時にカイルは現れ、一瞬で辺りを見渡す。


ここは社交場。

すぐ前までここで飲み食いしていたのだろう、料理がまだ机に並べられていた。


『…………』

チャキンという納刀特有の音が鳴る前に仕掛けたいのだが、否が応でも鞘に入れようとしてくる。


「ッ!!」

皿や机を分身の真上に放り投げて的を増やす。

居合が自分の方へ向かない為に。


放り投げた物よりも速く、カイルは分身に急接近。

視線が上に向いていたのを見逃さなかった。


(剣を破壊させることは不可能だな。ならやるべきは……鞘の破壊だ)


カイルは防御に回っている分身の鞘を狙って、足を前に出す。


ただ────


「あ」


避けられた。

いつもほとんどの攻撃を受けていたというのに。


そうして分身は納刀完了。

刃が……こっちに向かってくる。


「ッ!!」


ザ

 ─────────────

              シュッ!!!


真横に振られた斬撃を、一気に距離を離すことで回避するも、酷い冷や汗がカイルの額を伝った。


(もう武器破壊は無理だな……)


どんなに攻撃させたところで刃こぼれする様子などない。下手に狙えばカウンターされるだけだ。


『…………!』

これ以上の防戦を避けるために分身も接近。

居合などせずともダメージを与えられるという魂胆か。


「チッ!!」

隙だらけと思い、足を真横に振るい頭へ一撃を叩き込むも……


耐(・)え(・)ら(・)れ(・)た(・)。

ただ今回は余裕の防御ではない。


『!?』

側頭部にクリーンヒット。

分身の鼻と口から大量の血が。


大量出血と頭によるダメージで、分身の視界が揺らぐ。


だが耐えた、反撃できる。


「────!」

乱れた姿勢での斬撃は足元を重点的に狙ったもので、それより上には攻撃が行き届いてはいなかった。


ジャンプして躱し、足を真下に振り下ろす。

……第六感が働いたのか、鞘で受け止められたが。


キランと、欠けた刃先が光った気がする。

それは殺意の現れか、それとも気のせいか。


分身は剣を仕舞い……そして素早くカイルに向かって真上に振るった。

その斬撃により、上階が両断され城がどんどん崩れていく。大量の瓦礫がカイル達の周りに落ちた。


「ゴホッッ!!」

なんとか躱せたものの、一瞬だけ走馬灯が見えた。

これ以上長期戦に持ち込んでも死ぬだけだな。


分身はそこに好機を見出し、攻めの手を更に強めた。

居合はなしに連続で斬撃。


このままチャンスがあれば……

機会を伺っていた時、“代償”が訪れる。


「!!」

クラッと体が傾いた。

酷い目眩と頭痛。


そもそも腹を斬られるなど致命傷。

回復魔法で応急処置をしたとはいえ、ギリギリはギリギリ。


血を出しすぎたのだ。

分身は冷たく淡々と、剣をカイルの心臓に向かって一突き。


彼の命はここまで────


ガキン!


『?』

その音はまるで金属同士がぶつかった音。

いくら魔力による身体強化でも、こんな音は鳴らな

い。


『……!』

剣が彼の手により掴まれた。

心臓に刺さらず、先程の疲弊を感じられないほどの……力。


「漸く……捕まえた」

剣を掴むカイルの手から、血が流れる。

それほどまでに強い力で握っているのだ。


何故心臓を貫けなかったのか。

答えはどこまでも単純で────

カイルの服から、甲冑の一部分がポロリと落ちた。


槍を拾う時についでに持って行ったのだ。

ただ、捕まえることに夢中なカイルでは攻撃に転じられない。


ならどうするか?

そんなものは決まっている。


「今だ……カロナ!!」


分身の背後から、彼女が長剣で分身の体を貫いた。


『…………ッ』

カロナも“彼女”も、どちらも分身に的確なダメージを与えたのだ。


────────

【少し前】


カイルの蹴り飛ばしにより、分身を城外に吹き飛ばした。


その時、数十秒だけだが息を整える時間があった。

「カロナ。お前に分身を倒してもらいたい」


「はい!! ………………はぁっ!?」

素っ頓狂な声を漏らしたカロナ。


「俺じゃ警戒され過ぎて、マトモなダメージを与えさせてはくれないだろう。こういう時必要なのはお前みたいなヤツだ」


「でもどうやって!!」


「まずその傷をできうる限り止血。その後は、誰(・)で(・)も(・)わ(・)か(・)る(・)隙を作るからそこを突け」

 

本当なら殺傷性の高いロイの魔法に任せたかったが、彼はもう出し尽くした。


残るはカロナのみ。

彼女の長剣なら充分ダメージは与えられる。


────────

【現在】


『…………ッ』

二度に渡り、分身は自身の体を剣によって貫かれた。

魔法によって作られた『魔法構造体』にとって、“穴”は致命傷。


“魔力による斬撃”は、即ち魔力を“飛ばしている”と同義。

度重なる魔力消費が……分身に死の刻印を確かに押した。


「良くやった。カロナ」

彼女の頭をぽんぽんと叩くと、カロナはどこか嬉しそうに頷く。


分身は地面に膝をつき、自身の最期を悟ったのか、“最終手段”を取った。


「────来たか」


本来分身に施されている封印は五層。

それは、上から順に力・知識・殺意・思考・生命に分けられている。


恐らくヴィザが解放したのは三(・)層(・)。

それさえできれば支配できるからだ。


残りの二層は、既に分身が勝手に解いたのだろう。

尋常じゃない成長速度は、彼に命の躍動を解放させた。


『…………』

分身の心臓部分と、先程カロナに貫かれた腹部部分からボロボロに灰になっていく。


封印の五層目・生命は、自身の死を代償に、限界を超えた“鼓動”を鳴らす為にある。


(なんて魔力……なんてパワー……! これじゃ避けるのも────)


「カロナ、ト(・)ド(・)メ(・)は(・)任(・)せ(・)た(・)ぞ(・)」


カイルはそう呟くと、自身の拳に全ての魔力を集中させる。


魔力コントロールが卓越している彼は、無意識のうちに割いてしまい隅々に至ってしまう魔力さえも、拳に集めた。

正真正銘、これが本当の“全魔力による一極集中”だ。


「(ミラ、セシー、ヴァル。お前達の代わりに───

ケジメ。つけといてやる)……終わりにしよう、

“俺”」


互いに全ての魔力を込め……

────放つ。


「ッ……!!」


『!!』


信じられないほどの無音による振りかぶりから、衝突した時の爆音。


衝撃波が城全体から溢れる中、カイルは雄叫びを上げながら、一歩を引かずに押し切ろうとする。


重い重い重い重い重い。

辛い辛い辛い辛い辛い。


どんなに戦ったところで、この感情がなくなることはないのだろう。



(分身……お前はあいつ(ミラ)に作られて、そして数年も生を与えられず、本来の目的に扱われずにただ殺戮を起こしてきた。“落ちてるナイフ”にこんな気持ちを抱くのはあれだが────)


そうしてカイルは拳と剣のぶつかり合いの中、誰にいうまでもなく……呟いた。


「もう。終わりにしよう」


『!!』

ピシッ。

再びその音が。


「まぁ所詮…………ただの鉄剣だしな」


『…………!』

剣が……粉々になった。

そして────

分身の背後に、剣を振りかぶろうとするカロナ。


「これで────終わりだっ!!」

そうしてそのまま……分身の腰を両断したのだった。


剣が砕けたのは、単に質が悪かったのか、それとも思いで負けたのか。


……まぁなんにせよ。

「…………終わった」


感想はそれだけでいいと思う。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。