102話 シルフィーナから見たら?
「お客様、かゆいところはありませんかー?」
「なんだよ、それ。ってか、なんでお前も一緒に風呂に入ってるんだよ?」
借りてきた猫のように、一応、おとなしくしているラナ。
そんなラナの髪や体を洗う私。
けっこう汚れていたから、まずはお風呂だ。
それに、裸の付き合い、という言葉もある。
女同士に適用されるかわからないけど……
こういうコミュニケーションも必要かな? と思った次第だ。
「せっかくなので」
「なにがせっかくなんだよ、意味わからねーよ! ってか、そもそも、なんであたしが風呂に入らなくちゃいけないんだよ!?」
「けっこう汚れていたので」
「うぐ……」
自覚はあったらしい。
「ほら、お湯をかけますよ」
「ちょ、まて……わぷっ!?」
お風呂を嫌がる猫のような感じ。
でも、問題ない。
なにせ、私は前世で猫を飼っていた!
最初、猫をお風呂に入れる時は苦労したものの……
私の超絶テクニックで、すぐにお風呂の虜にしてやったからね。
ラナも、似たような感じで対処していこう。
「よし、次は体を洗いますよ」
「だから、それくらい自分で……」
「ほら、じっとしててください。洗いづらいでしょう」
「あたしの話を聞けーーー!!!」
――――――――――
アリーシャ姉様が女の子を連れて帰ったらしい。
なにを言っているんだろう? と思うけど、でも、事実だ。
そっと様子を見に行くと、八歳くらいの女の子が食堂でごはんを食べていた。
同じテーブルで、アリーシャ姉様は女の子の様子をにこにこと眺めている。
さらにその隣で、ジーク様が、やれやれという感じで様子を見守っていた。
「うーん……?」
いったい、どういう状況でこうなったのだろう?
訳がわからない。
でも、アリーシャ姉様は、時折、突拍子のないことをする。
そう考えると、わりと納得してしまう自分がいた。
「誰なんでしょう……?」
扉の隙間から中の様子を伺い、私は首を傾げる。
見たことのない女の子。
たぶん、アリーシャ姉様もジーク様も初対面だと思う。
いきなり連れて帰ってきた、ということだから、突発的なことで……
なにかしらのトラブルがあったのかもしれない。
「……」
アリーシャ姉様が、料理のソースで汚れた口元を、笑顔でそっと拭いた。
その様子を見て、ちょっともやっとするのだけど……
「……ふふ、アリーシャ姉様らしいですね」
すぐに苦笑した。
小さな女の子のお世話をするアリーシャ姉様。
アリーシャ姉様を盗られたような気持ちになって、ちょっとだけモヤっとしてしまうのだけど……
でも、そうしないアリーシャ姉様なんて、アリーシャ姉様じゃない。
当たり前のことをするように、誰かに手を差し伸べることができる。
誰も彼も笑顔にしてしまう。
それがアリーシャ姉様だ。
だから、こうしているのがとても自然だと思う。
それと……
「っ! っ……!!!」
女の子は、なんだか野良猫のよう。
アリーシャ姉様があれこれと世話をやいているのだけど、女の子は、ふてくされたような感じで拒絶する。
ただ、攻撃的というわけではなくて……うーん?
照れ隠し?
なんとなく、そのように感じた。
悪い子ではない……と思う。
ただ……
「あの目は……」
女の子の目。
あれは、昔の私を連想させるようなもの。
世界に自分の居場所がなくて、一人ぼっちになったような……そんなもの。
「……大丈夫かな?」
安い同情なのかもしれない。
でも、そう思わずにはいられなかった。




