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104話 報告をください

 ラナを我が家で雇うことに。

 侍女、ということになると思う。


 ラナに侍女の能力なんてないので、そこは勉強してもらうことになるけど……

 今まで自力で生きてきたような子だ。

 要領もいいだろうから、うまくやっていけるだろう。


 とはいえ、いきなりの話なので、では今日からお願いします、というわけにはいかない。

 まずはお父様とお母様に話をして、それから侍女長に話をして……


 いくらか準備が必要なので、それまでは私の部屋でのんびり過ごしてもらおう。

 その間、できる限りの知識は叩き込んでおく。


 と、ラナの当面の対応はこれでいいとして……


 問題は、ラナの周囲の環境、関係だ。


 実は、やっかいな出自だった。

 実は、孤児に見せかけて我が家に害を成そうとする刺客だった。

 実はスパイだった。


 ……などなど。

 そういう可能性は、わりとよくあること。

 貴族社会は、けっこう面倒なのだ。


 そういう可能性がないことを、まずは確認したいので……


「と、いうわけで……報告をいただけませんか?」

「やれやれ……」


 別室で待機していたジークに事のあらましを説明すると、ため息をこぼされてしまう。


「キミは、相変わらず突拍子のないことをするね」

「そうでしょうか? とても普通という自覚があるのですが……」

「うん、キミの自認はアテにならないということが、今、判明したよ」


 あれ?


「まあ、アリーシャが考えていたことは僕も考えていた。だから、急いで彼女のことを調べた」

「さすが、ジーク様です」

「とはいえ、ほんの数時間で得られる情報なんて大したことないからね。簡単なものしかないよ? あとは、時間をかけて調べないと」

「その簡単なものでも、今はいいので」

「わかったよ」


 やれやれ、という感じでジークが苦笑した。


 うん、面倒をかけて申しわけない。

 でも、こういうところは、私ではどうしようもないので、頼りにする。


 一度死にかけて……というか、実際に死んで。

 頼ることを覚えた私なのでした、えへん。


「これを」

「ありがとうございます」


 書類を受け取る。


 ……それなりの量だ。

 この短時間でこれだけを調べられるなんて、すごい。


 ラナ……本名は不明。

 八歳……推定年齢、誤差はほぼない。

 女の子……これは確定。


 目撃情報は一年ほど前から。

 一般人が踏み入れないような裏区画を根城にする。

 主に盗みを繰り返して、その日の糧を得る。


 勝ち気で強気。

 手が早い。


 今のところ、裏に誰かがいる、実はスパイ……などという線は薄い。

 一人で生きてきた孤高の存在。

 私との出会いも、ただの偶然。


 ……ただし。


 出自は不明。

 さすがに、この短時間でそこまで調べるのは不可能だったらしい。


 なんてことないかもしれない。

 でも、もしかしたら大貴族の血が流れている可能性もある。


「なるほど、なるほど……」


 極端な話、王の隠し子の可能性もあるわけだ。

 そうだとしたら、とんでもない爆弾となる。


 そんなラナを、私は懐に抱えることになるのだけど……


「まあ、よしとしましょうか」

「いいのかい?」

「なにかあるかもしれませんが……でも、なにもないかもしれません」

「それはそうだけど、しかし……」

「先のことを気にしすぎて、今を見捨てるというのは、つまらない話だと思いません?」

「……」


 ジークは、ぽかんとして……


「ははっ、そうだね。確かにそうかもしれない」


 楽しそうに笑うのだった。


 そして、一言。


「やっぱり、アリーシャはすごいね」


 はて?

 私のなにがすごいのだろう……?


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【家を追放された生贄ですが、最強の美少女悪魔が花嫁になりました】
こちらも読んでもらえたらうれしいです。


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