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“元”勇者はもう一度  作者: 半端者の柑橘系 
第一章 始まり編
14/34

第13話 襲撃

【4F:カロナ】


ヴィザの仲間による空間支配か、魔力による探知が上手くいかない。


ここにいるのはログロとカロナのみ。

元より彼女は探知が得意ではないのだがな。


すると……

「カロナ!! 無事か!」


「え!?」

壁を壊して現れたのはカイルとロイ。

扉から入ればいいのにというツッコミより先に驚きが勝った。


長年の綺麗な城が……勇者たちによってボロボロに……


「ど、どうして壁を?」


「ああと……話せば長くなるんだが、簡潔に言うと扉を開けるとランダムな位置に転送するんだ」


ロイが適当に説明する。

納得したのかしていないのか、カロナが「う……うん」と彼女も適当に返した。


上手く状況を飲み込めない二人と、冷静に辺りを見渡すカイル。


戦いはそろそろ終わったと思いたいのだが。

「あの……二人に話したいことがあるんです」


「……いいのか?」

ログロが今すぐ説明せんという様子のカロナを停止する。


二人に説明するのは……少し早すぎるんじゃないか?

という思いがあった。


「いいんです」


「「??」」

ぽかんとしているカイルとロイに、カロナは自身の過去を簡単に説明しだす。


それを聞いた二人……主にカイルはどこか勘付いたような表情をしていた。


ロイは悲しそうな表情。

本当に分かりやすい男だ。


「そうか……で、一つ聞きたい。お前は“何”だ?」

カイルが聞きたいことはそこだ。

“彼女”なのか“カロナ”なのか。


「………………」

今まで一緒に鍛えてきたのはどっちなのだろうか。


「今も昔も、皆の前で出してたつもりなのは……“私”です。だって……私は私だから」


「……そっか。ならいいんだ」

カイルの代わりにロイが呟く。


「……うん!」

どこかこの二人は、“良い友情”を持ったらしい。

それだけでは────ない気がしなくもないが。


さておき。

ザルクとリゼルは敗北し、敵の戦闘員は壊滅した。


残るはヴィザのみ。

「勇者様達、俺のことは放っておいてヴィザを探して下さい」


ログロは覚悟を決めた目をカイルに向ける。

「“元”な────って、入れ違いになったらどうするんです?」


「私の命よりも元凶を叩くのが先です。そして……身の守り方は知っているので」


するとログロは、部屋に何かを施し始めた。

これは王国の秘術。


小さな部屋を独立させるのだ。

この部屋に入る方法は一つしかない。


ログロの許可を含めた、この部屋に一つだけの扉。


「……死ぬなよ」


「分かってます」

カロナは頷き、カイル達と共に部屋を出た。


────────

【1F】


「!!」

転送先は一階の長い廊下。

三人は辺りを見渡すも、特に何かの気配は感じない。


「よし、取り敢えず城を探知で────」

カイルが二人の方を向いた時、同じタイミングで誰かにすれ違う。


その男は、カイルが倒した男だった。

「お」


「お前────!」

男の名前はザルク。

先程カイルが倒した男だ。


「ちなみに、これからアンタらの身に起きることは俺たちは知らん!! あんな奴無理無理! プロとして撤退させてもらうぜ〜」


そのままザルクは細身の男とリゼルを抱えて、窓ガラスを破壊し城から脱出。


去り際、リゼルはロイに「バイバイ」とジェスチャーして消えた。


「俺たちの身に起きること? 一体どういう────ッ!!?」


殺気。

廊下の奥、扉越しから。


「カイルサン!?」「カイルさん!!」

あまりにも“緻密な”殺意のせいで、二人は全く気づいていない。


「ッ……!」

殺気と魔力が扉の奥からどんどん強くなっていく。



細胞が死ぬと叫ぶ。



心臓がうるさいほどに鼓動する。



呼吸がどんどん速くなっていく。





圧倒的に強者によって、本来この戦いで叩かれるはずのない五感が極限にまで高まる。


聴覚が……捉えた。

“剣”を────“鞘”に入れる音。


(動け!! 動け動け動け動け動け!! こいつらを……守る守る守る守る! 守るんだ!!!)


初めて命を賭ける戦いをしたみたいだ。

死が目前に迫る感覚は慣れたと思ったのに。


空気が────

変わった。


視覚以外の五感は止まったように感じる。


「……お前ら伏せろ!!!!!」


カイルは急いで二人の頭を掴んで、無理やり姿勢を低くした。


その“上”を通ったのは────斬(・)撃(・)で(・)あ(・)っ(・)た(・)。


斬撃は扉や壁を豆腐のように切断し、城の奥まで斬られていた……絶望が否応なしに襲ってくる。


「!!?」


「ッ!!?」


「…………ッ!!」

二人の服を掴み、急いで後退。

この男とは……こいつとは戦ってはいけない。


“せめて”二人だけでも……!


「ロイ、カロナ逃げろ!! これだけはお前らが戦っていい相手じゃねぇ!!」


分身。

ヴィザは完全に封印を解いたのか。

五年前と威力が遜色ないのだ。


「嫌に決まってるだろ!」


「私はもう誰かを失いたく────!!」


「いいから逃げろ!!!」

戦闘中はどこか余裕のあるカイル。

だが今彼にそれはない。


カイルはわかっているのだ。

自分が後一秒先、生きているのか。


それさえも分からない。


「────行け」


「死なないよな!?」

ロイが叫ぶと。


「死なねぇよ。城が“崩壊”したらまた会える」


「そんなレベルなんですか!?」

カロナの叫びにカイルは黙って頷くと、

「急げ!!」と更に急かす。


これ以上我儘は言えない。

「こいつを止めたら、俺もすぐ合流する!!

