↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
82/92

迎えにきたよ



「昔話でも、いたしましょうか」


 ヴェロニカは、赤い液体の入ったグラスをゆっくりと掲げた。


 薄暗い部屋の中で、血の色が燭台の炎を受けて揺れる。


 ゼノンは、そのグラスから目を離さなかった。


 ロザリア・ヴァルディエ。


 十一年前に命を奪われた、彼の母。


 その血が、今もこうして残されている。


「随分と悪趣味なことをするんだね」


 ゼノンが静かに言った。


 ヴェロニカは微笑んだ。


「お気に召しませんでした?」


「君はどう思う?」


「私は、貴重なものだと思っておりますわ」


 ヴェロニカはグラスを眺めた。


「純血の王族。それも、治癒の異能を持つロザリア様の血ですもの」


 セドリックが一歩前へ出た。


「お前、いい加減にしろよ」


 その声には、普段の軽さがなかった。


 ヴェロニカは、ゆっくりと視線を向ける。


「あら、セドリック様。お久しぶりですわね」


「挨拶なんかどうでもいい」


 セドリックは、グラスへ視線を向けた。


「それをどこで手に入れた」


「十一年前の屋敷ですわ」


 あまりにも平然とした答えだった。


「エドモンド様が、ロザリア様の血を少しだけ残しておかれたのです」


 ゼノンの指先が、僅かに動いた。


 母の心臓を奪った男。


 その血まで、戦利品のように保存していたというのか。


「エドモンドは、まだ持っているの?」


 ゼノンが尋ねた。


「何を、ですの?」


「母上の血を」


 ヴェロニカは小さく笑った。


「それは、私にも分かりませんわ」


 ゼノンは、しばらく彼女を見つめていた。


 そして、静かに口を開いた。


「じゃあ、君に聞きたいことがある」


「何でしょう?」


「エドモンドは、今どこにいるの?」


 ヴェロニカの笑みが、僅かに深くなった。


「さあ。どちらでしょうね」


 セドリックが舌打ちした。


「ふざけるなよ」


「私は何も――」


「――これは、王家の命令だ」


 ゼノンの声が、静かに響いた。


 その瞬間。


 ヴェロニカの身体が強張った。


 赤い瞳が、鮮やかに輝く。


「僕の質問に、嘘をつかずに答えて」


 ヴェロニカの唇が震えた。


 抗おうとしていることが、表情から分かった。


 けれど、王家の命令に逆らうことはできない。


「エドモンドは、今どこにいるの?」


 ゼノンが、もう一度尋ねた。


「……分かりません」


 その答えに、セドリックが眉を寄せた。


「本当に知らないのか?」


「……はい」


 ヴェロニカの声は、苦しそうだった。


「今朝、別邸を出ていかれてから……行き先は知らされておりません」


 ゼノンは、静かに頷いた。


「そう」


 そして、続けた。


「僕たちをここへ誘い込んだ理由は?」


 ヴェロニカの顔色が変わった。


「それは……」


 唇が震える。


「……ゼノン様を、ルシア様から引き離すためです」


 セドリックの表情が変わった。


「やっぱりな」


 ゼノンは、驚かなかった。


 最初から予想していたことだった。


「エドモンドは、ルシアのところへ向かったの?」


「……そのつもりだと……」


「何をするつもり?」


「ルシア様を……連れ出すために……」


 ゼノンの赤い瞳が細められた。


 けれど、その声は落ち着いていた。


「君たちは、僕がここへ来ることを知っていたんだね」


「はい……」


「だから、母上の血を用意した」


「……はい」


 ヴェロニカの頬を、冷たい汗が伝った。


「ゼノン様が、怒りで冷静さを失うように……」


 セドリックが、低く息を吐いた。


「本当に、ろくでもない連中だな」


 ゼノンは、静かにヴェロニカを見つめていた。


