78話 ちょっとした答え
おかしい。
私……シルフィーナは、そんなことを思った。
アリーシャ姉様が『友達』と口にした時。
アレックスは、わかりやすく落ち込んだ。
ジーク様は笑っていたけれど、ほんの少し寂しそうだった。
ネコさんも同じような反応。
どうして気落ちするのだろう?
『友達』という言葉に裏の意図なんてない。
素直に好意の現れだ。
それを受けて気落ちするというのは……
……もしかして、単純な好意では満足できない、ということなのだろうか?
考えてみれば、わりとわかりやすかったかもしれない。
アレックスは、アリーシャ姉様を見るとすぐ顔を赤くする。
ジーク様は、誰にでも優しいけれど、アリーシャ姉様に対しては一際優しい。
ネコさんは親友と言っているものの、アリーシャ姉様との距離が近すぎる。
もしかして。
本当に、もしかすると。
三人は、アリーシャ姉さまのことを……
「フィー?」
「ふぁっ!?」
アリーシャ姉様が、心配そうにこちらを見ている。
「どうしたんですか? なにやら、ぼーっとしていたようですが……」
「あっ、いえ!? な、なんでもありません!」
「本当ですか?」
「えっと……午前の授業で出た課題のことがちょっと気になっていました」
「あー、それな。俺もあれ、どうするか悩んでいるよ」
ちょうどいい感じにアレックスが話に乗ってきてくれた。
「そんなに複雑な課題なのかい?」
「あ、はい。今までの授業の総決算という感じで、色々と頭を使う必要がありそうで……」
「ふむ……よかったら、僕が見ようか?」
「え?」
「もちろん、答えを教えることはできないけどね。ただ、解き方ならいいと思う」
ジーク様は、こうして優しい。
優しいのだけど……
「あら。そういうことなら、今度、私の勉強も見ていただけますか?」
「もちろん。ただ、キミにそういうのは不要だと思っていたが……」
「私とて、苦手科目くらいありますよ」
「そうだね。なら、いつでもいいよ。すぐに駆けつけよう」
このような感じで、アリーシャ姉様には特別に優しい。
差別というわけではない。
たぶん、本人も自覚していない、無意識の言動だと思う。
「そういうことなら、今度、みんなで勉強会をするのもよさそうですね。勉強だけど、でも、とても楽しいことになりそうです」
「あー……勉強はあまり興味ないけど、まあ、アリーシャがそう言うのなら」
「いいね。もちろん、僕も参加していいんだろう?」
「当たり前です」
アレックスは興味なさそうなことを言いつつも、そわそわしてた。
その態度で、実はすごく興味があることがわかる。
ネコさんは……
「まだ少し先だけど、テストに備えるために、っていうのもアリだね」
「はい、そうですね。そういえば、ネコはテストなどは得意なんですか?」
「うーん……苦手ではないけど、得意っていうほどでもないかな? 正直なところ、頭を使うよりも体を動かした方が楽だよ」
「ふふ、ネコらしい理由ですね」
「だろう?」
普段から飄々としたところがあるけど、アリーシャ姉様といる時は、そうでもない。
明るさはそのまま。
ただ、そこにある芯はしっかりと感じられるというか……
アリーシャ姉様に対しては、素で接しているような感じがした。
いつでもどこでも心を見せている。
これもまた、意識的にやっているのではなくて、無意識のように思えた。
「……うーん」
みんな、アリーシャ姉様に対しての態度が違う。
よく見ていないとわからないようなもの。
でも、一度気づいたら、はっきりとわかるようなもの。
それは……
「フィー?」
「はっ!?」
「本当に大丈夫ですか? また、ぼーっとしていたようですが……」
「だ、大丈夫です!」
「本当に?」
「本当です!」
「なら、よかったです」
アリーシャ姉様が、安心したように笑う。
その笑顔はとても綺麗で……
同時に、私は、三人の気持ちを理解した。
たぶん……
アレックスもジークもネコさんも、アリーシャ姉様のことが好きなのだろう。
よくわかる。
アリーシャ姉様は、とても素敵な人だ。
妹ということを抜きにしても、そう思う。
異性だとしたら、すぐに魅了されてしまうだろう。
本当によくわかる。
わかるからこそ……
「……簡単には認められません」




