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38話 こっそりと

 アリーシャとネコが肩を並べて歩く。

 その後方に、彼女達をそっと監視する影が三つあった。


「動き出したな」

「どうやら、情報通りに街の案内をするみたいだね」


 アレックスとジークだ。

 建物の影に隠れて、そっと顔を出して様子を窺っている。


 そして、もう一人。


「……こんなこと、いいのかな……?」


 シルフィーナだった。

 どこか難しい顔をして、二人の様子を見ている。


「なんだよ、シルフィーナは気にならないのか」

「アリーシャ姉さまは、ネコさんに街の案内をするだけなので……」

「それだけで終わらないかもしれないだろ」

「そうだね、その通りだ。そこに関しては、同意見だよ」


 意見を対立させることが多いアレックスとジークだけど、この日はピタリと考えを一致させていた。


「街を案内するといっても、言い換えれば、遊ぶのとなにも変わらないからね」

「それなのに、わざわざ二人だけで向かう。気になるだろ? もしかしたら、なにかが起きるかもしれない」

「それは……」


 シルフィーナは、少し言葉に詰まってしまう。


 街を案内すると聞いていた。

 ただ、自分は誘われなかった。


 もしかして、なにか他の目的があるのでは?

 もしかして、ネコと二人きりになりたいという、特別な感情があるのでは?


 だとしたら自分は……


 そんなことを思ったシルフィーナは、二人の後をつけてみよう、というアレックスとジークの言葉に逆らえず、同行することにしてしまった。


 実際のところ……

 アリーシャがシルフィーナを誘わなかったのは、危険に巻き込むかもしれないからだ。

 それ一択であり、他の理由は欠片もない。


 メインヒロインであるシルフィーナがイベントを進行すべき、という迷いもあったが……

 やはり、妹の安全を第一に考えた結果である。


 ただ、それを知らないシルフィーナはモヤモヤしてしまう。

 まだまだ自分だけの姉でいてほしいと、わがままを考えてしまう。


「……本当は気になります」

「だろ?」

「なら、後をつけるしかないね」


 三人の間で、妙な方向に利害が一致した。


「ところで……」


 シルフィーナは不思議に思ったことを、そのまま口にする。


「二人もアリーシャ姉さまのことを気にしているんですか?」

「「うっ」」


 アレックスとジークはぴたりと足を止めた。


 そして、顔を赤くする。


「それは……」

「なんていうか……」


 沈黙。


 ややあって、二人は困り顔で言う。


「正直、俺もよくわからないんだよ。ただ、なんか気になるっていうか、アリーシャのことをもっと知りたいというか……」

「そう、だね。僕も同じような気持ちだ。とにかく、彼女のことを今以上に知りたくなるんだ」


 よくわからないのだけど、アリーシャのことが気になる。

 声を聞きたいと思うし、笑顔を見たい。

 隣にいて、たくさんの時間を過ごしたい。


 そうした感情が積み重なり……

 とある想いに変化しようとしている。


 それを自覚していないわけではない。

 そこまで鈍くはない。


 ただ、これが本物なのかどうか。

 一時の気の迷いではないか。

 それを確かめたい。

 だから、今以上にアリーシャと接したい。


 それが、アレックスとジークが胸に抱えている想いだ。


 本当に大事だからこそ。

 迷うことなく、惑わされることなく、悩むことなく。

 真剣に想いと向き合いたい。


「アレックスもジークさまも、私と同じなんですね」


 そんな二人の想いに気づかないシルフィーナは、にっこりと笑う。

 ただ単に、ラブではなくてライクという形で、アリーシャのことが好きだと思っているのだろう。


 絶妙なすれ違いだった。


「アリーシャ姉さまの後をつけるのは、なんだか悪いことをしているみたいで気が引けるんですけど……」

「そうだな。そこは同感だが……」

「とはいえ、なにもしないというのは、それはそれで後悔しそうだ。やや情けない話だけど、やらない後悔よりもやった後悔の方がいいね」

「ま、後をつける、って話じゃなければかっこついたんだけどな」

「それは言わないでくれ……」

「ふふ」


 シルフィーナがくすりと笑い、アレックスとジークも笑った。


「アリーシャ姉さま……」


 本当はいけないこと。

 でも、気になる。

 だから、ついつい後をつけてしまう。


 ごめんなさい、と心の中で謝罪しつつ……

 行動をやめられない。


「アレックス、ジークさま。がんばりましょう」

「ああ」

「うん」

「でも……ちょっとドキドキしますね」


 いたずらっぽい顔で笑い、シルフィーナは舌をぺろっと出すのだった。


 その仕草はとても愛らしい。

 アリーシャがこの場にいたら悶絶していただろう。

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【家を追放された生贄ですが、最強の美少女悪魔が花嫁になりました】
こちらも読んでもらえたらうれしいです。


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現代ラブコメです。こちらも読んでもらえたらうれしいです。
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