 やがて、ゆっくりと手を上げる。


「セドリック」


「何だ?」


「母上の血を、回収してくれる?」


「分かった」


 セドリックが手を伸ばした。


 ヴェロニカの手から、グラスがふわりと浮き上がる。


 空気操作。


 グラスは、何かに支えられているかのように宙を滑り、セドリックの手元へ移動した。


「確保した」


「ありがとう」


 ゼノンは静かに頷いた。


 そして、ヴェロニカへ視線を戻す。


「君には、まだ聞きたいことがある」


 ヴェロニカは、何も答えなかった。


     ◇


 その頃。


 ヴァルディエ家の屋敷では、ルシアがエリーゼと一緒に居間で過ごしていた。


 テーブルには、温かい紅茶と焼き菓子が並んでいる。


 足元では、ルナが丸くなっていた。


「お兄様、もう着いたかな」


 私が呟くと、エリーゼが顔を上げた。


「そうね。そろそろかもしれないわ」


「……無事だといいけど」


「ゼノンさんなら大丈夫よ」


 エリーゼは微笑んだ。


「セドリックさんも一緒だもの」


「うん」


 私は小さく頷いた。


 けれど、胸の奥には小さな不安が残っていた。


 エドモンドが、簡単にヴェロニカを差し出すとは思えない。


 何か、別の目的があるのではないか。


 そんな考えが、頭から離れなかった。


 そのとき、居間の扉が開いた。


「ルシア」


 アルベルトだった。


「アル?」


「少し、話がある」


 その表情が、いつもより険しい。


 私は姿勢を正した。


「何かあったの?」


「王宮から連絡があった。ゼノンたちが、ヴェロニカの潜伏先へ到着したそうだ」


「そうなんだ」


「ただ、まだ連絡は取れていない」


 私は、少しだけ眉を寄せた。


「大丈夫かな」


「心配するな。ゼノンは簡単にやられるような男じゃない」


 アルベルトは静かに答えた。


 そのときだった。


 ルナが、突然顔を上げた。


「……ルナ?」


 白狼の耳が、ぴくりと動く。


 私は感覚を共有した。


 遠くから、何かが近づいてくる。


 足音。


 けれど、一人ではない。


 複数の気配。


 私はゆっくりと立ち上がった。


「……アル」


「どうした?」


「誰か、来る」


 アルベルトの表情が変わった。


「どこから?」


「正門の方」


 私は窓の外へ視線を向けた。


 庭園の向こう。


 高い門の前に、黒い馬車が止まっていた。


 その扉が、ゆっくりと開く。


 降りてきたのは、一人の男だった。


 黒い外套。


 整った漆黒の髪。


 そして、深紅の瞳。


 その姿を見た瞬間。


 私の身体が、凍りついた。


「……あ」


 忘れるはずがなかった。


 十一年前。


 お父さまとお母さまを殺した男。


 不気味な笑顔。


 記憶の中にある姿と、何も変わっていない。


「……エドモンド」


 声が震えた。


 アルベルトが、すぐに私の前へ立った。


「ルシア、下がれ」


 エリーゼも立ち上がり、私の隣へ来る。


 ルナが低く唸った。


 門の向こう。


 エドモンドは、ゆっくりと顔を上げた。


 まるで、私がそこにいることを最初から知っていたかのように。


 そして。


 優雅に微笑んだ。


「久しぶりだね、ルシア」


 その声が、夜の庭園に響いた。


「十八歳のお誕生日、おめでとう」


 私は、何も言えなかった。


 エドモンドは、胸元から小さな箱を取り出した。


「花束は、気に入ってくれたかな?」


 その言葉に、背筋が冷たくなった。


 あの花束。


『もうすぐ、迎えに行くよ』


 あのメッセージを書いた本人が、今、目の前にいる。


 エドモンドは、嬉しそうに目を細めた。


「約束どおり、迎えに来たよ」


 その声は、あまりにも穏やかだった。


「さあ、ルシア」


