100話 あれ? いつの間にそんなことに……
先日、ジークにちょっとしたお願いをした。
その対価として、なんでも言うことに。
そうしたら、ジークとデートをすることになった。
うーん……
どういうことだろう?
事実を並べてみたら、まったく理解できなくて混乱してしまう。
「デート……ですか?」
「うん。アリーシャは、嫌かな?」
「嫌ということはありませんが……」
誘う相手を間違えていませんか?
私はアリーシャで、フィーではないというのに。
いや。
ここはゲームの世界だけど、ゲームじゃない。
フィーとヒーローが結ばれるのが絶対の未来ではない。
なら、私とジークがデートをする日も……やってくる、のかな?
うーん、と悩んでしまう。
……まあいいか!
わからないものを考えても仕方ない。
それよりも、今は、素直にデートを楽しんだ方がよさそうだ。
まあ、前世を含めて、まともにデートをしたことのない私がちゃんとできるかどうか、そこはとても怪しいのだけど。
うーん……
フィーのことばかり考えていないで、少しは私自身のことも考えておくべきだったか?
「市なら色々なものがあるし、見ているだけでも楽しいと思ったんだけど、どうかな?」
「はい、とても素敵だと思います」
これは本音。
こういうところは来たことがないので、けっこうわくわくする。
お祭りのようなもの、かな?
どれだけ歳をとっていたとしても、この時だけは子供になるかのような、そんな不思議な魅力があった。
ここに、浴衣と花火があれば完璧だ。
まあ、花火はこの世界にもあるのだけど、浴衣はないので難しいが。
ふむ。
ないなら、作ればいいか?
シンプルそうに見えて、実は深いデザインは、この世界でもウケると思うのだけど……
「アリーシャ?」
「あ……すみません。ちょっと、ぼーっとしていました」
いけない、いけない。
今は、一応デートの最中なのだ。
そちらに集中しよう。
「大丈夫かい? もしかして、調子が……」
「あ、いえいえ。それはまったく問題ないので」
一度倒れて……というか死んでから、皆がけっこう心配性になってしまった。
とはいえ、もしもフィーが同じことになれば私もそうなると思うので、なにも言えない。
心配させないように、しっかりとしよう。
「あ。ちょっと、あちらのアクセサリーを見てもいいですか?」
「もちろん」
色々なアクセサリーが並べられている露店を見る。
指輪、ネックレス、ピアス……種類はたくさん。
宝石などがあしらわれているものは少なく、わりとシンプルな作りだ。
ただ、シンプルイズベストというか……
デザイン性に優れているため、シンプルな作りだとしても、とても輝いているように見えた。
「おぉ……」
あまりアクセサリーとかに興味のない私だけど、でも、それでも心惹かれるほど綺麗だ。
「なにか欲しいものが?」
「今なら安くしておきますよ」
ジークの問いかけに乗るように、店主が愛想よく笑う。
ジークも、一応、そこまで派手ではない装いなのだけど……
隠しきれない気品とオーラがあるため、上客と判断されたのだろう。
「うーん、そうですね……」
こういう時は素直に甘えた方がいい。
男には面子というものがある……らしい?
ただ、なにか欲しいものはあるかな?
ずらりと並ぶ商品を見て……
「あ」
ふと、銀色のイヤリングが目に止まる。
星の形をしてて、とても綺麗だ。
星が動く度にキラキラと光を放っているかのよう。
「それが気になるのかい?」
「そう、ですね……なんでしょう? 不思議と気になるというか、一目見て気に入ったというか……もしかしたら、これが一目惚れ?」
「ちょっと意味が違うかな? でも、そういうことなら……店主、これをもらうよ」
「はい、ありがとうございます!」
ジークは硬貨を渡して、代わりにイヤリングを受け取る。
「僕がつけてもいいかな?」
「え? あ、はい……お願いします」
「それじゃあ……」
ジークが、そっと私の耳に触れる。
ふぁ!?
なんか、手が冷たいというか。
くすぐったいというか。
ついつい大きな声をあげてしまいそうになった。
「どうしたの?」
「い、いえ、なんでも……」
「そう? なら、そのままじっとしてて」
今思うと、顔もけっこう近い。
なんだか、妙にドキドキしてしまうというか……
「はい、できたよ」
「あ、ありがとうございます」
ジークが離れてくれて、助かった。
あのままだったら、なんか、こう……
ちょっとおかしな感じになっていたかもしれない。
「こんなことなら、手鏡を持ってくればよかったね。合わせて買おうか?」
「いえ。こうしてプレゼントまでいただいたのに、そこまで甘えるわけには。見えないのは気になりますが……そこは、ジーク様の感想で。どうでしょうか?」
「うん、とてもよく似合っているよ」
最高の笑顔で言われて、私は、また少しドキッとしてしまうのだった。
100話までいきました。
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