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56話 いざ対面

 あれから、何度かアレックスと疑似デートを繰り返した。

 それだけではなくて、食事など、細かいところでも一緒に過ごすようにした。


 アレックスの残念なところは、やや修正されて……

 ついでに、私も妙なことで動揺することはなくなった。


 そして、肝心の恋人らしさだけど……

 これはもう無理だ、という判断に。


 私は失敗していない。

 それなりにうまく彼女を演じることができたと思う。

 恋愛経験は少ないが、公爵令嬢として生まれている以上、度胸はある。


 ただ、アレックスがダメだ。

 彼はウソを嫌う。

 常にまっすぐであろうとする。


 その性格が影響しているせいで、恋人らしいフリをマスターすることができなかった。

 妙にぎくしゃくしたり。

 私が距離をつめると、露骨に動揺してみせたり。

 これはもうダメだ、という判断に。


 まあ、仕方ない。

 それはそれで、アレックスの魅力と言える。

 無理に矯正しようとして、変に性格が歪んでしまったら大変だ。


 ただ……

 原作では、もっと耐性があったと思ったのだけど、なぜだろう?


 まあ、とにかく。


 恋人らしい、という点は諦めることにした。

 なに。

 彼氏彼女に見えなくても、私をアレックスの婚約者にしたい、と思わせることは可能だ。


 そして……

 アレックスの父親の屋敷を訪ねる日がやってきた。




――――――――――




 ヒュージ・ランベルト。

 アレックスの父親で、それなりの力を持つ貴族だ。


 ただ、その力は彼の手腕だけで築き上げられたものではない。

 裏取引に賄賂に癒着に……そんな汚い手段で手に入れたものだ。


 そんな主人の性格を表しているかのように、屋敷内は金銀財宝があふれていた。

 これだけの財宝を持っているぞ、すごいだろう……と、言いたいのだろう。

 自己顕示欲の強い小物だ。


「これはこれは、よくぞ当家にいらっしゃいました。歓迎いたします、クラウゼン嬢」


 アレックスと一緒に屋敷を訪ねると、最初は、なんだこの小娘は? という目を向けられたのだけど……

 そこは、腐っても大貴族。

 名乗らなくても私の正体に気づいたらしく、すぐに、ころりと態度を一転。

 必要以上に明るい笑顔を浮かべて、猫なで声で接してきた。


「突然の訪問、失礼いたします」

「いえいえいえ、お気になさらず。クラウゼン嬢ならば、たとえ真夜中であれ歓迎いたしましょう」


 ヒュージはにこやかな笑顔を浮かべているものの、その奥に、わずかな戸惑いが見えた。


 なぜ、クラウゼン家の令嬢が我が家に?

 そう不思議に思っているみたいだ。


「今日はどうされましたか?」

「実は、ランベルトさまのご子息……アレックスのことでお話が」

「……そこの愚息がなにか?」


 ヒュージが眉を寄せる。

 私の前だからかろうじて我慢しているみたいだけど、私がいなければ、アレックスを怒鳴りつけていただろう。

 実際になにをしたか確認するよりも先に、怒りをぶちまけていたであろう反応。


 そんな雰囲気だ。


「勘違いなさらないでください。アレックスが問題を起こしたというわけではありません」

「そ、そうですか……」


 ほっとするヒュージ。


 ただ、ならばなぜ? と再びの疑問顔に。


「実は、とある噂を小耳に挟んだのですが……今度、アレックスがお見合いをするらしいですね?」

「ええ、そうですね。恥ずかしながら、アレックスはそういう方面には疎い男。私が手助けをしなければと思い、席を設けさせていただきました」

「そうですよね、本当に疎いですよね」

「おい」


 素直に同意すると、隣のアレックスがジト目を向けてきた。


 だって、仕方ないではないか。

 フィーというかわいいかわいいメインヒロインがいるのに、彼女に一向に恋に落ちる様子がないのだもの。


 まあ、恋におちたらおちたらで、全力で邪魔をしてみせるが。

 フィーにまだ恋人は早い!

 せめて、ボーイフレンドだ。


 おっと、話が逸れた。


「そのお見合いなのですが、止めていただくわけにはいきませんでしょうか?」

「ふむ……それは、なぜですかな?」


 ヒュージの瞳に剣呑な光が宿る。


 公爵令嬢という立場故、私の話に耳を傾けている。

 紳士な態度も貫いている。


 しかし、余計なことをするなら話は別。

 アレックスの見合いを取り消す……金儲けのチャンスを潰されるのならば、全力で叩き潰す。

 彼は、そう言うかのようにこちらを睨んできた。


 それに対して私は……


「恥ずかしい話ですが、すごく個人的な理由なのです」


 ヒュージの牽制に気づかないフリをして、微笑む。

 あなたと敵対するつもりはない。

 むしろ、私はあなたの味方だ。


 笑顔を浮かべることで、そう伝える。


「ふむ。個人的な理由ですか……それは、なんですかな?」

「私達、実はお付き合いをしているんです」



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◆ お知らせ ◆
新作を書いてみました。
【家を追放された生贄ですが、最強の美少女悪魔が花嫁になりました】
こちらも読んでもらえたらうれしいです。


もう一つ、古い作品の続きを書いてみました。
【美少女転校生の恋人のフリをすることにしたら、彼女がやたら本気な件について】
現代ラブコメです。こちらも読んでもらえたらうれしいです。
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