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88話 ひとまずの結論

 アリーシャ姉様は、新しい飲み物を取りに行った。


 その背中を見送りつつ、私は一人、今日見た三人の姿を思い返す。


 アレックス。


 言葉遣いはちょっと悪い。

 アリーシャ姉様にがさつなところを見せることも多い。

 今日も、ダンスは少し微妙で、アリーシャ姉様に何度も助けられていた。


 でも……


 そんなアレックスと一緒にいる時のアリーシャ姉様は、とても楽しそうだった。

 すごく自然体だったと思う。


 アレックスも楽しそうで、嬉しそうで……

 お似合いかな、なんてちょっと思ってしまった。


「……アレックスなら、なんて思います」


 次に、ジーク様。


 国の王子という、強すぎる立場を持つ。

 ただ、それに溺れることはなく、常に自己研鑽を積んでいると思う。


 アリーシャ姉様に対しても優しい。

 王族だからとか、そういう理由ではなくて……

 ジーク様という『個』がとてもすぐれているのだと、そう思わされれる。


 アリーシャ姉様も、そんなジーク様の高い包容力に惹かれているようだ。

 ……まあ、本人は自覚していないみたいだけど。


「……ジーク様なら、って、やっぱり同じことを考えてしまいます」


 最後に、ネコさん。


 うーん……どういう人なのだろう?

 色々と理由があって女装をしている、ということを以前、アリーシャ姉様から聞いた。

 ただ、その『色々』は教えてくれなかった。


 本来なら警戒する理由しかないのだけど、でも……良い人だ。

 ちょっと掴みどころはないけど、一緒にいると不思議な安心感を覚える。

 誰よりも心が近い、というべきか?


 そんなネコさんだから、アリーシャ姉様も心を許しているようだ。

 性別とか気にせず……

 『親友』として接している。


「……ネコさんも、やっぱりアリなんですよね」


 ふぅ、とため息をこぼす。


 舞踏会が開催されるまでの間……

 アレックス、ジーク様、ネコさんがアリーシャ姉様にふさわしいかどうか、勝手に審査していた。


 ちょっと寂しいけど……

 不安になってしまうけど……

 でも、三人がふさわしい男ならよし。


 ただ、もしもそうでない場合は……


 なにがなんでも。

 全力で邪魔をしようと思っていた。


 でも、そんなことはなくて……

 最初からわかっていたことだけど、三人は良い人で、誰が相手になっても、きっとアリーシャ姉様を幸せにしてくれるはず。


「うーん……」


 結局のところ、三人ならよし! という結論に。

 これもわかりきっていたことだ。


「結局……私は、なにがしたかったのかな?」


 心の中で三人を勝手に審査して。

 それで、ダメな理由を見つけて、アリーシャ姉様とずっと一緒にいられると思いたくて……

 そうやって、自分を安心させたかっただけ。


 なんて情けない。

 なんて身勝手な。


 ため息しか出てこない。


 でも……


「フィー」


 アリーシャ姉さまが戻ってくるのだけど……


 その後ろには、アレックス、ジーク様、ネコさんもいた。


「皆さん、どうして?」

「……偶然、同じ場所にいたんだよ」

「僕は、アリーシャが一人で持つのは大変だと思って」

「僕も、偶然みたいなものかな?」


 三人は、いつも通りだ。


 たぶん……

 なんだかんだ聡い三人のことだから、私のしていたことには気づいていると思う。


 でも、なにも言わない。

 それどころか、審査するというのなら好きに見て、好きに判断してほしい、という感じでありのままを見せてくれたような気がする。


 ……敵わない。


 いつか、アリーシャ姉様は恋をするだろう。

 そして、その相手は、この三人の誰かになる確率が高いと思う。


 でも……


 私が一人になるわけじゃない。

 さっき言ってくれたように、姉妹の絆はずっと続く。


 それに……


 やっぱり、アリーシャ姉様には幸せになってもらいたい。

 私のことを幸せにしてくれたから……

 今度は、アリーシャ姉様の番だ。


 誰かに恋をして。

 そして、結ばれて欲しいと思う。


 ちょっと寂しいけど……

 でも、アリーシャ姉様が幸せになる方が何倍も、何十倍も嬉しい。


 だから……うん。

 私もがんばろう!


「アリーシャ姉様、もう一度、踊ってくれませんか?」

「え、もう一回ですか?」

「はい!」

「おいおい、そういうことなら俺と……」

「いや、ここは僕じゃないかな?」

「おっと。そういうことなら、やはり僕が……」

「?」


 アリーシャ姉様は不思議そうな顔をして……

 当たり前のことを言うように言う。


「私は、フィーと踊りますよ?」

「「「……」」」


 三人は意気消沈した。


 ごめんなさい。

 でも、今日くらいは……


「行きましょう、アリーシャ姉様♪」

「はい」


 もう少しだけ、私の姉でいてください。

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