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53話 モヤっと

「なるほど……それ、悪くないかもしれないな」


 最初に賛成したのはジークだ。

 うまくいくと考えているのか、表情は明るい。


 ただ……うーん?

 希望を見出したというよりは、なんか嬉しそうなのだけど……なぜだろう?


「悪くはないかもしれないけど、でも……」


 対象的に、ジークの顔は微妙だ。


 苦虫を噛み潰しているというか、つまらなそうにしているというか。

 不満そうに見えるのだけど、その理由がわからない。


 ……まあいいか。


 今は、アレックスの問題を解決するのが一番。

 細かいことは放置しておこう。


「ただ、一つ問題がありまして……」

「アレックスが利用されてしまうという問題はなくならない。根本的な対処が必要だけど、でも、今はどうすればいいかわからない……ということですか?」

「はい、その通りです。さすがですね、フィー」

「えへへ」


 私の考えを代弁するかのように、フィーが言う。


 妹、賢い。

 なでなですると、うれしそうに目を細くした。


 猫か。

 いや、猫以上に可愛いけど。


「とはいえ、そちらに関しても一つ、案があります」

「そうなのかい?」

「はい」


 実はこの展開、ゲームにあったりする。

 アレックスルートの中盤でやってくる事件だ。


 ゲームでは、恋人のフリをメインヒロインが演じて……

 それがきっかけとなり、二人は互いに想いを自覚する……という流れだ。


 おのれ。

 ゲームとはいえ、フィーと恋人のフリをするなんて。

 許せん。


 って、話が逸れた。


 そんな展開があるため、今回の策を思いついた。

 そして、追加の策もバッチリだ。


「ジークさま、お願いがあるのですが……」

「うん? なにかな?」

「アレックスの父親について、探りを入れてくれませんか?」

「探りと言われても……どういうことに関することなのか、もう少し具体的な指定をしてほしいのだけど」


 ちらりと、アレックスを見る。

 彼の父親の恥を晒してしまうことになるのだけど……


 でも、今までの反応から察するに、父親のことはなんとも思っていないだろう。

 恥を知れば怒りを覚えるかもしれないが、悲しみを抱くことはないはず。


 そう判断して、具体的な話をする。


「彼は色々な不正を働いていると思われます。それについては……社交界などで色々な噂を聞いて、個人的に気になり調べてみたところ、それらしき痕跡を見つけた、という感じでしょうか? ただ、確たる証拠にはなっていないので、示せと言われても困ってしまいます」


 ゲームではこうなっていた、なんて言えないので、それらしい言葉を並べておいた。


「具体的な内容は……今は伏せておきますが、それらが明らかになれば、今の地位を保つことは難しいでしょう。むしろ、それだけではなくて投獄されるかと」


 フィーの手前、具体的な話をすることは避けた。


 だって、そうだろう?

 違法な薬物の取り引きに、奴隷の売買。

 女性に対する暴行に、果ては殺人。


 アレックスの父親は、ゲーム通りに進んでいるのなら、もう引き返すことができないところまで足を突っ込んでいるはずだ。

 そんな話、可愛い妹の前ですることなんてできない。


 私の言いたいことを大体察したらしく、ジークは難しい顔に。

 王子だけあって、さすがに頭の回転が速い。


「アリーシャの言うことが本当なら、彼を潰すことができるね。ただ、証拠はないんだよね?」

「ありません」

「おいおい……」


 だって、仕方ないでしょう?

 前世の知識なんて言うわけにはいかない。


 そもそも……

 私個人で掴めるようなものならジークに相談しない。


「そもそも、そんな話、どうして知っているんだい?」

「さきほど話した通り、偶然のようなものですよ」

「……根拠不明の話を信じろと?」

「信じていただけませんか?」

「それは……」

「根拠不明の話ではなくて、私……アリーシャ・クラウゼンという個人を信用してください」


 ややあって、


「……やれやれ」


 ジークは苦笑した。


「無茶な話をしてくれるね」

「ジークさまだからこそ、です」

「僕が甘いのか、それとも、アリーシャがすごいのか……なかなか判断に迷ってしまうね」

「結論は?」

「いいよ」


 少し意外だ。

 思っていたよりも、わりとあっさりと了承してくれた。


「いいのですか?」

「もちろん」

「私が言うのもなんですが、私がウソをついていたら大変なことになりますよ?」

「アリーシャは、そのようなウソをつく人ではないよ。そのことは、よく知っているつもりだからね」


 つまり、私を信じている……ということか。


 悪役令嬢なのに、そんなことを言われるとは思ってなかった。

 正直なところ嬉しい。


 嬉しいだけじゃなくて、なんかこう……

 ソワソワするというか、落ち着かないというか。


「あれ?」


 なんだろう、この気持ち?


「……まあいいか」


 よくわからないけど、今は放置。

 アレックスの問題が最優先だ。


「では、お願いします」

「ああ、任せてくれ」


 私とジークは笑みを交わして、


「……」


 その一方で、アレックスがどこかつまらなそうな顔をしていた。

 今度はキミか。

 いったい、どうしたのだろう?

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新作を書いてみました。
【家を追放された生贄ですが、最強の美少女悪魔が花嫁になりました】
こちらも読んでもらえたらうれしいです。


もう一つ、古い作品の続きを書いてみました。
【美少女転校生の恋人のフリをすることにしたら、彼女がやたら本気な件について】
現代ラブコメです。こちらも読んでもらえたらうれしいです。
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