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90話 心配性?

「これは、フィーの分です」

「はい」

「こちらは、リナリアさんの分」

「はい」

「それから予備のお菓子です」

「……多くありませんか?」


 翌朝。

 私は、フィーとリナリアさんの昼食を用意していた。


 もちろん、料理人にも手伝ってもらっている。


 料理の腕前は、そこそこ自信はあるのだけど……

 ただ、本職と比べたら、当たり前だけど大きく劣る。


 フィーには……それと、その友達のリナリアには美味しいものを食べてほしいので、手伝ってもらっていた。


「私も手伝いたいのですが……」

「今日くらいは、『姉』にいい顔をさせてください」


 あえて姉を強調して言ってみた。


 フィーは、今日の昼はリナリアと二人で食べるらしい。


 賛成だ。

 私達といつも一緒にいたら、リナリアも疲れてしまうだろう。

 上級生の中に下級生が混ざる、というのは、色々と気苦労が多いはず。


 ……アレックスも同じなのだけど、でも、彼は色々と図太いから別枠だ。


「よし。お弁当、完成です」

「ありがとうございます」

「愛情と愛情と愛情をたっぷりと詰めておきました!」

「えっと……ありがとうございます」


 苦笑させてしまった。


 でも……うん。

 なんか、呆れられる目を向けられるのも悪くないというか。


 うーん……

 私は、フィーならなんでもアリなのかもしれない。


「それと……」


 小さな紙を取り出す。


「会話に困った時の話題を書いておきました」

「話題?」

「はい。話題に困った時は、これを見てください」


 一、好きな花。

 二、好きな食べ物。

 三、最近読んだ本。

 四、休日の過ごし方。

 五、将来の夢。

 六~~~~~


 ……全部で三十項目だ。


「……アリーシャ姉様、これは必要ありません」

「えぇ!? で、ですが、話が途切れたら……」

「その時は、一緒に黙っています」

「気まずくなりませんか?」

「リナリアさんなら、大丈夫です」


 フィーは自信ありげだ。


 なるほど……

 姉の手助けは必要ない、ということか。


 フィーが巣立っていくような感じで、ちょっと寂しい。

 でも、嬉しくもあり、複雑な気持ちだ。




――――――――――




 そして、昼休み。


 私は、いつものように中庭に移動して、アレックス達と合流した。

 ただ、そこに今日、フィーはいない。


 今頃、教室か……

 あるいは別のところでごはんをリナリアと一緒に食べているのだろう。


「……さて、と」

「おい、どこに行くつもりだ?」


 立ち上がろうとしたら、アレックスに肩を掴まれた。


「少し散歩を」

「今からめしっていう時にか?」

「お腹を空かせておこうと思いまして」

「嘘つけ。どうせ、シルフィーナの様子を見に行こうとしたんだろ」

「うっ……」

「やれやれ、アリーシャはわかりやすいね」


 ジークが笑う。

 ネコも笑っていた。


「うぅ……でも、気になりますし……」

「少しは慣れておいた方がいいんじゃないかな? こういうことは、これからもっとあるだろうし」


 ネコがもっともなことを言う。


 確かに、そのとおりだ。

 私はフィーのことが大好きだけど、でも、束縛するつもりはない。

 そんなことをしたら、ストーカーのようなものだ。


 ……まあ、心配性になってしまうのは仕方ないので、勘弁してほしい。


 私も、私の目的を達成しないといけないとだし……

 そろそろ、妹離れをした方がいいのかもしれない。


「……うぅ」


 妹離れ。

 つまり、今までと同じようにフィーとは一緒にいられないということ。


 想像しただけで目眩がした。

 吐き気すらしてしまいそうだ。


 フィーがいない日常なんて、耐えられそうにない。

 とはいえ、私も私で、メインヒロインに昇格しないといけないし、そのために、ずっと本当のメインヒロインのフィーと一緒にいるわけにはいかないし。


 あぁ……じれんま。



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