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33話 悪役令嬢とメインヒロインとお助けキャラ

 私とフィーは公爵令嬢なのだけど……

 最近、放課後の帰り道は歩きを選択することが多い。


 毎日馬車で送り迎えをしてもらっていたら、かなり目立つ。

 普通の生徒から反感を買うかもしれないし……

 なにより、そんな無駄遣いをさせるわけにはいかない。

 馬車を往復させるだけでも、そこそこするのだ。


 最初の頃は治安に対する疑問もあったため馬車を利用していたけれど、今はほぼほぼ徒歩だ。

 基本的に王都は平和で、夜ならばともかく、昼から事件が起きることはない。

 そんな安全性を確認することができた。


 そんなわけで、私とフィーとニルヴァレンさんは並んで帰路を歩いていた。


「えっと……ニルヴァレンさまは、新しいクラスメイトということですが……」

「うん、そうだよ。今日、転入してきたんだ」

「そうなんですね。学院には慣れましたか?」

「さすがに、それはちょっと早いかな?」

「そ、そうでした……すみません」

「ううん、気にしないで。でも、アリーシャさんのおかげで、わりと早く慣れることができそう」

「私ですか?」


 突然、私の名前が挙げられて驚いてしまう。


「さっきはありがとうね、助かっちゃった」

「アリーシャ姉さまがなにかしたんですか?」

「クラスメイトの質問攻めにあっていたんだけど、アリーシャさんに助けてもらったんだ」

「なるほど、さすがアリーシャ姉さまです!」


 特に深い考えはなくて、なんとなく、でしたこと。

 私だったらきついかな? と思っただけ。


 別に感謝しなくてもいいのだけど……

 でも、うん。

 フィーから尊敬の眼差しを向けられることは、すごく嬉しい。


「質問されるのが嫌だったわけじゃないんだけど、一度にたくさんの質問が飛んできて、それがずっと続くからどうしていいかわからなくて」

「なるほど……それは大変そうですね」

「申しわけありません。クラスメイトの皆も、悪気があるわけではないのですが……」

「あ、ううん! アリーシャさんが謝ることじゃないよ。それに、質問をするっていうことは、私に興味を持ってくれている、ってことだよね。それは、素直に嬉しいから」


 にっこりと笑うニルヴァレンさん。


 うーん。

 さすが、主人公の親友ポジション。

 まっすぐな性格をしていて、それと、とても元気で……うん。

 素直に好ましいと思える。


 とはいえ、フィーの親友を任せられるか、それは話が別だ。

 せっかくの機会だ。

 フィーの親友としてやっていけるか、私が見定めることにしよう。


「ところで、仮定の質問なのですが……」

「うん? 質問?」

「ニルヴァレンさんの友達が危機に陥っていたとしたら、どうされますか?」

「え? どうしたの、いきなり」

「ただの日常会話です」

「日常、かなあ……? でも、友達が困っているのなら、もちろん助けるよ」

「それが、とてつもない危険を孕んでいたとしても?」

「もちろん! だって、友達はその分危険なんだよね?」

「……おぉ」


 即答だった。

 考える間もない。


 予想外の返答に、ついつい目を丸くしてしまう。


「即答なのですね」

「え? なにかおかしいかな?」


 普通は、少しためらったり迷ったりすると思う。


 友達の力になりたいと思うことは当たり前のこと。

 でも、そこに危険が伴うとしたら、迷いを抱いてしまうことも当たり前のこと。

 それが悪いということではなくて、むしろ普通。

 悩んで当然のことなのだ。


 しかし、ニルヴァレンさんはまったく迷わない。

 そうすることが当たり前のように即答してみせた。

 そして、彼女の様子を見る限り、それが普通だと信じている。


 いざ、そういう場面に遭遇したら、有限実行するのだろう。


(さすが、主人公の親友というべきですか)


 主人公に負けず劣らず性格が良い。


 人気投票が開催されたことがあるのだけど……

 サブキャラクターでは一位だった。

 それだけの人気があるのも納得だ。


「では、友達を助けることで自らに大きな害を受けるとしたら?」


 でも、私はまだ納得しない。


 事は、大事な大事な妹に関すること。

 本当に妹の親友ポジションを任せても大丈夫か?

 しっかりときちんとはっきりと見極めないといけない。


「害っていうと……痛いこととか?」

「まあ、そのような感じで」

「痛いのは困るなあ……でも、やっぱり力になりたいかな」


 今度も、ほぼほぼ即答だった。


「怪我をするようなことがあっても構わないと?」

「うん、そうかな」

「普通、痛いのは嫌だと思いませんか?」

「友達が傷つく方が嫌だから」

「……」


 彼女は聖女だろうか?

 もしかしたら、ニルヴァレンさんの方がメインヒロインでは?


 ついついそんなことを思ってしまう。


「なるほど……これならば」


 フィーの親友を任せてみてもいいかもしれない。


 なんて、上から目線で物を考えていると、


「だから、アリーシャさんが困っていたら、私は全力で力になるつもりだよ」

「どうして、私の話になるのですか?」

「え?」

「え?」


 共に小首を傾げて、


「だって、アリーシャさんは友達だから」


 ニルヴァレンさんは、さらりとそう言った。


 なるほど……なるほど?

 私はいつ、ニルヴァレンさんと友達に?


「……でも」


 一緒に帰って、お話をして。

 それはもう友達なのかもしれない。


 それに……


 私は悪役令嬢だけど、でも、彼女と友達になりたいと思う。

 いずれ断罪されるかもしれないけど、それまでは仲良くしたい。

 されなかたったら、それはそれで、やはり仲良くしたい。


 そう切に願う。

 だから……


「はい、そうですね……ネコ」

「うん、アリーシャ!」


 名前で呼ぶと、彼女はとても嬉しそうに笑った。

 太陽のように明るく、元気な笑顔だ。


 そして、彼女もまた、私に対して「さん」付けを止めた。


「ふふ♪」


 私達を見て、フィーは幸せそうな感じで笑うのだった。



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【家を追放された生贄ですが、最強の美少女悪魔が花嫁になりました】
こちらも読んでもらえたらうれしいです。


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