陽気な音
私たちはタランチュラの縄張りを離れ、来た道を引き返すように歩く。
すると遠くの方から。
ドンゴ、ドンゴ。という何かの音が聞こえる。
「……?」
私は遠くの方から聞こえるその音に耳をかたむける。
「マスター、これ何の音かしら……」
どうやらアンミラにも聞こえるらしい。
「……分からないけど。とりあえず様子だけでも見に行ってみようか」
私達はその音のする方へ足を進めた。
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「アルドンゴ!! アルドンゴ! ドンゴ! ドンゴ!」
太鼓のような音と共に。何者かが、大きな声で叫んでる。
しかし、それが何なのかはまだ分からない。
「アルドンゴ!! アルドンゴ! ドンゴ! ドンゴ!」
私たちは音に向かって行く。
すると、それに合わせて、その音と声は大きくなっていく。
「マスター、あれ……」
ある地点に辿りつくと、私よりも背の高いアンミラが先に気が付く。その声色からは少しの困惑が見られる。
声に釣られ、私もそちらを見る。
「……」
視線の先には。フンドシ一枚。
盆踊りのように踊るゴブリン達があった。
その姿は血色の悪い、灰色の身体。
頭には尖った耳と小さな目、豚のような鼻が付いており、2本の牙が生えている。
体型は妙に太った……。まぁ、小太り程度なのだが。
何か良いものでも食べているのだろうか。
「……服を着ていないね……」
私はアンミラに言う。
むろん、あれらはモンスターなのだから、全裸に近い姿をしているのは当然なのだろうが。
私が以前見た姿(上下の衣類を身につけ、肩当とプロテクターを装備していたはずだ)との違いに困惑する。
「アルドンゴ!! アルドンゴ!! ドンゴ! ドンゴ!」
ゴブリンたちは、私たちに気づく様子もなく。
陽気に両手を挙げ、盆踊りのように円になり、踊っている。
微妙にたるんだ腹や下半身が、その動きに合わせて、ブルンブルンと揺れている。
「マスター、あれはちょっと……。あまり見ないでちょうだい」
アンミラは手の平で自分の顔を隠している。
私はその姿を見て。
「……アンミラの美的感覚には合わなかったかな?」
少し笑っていう。
「もうっ……」
アンミラも苦笑いだ。
「まぁ、とにかく。ラルザ平原にゴブリンが一切いなかった理由が分かった。この森に集まってたんだ……」
それにしても、何をしてるんだろう……。
私は、ゴブリン達のまわりをよく見る。
そこには、山盛りの食べ物があるわけでも、何かが木に縛られているわけでもなかった。
ただ、黒い大きな木箱が大量にある。
黒い。
いや、赤黒い……? もしかして……。
私はまた嫌な記憶が浮かび、頭を振る。
そして。
「スクリーン、この場にいるモンスター情報を教えて」
私はそうスクリーンに聞く。
「ゴブリンLv13が20匹、アーチゴブリンLv15が10匹」
スクリーンは一度、そこで言葉を切ると。
「あと……感知不能な生き物が20体ほど」
そう続けた。
「……ありがとう」
私は、静かに言うと。アンミラに目で伝える。
(倒すよ。絶対に)
アンミラはその意思を汲み取ったのか、頷く。




