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35話 アレックスの憂鬱

「はぁ……」


 自室で、アレックスはため息をこぼしていた。

 普段の彼からは想像もできないような大きなため息。


 とはいえ、深刻な様子はない。

 なぜか?


 赤くなっている頬を見れば一目瞭然である。


「ったく……なんで俺が、こんなことで一喜一憂しないといけないんだ? ……って、こんなこと、じゃないか」


 ぼやく。

 でも、それで問題は解決しない。

 むしろ、ますます悩みが深くなっていくだけだ。


「……シルフィーナ……」


 アレックスの幼馴染。

 少し前に貴族の家に引き取られた。


 最初は心配だった。

 平民から貴族。

 うまくやっていけるのだろうか?

 変に目立ったりしないだろうか?

 引き取られた先でいじめられたりしないだろうか?


 結論から言うと、全て杞憂だった。


 とてもよくしてもらっているらしく……

 特に姉のアリーシャは、シルフィーナのことを溺愛している。

 それはもう、目に入れても痛くないくらいに可愛がっている。


 それは嬉しいことだ。

 嬉しいことなのだけど……


「まさか、あんな悩みを抱えていたなんてな……」


 誕生日で見せた悩み。

 そして、涙。


 アレックスは、それに気づくことができなかった。


 いや。

 なにかしら抱えているものがあるかもしれない、と薄々は察していた。

 でも、それだけ。


 それ以上のことはできず。

 大事な幼馴染の悩みを解決することはできず。


「……でも、アリーシャのおかげだな」


 シルフィーナが抱えていた問題は、全てアリーシャが解決した。


 彼女はただ、妹を溺愛するだけではなかった。

 可愛いものを愛でているだけではなかった。


 シルフィーナが抱える心の闇をしっかりと把握して。

 そして、アリーシャが持つ笑顔の力で、その闇を晴らしてみせた。

 シルフィーナを、これ以上ないほどの笑顔にしてみせた。


「ほんと、すごいな……俺にできなかったことを、あんなにも簡単にやってしまう。いや、簡単っていうわけでもないのか? たぶん、アリーシャなりに色々と苦労していたんだろうな……」


 でも、結局のところ、最後に解決してしまう。


 そこが本当にすごいと思う。

 心底尊敬する。


 ただ、尊敬するだけではなくて……

 なんというか、こう。

 もやもやするというか。

 落ち着かないというか。

 なぜか、アリーシャを直視できないというか。


「あー……なんだよ、これ。そういうこと……なのか?」


 アレックスとて子供ではない。

 自分の中に生まれつつある想い。

 形になりつつある気持ちに対して、なんとなく察しはついている。


 ただ、確信が持てない。

 断言ができない。


 もしも間違えていたら?

 勘違いしていたら?

 これほど恥ずかしいことはない。


「まさか、俺の人生で、こんなにも悩むことになるなんて……」


 絶対に間違えたくないと思うほどに真剣で。

 だからこそ、悩みも深くなってしまい……


「はぁ……ままならないな」


 アレックスは、今日何度目になるかわからないため息をこぼすのだった。



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新作を書いてみました。
【家を追放された生贄ですが、最強の美少女悪魔が花嫁になりました】
こちらも読んでもらえたらうれしいです。


もう一つ、古い作品の続きを書いてみました。
【美少女転校生の恋人のフリをすることにしたら、彼女がやたら本気な件について】
現代ラブコメです。こちらも読んでもらえたらうれしいです。
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