96話 あれ? なぜ別の展開に……?
「え?」
アレックスがいきなり距離を詰めてきた。
さきほどまでは、一緒に物陰に隠れてフィーの様子を見ていたのだけど……
今は、私を校舎の壁に押し付けるようにして、迫るような感じ。
いわゆる、壁ドン?
「それ、本気なのか?」
もう一度、問いかけられた。
若干の苛立ち……いや。
焦り?
それと、決意?
色々な感情が混ざり、複雑な表情を見せている。
「俺は……シルフィーナが好きなように見えたのか?」
「えっと……そこまではっきりとしたわけではありません。ただ、とても心配していた様子ですし。それに、二人は幼馴染ですから……そういう感情を抱いても不思議ではないのかな、と」
「……ちなみに、なんでそれを知りたいと思ったんだ? 姉だからか?」
「それは……」
……言われてみると、なんでだろう?
もちろん、フィーの姉として、妹の恋愛が気になる、というところは確かにある。
ただ、必要以上に束縛するつもりはない。
女性にお金をたかるようなヒモだとしたら、なにがなんでも阻止するが……
そこまで酷い相手ではなければ、基本、祝福するつもりだ。
フィーの人生はフィーのもの。
よほどのことがない限り、無理に介入しようとは思わない。
だから、アレックスがフィーのことが好きでも、なにも問題はない。
むしろ、アレックスなら安心して任せることができるから、万々歳だ。
……だから、アレックスが抱いているものがライクなのかラブなのか、気になった?
いや、しかし……
本当にそれだけ?
他にも、なにかしらの理由がありそうな気がしたのだけど……よくわからない。
自分のことなのに、自分がよくわからない。
「むぅううう……」
「あー……わかった、わかったからそんなに悩むな。変なことを聞いた俺が悪い」
「そうです、反省してください」
「最初に変なことを聞いてきたのは、アリーシャだからな?」
「むぅ……」
なぜか怒られてしまった。
納得いかない。
そこまでおかしなことは言っていないのだけど……
いや、しかし。
お前、あの子が好きなんだろ?
とかなんとか、子供のようなノリでデリケートな部分に触れられてきたら、確かに嫌かもしれない。
本当にアレックスがフィーに好意を抱いているのだとしたら、私の発言は軽率だっただろう。
だから、アレックスは不機嫌になったのかもしれない。
……なんて予想を立ててみたのだけど、でも、どうにもしっくりとこない。
なにか、こう……
そうではない、別の理由が隠されているような。
私に対して、そうそう簡単に打ち明けることができない理由があるような。
なぜか、ふとそんなことを思った。
「ところで……」
「うん?」
「……そろそろ離れていただけると嬉しいのですが」
相変わらず、アレックスの顔が近い。
吐息が触れてしまいそう。
友達とはいえ、ここまで近くにあると、さすがにちょっと恥ずかしい。
でも……
なぜか、アレックスは離れてくれない。
「……もしかして、照れているのか?」
「それは……まあ。私とて、一応、女の子ですからね。歳の近い異性にここまで近づかれたら、相手が誰であれ、意識はしてしまいます」
「そ、そうなのか……」
「なので、離れていただけると」
「……」
やっぱり、アレックスは離れてくれない。
というか……
むしろ、少しずつ距離がさらに近くなってきたような?
「えっと……アレックス?」
「……」
「その、なんだか距離が……」
「……」
「えっと……」
なんだろう……?
妙に顔が熱い。
胸がぽかぽかする。
とはいえ、冷静なところもあって……
このままだと、誰かに見られたら変な誤解をされてしまいそうだ、なんて考えている自分もいる。
色々なところがチグハグで、自分が自分でないような……そんな不思議な感覚。
私は……