お前らは近くにいる人間を非難させるんだ、任せたぞ!!」


「死ぬなよ……! カイルサン!!」

ロイとカロナは悔しさを抑えながら、非難誘導に向かった。


後は……

ご丁寧に待ってくれた分身を倒すのみ。


「やるしかない……な!(ミラ……俺がケジメを果たす!)」


────────

【数分後: ロイとカロナ】


逃げろ、後で合流するとカイルは約束してくれた。

ならそれを信じるのみだ。


……悔しいが。


「本当に……これで良かったの? ロイ」

カロナが悔しさを隠さずに呟くも、ロイはそれに応えることはなかった。

二人はわかっているのだ。

あの分身と戦って勝てるビジョンは一切浮かばない。


カイルですら生き残っていられる自信がなさそうだった。

「俺たちに“任せられた”のは、避難誘導だ。カイルサンが任せてくれたのなら、それをやりきるだけ!」


自身の目的を正当化するためには、こう言うしかない。

“逃がされた”という事実こそあるが、逃げたと同義だ。


二人は黙って廊下を走る。

そうして廊下を走っていた時、上から声が。


「そんなに勇者が怖いのですか?」


この下衆な声は────!

「ヴィザ……!」


「お久しぶりですね。“カロナ嬢の使用人”」


「!!」

やはりか……!

そんな考えがカロナになかった訳じゃない。


それでも驚きは隠せない。


「……いつ気づいていたんだ?」

あくまでも沈黙を貫いたカロナの代わりに、ロイが聞いた。

ヴィザはどこまでも不気味で不快な態度を崩さない。


「結構最近です。墓荒らしの趣味はなかったのですが……確認のためには致し方なく」


するとヴィザは指を鳴らす。

それに呼応するように、壁が切(・)り(・)抜(・)か(・)れ(・)た(・)。


切り抜かれた壁は、壁の奥にいる人間によって蹴り飛ばされ、ロイの目前に迫る。

「うおっと!!」


勢いよく体を動かしてギリギリで躱した。

寿命が一気に縮んだ気もする。


そして二人は息を吐く。

嫌な予感が的中したからだ。


「クッソ……!」

ロイは……自身の詰めの甘さを心底悔やんだ。


────────

【数分前】


分身との戦い。

ミラが言うには、五年前の動きを忠実に再現したらしい。

チャキンと、分身は剣を鞘に入れる。


もう既にカイルは分身がどう戦うかをイメージしていた。


(奴が鞘に入れた時。とんでもない一撃を叩き込んでくる)


パワーもスピードも、勇者時代から五年という歳月で鍛えた“今のカイル”の方が上だと言うのに。


反射や間合い管理が衰えていない昔のカイルに、全く勝てる気がしないのだ。


カイルの所へ分身は急接近。

鞘から抜こうとする瞬間が、視界の端で見えた。


「!!」

速い────!

なんとか伏せることで斬撃を躱す。


近くにあった太い支柱が綺麗に斬れた。

カイルはそれを利用して支柱に飛び移り、足を振り下ろす。


分身はそれを剣で受け止める。

(やっぱり……! 剣はなまくらだな)


銅貨五枚の安物。

どうやらそこのセンスもカイルと同じか。


片足で分身を壁へと蹴り飛ばし、壁にめり込んだところを追撃。


『……!』

拳による連撃を、完璧に防ぐ分身。


このまま体力を削り切ろうとする、カイルの作戦を察したのか────


「何……!?」

カイルによる二発の拳を敢えて防がず、剣を鞘に入れた。


“たった”二発じゃ死なないと判断したのだろう。

大してダメージは受けていない様子。


……元より表情は変わらないし何も喋らないのだが。


「……ッ! クッソッ!!」

抜刀する寸前に、分身を踏んで上へ跳ぶ。


一秒後。

分身はキィン!と音を鳴らし、真横に抜刀。

城が崩壊することを心配するレベルで、壁や支柱などが両断されていく。


(…………困ったな)


あの威力。

あのスピード。


五年前、ミラが作り共に共闘した時よりも遥かに……


(強い!!)

どうしてこうなった?

もしかしてミラが作った時も、封印があったのか?


なんとか着地。

分身は────


キンッという音。

風がどんどん迫ってくる感じ。


(しまっ────!!)

少し遅れて、接近してくる分身を躱そうとするも……

間に合わず腹を斬られた。


「……ッツ」


少なくともスピードは互角……そう思っていたのだが。


異常な成長スピード。

それはカイルの分身も例外ではない。


地面に倒れ、仰向きの姿勢になる。

ドクドクと血が流れる感覚と共に、敗北感がじわじわと込み上げてきた。


(逃げ……ろ……! ロイ……カロナ……)



────────

【数分後:ロイ・カロナ】


「わたしは邪魔しませんので。では」

どこかへ行くヴィザ。

それはもうどうでもいい。


……どうでもよくなるほどの……敵。


「……負けたのかな。カイルさん」

カロナは軽い笑みを浮かべながら語る。


「……だろうな」

ロイは魔力を手に込めた。

敵は────分身はもう目の前にいる。


「先に死ぬのはどっちかな。私? それともロイかな」


どこか揶揄うようにカロナは呟く。

それとは逆にロイは真面目な顔をしていた。


「さ(・)し(・)た(・)と(・)し(・)て(・)。だろ」


「────止めよう」

カロナの一言にロイは静かに頷き、向かってくる分身へ攻撃を仕掛けようとしたのだった。


















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