 エドモンドが、ゆっくりと手を差し出した。


「私と一緒に帰ろうか」


第三十章 奪われる王女


 エドモンドは、まるで幼い子供を迎えに来た父親のように微笑んだ。


 高い門を隔てた向こう側。


 ヴァルディエ家の血を引く者だけが持つ、漆黒の髪。


 その特徴が、目の前の男にもあることが、ひどく嫌だった。


「ルシア」


 アルベルトが低い声で呼んだ。


「俺の後ろにいろ」


 私は小さく頷いた。


 けれど、エドモンドから目を逸らすことができなかった。


「どうしたんだい、ルシア?」


 エドモンドは首を傾げた。


「せっかく迎えに来たというのに、そんな顔をして」


 私は唇を噛んだ。


 胸の奥が、冷たくなる。


 あの日の記憶が蘇っていた。


 お母さまの悲鳴。


 血に染まった床。


 倒れていたお父さま。


 そして、笑っていたこの男。


「……帰って」


 ようやく声が出た。


 エドモンドの眉が僅かに動く。


「何だって?」


「私は、あなたとは行かない」


 震える声だった。


 それでも、はっきりと伝えた。


 エドモンドは、しばらく私を見つめていた。


 やがて、小さく笑った。


「困った子だね」


 その声は、どこまでも優しかった。


「君は、まだ自分がどれほど特別な存在なのか理解していないんだ」


「……特別?」


「ああ」


 エドモンドは頷いた。


「ヴァルディエ家の姫君。アルフォンスとロザリアの娘。そして、私が十一年間待ち続けた子だ」


 私は、そっと拳を握り締めた。


「……どうして、私なの?」


 ずっと聞きたかったことだった。


 十一年前。


 どうして、あの屋敷を襲ったのか。


 どうして、お父さまとお母さまを殺したのか。


 そして、どうして今も私を狙い続けるのか。


「私の何が欲しいの?」


 エドモンドは、嬉しそうに目を細めた。


「君のすべてだよ」


 その答えに、背筋が冷たくなった。


「君の血も、力も、その身体に宿る王家の可能性も」


 エドモンドは静かに続けた。


「君は、私が求めてきたものをすべて持っている」


 アルベルトが一歩前へ出た。


「それ以上、話す必要はない」


 その声は、冷たかった。


「エドモンド。今すぐ立ち去れ」


 エドモンドは、ようやくアルベルトへ視線を向けた。


「久しぶりだね、アルベルト」


「お前と昔話をするつもりはない」


「相変わらず、つれないな」


 エドモンドは楽しそうに笑った。


「十一年間、私の又姪を育ててくれたことには感謝しているよ」


 アルベルトの表情が険しくなる。


「お前に感謝される筋合いはない」


「そうかい?」


「ルシアは、お前のものじゃない」


 エドモンドは、小さく息を吐いた。


「誰も、所有物だとは言っていないよ」


 その言葉とは裏腹に、彼の赤い瞳には明らかな執着が宿っていた。


「ただ、迎えに来ただけさ」


     ◇


 アルベルトが、静かに右手を上げた。


 次の瞬間。


 門の外側へ向かって、白い霜が広がっていく。


 氷結。


 地面から厚い氷の壁が立ち上がり、エドモンドと屋敷の間を遮った。


「ルシア、エリーゼと一緒に奥へ戻れ」


「でも、アル……!」


「ここは俺に任せろ」


 アルベルトの声には、迷いがなかった。


 エリーゼが私の手を取る。


「行きましょう、ルシア」


 私は頷いた。


 けれど、足が動かなかった。


 あの男から目を離した瞬間、また誰かが傷つくのではないか。


 そんな恐怖が、胸の奥に広がっていた。


「ルシア」


 エリーゼが優しく呼んだ。


「アルベルトさんを信じましょう」


「……うん」


 私はようやく足を動かした。


 その瞬間だった。


 ――バキンッ!!


 凄まじい音が響いた。


 振り返る。


 厚い氷の壁に、大きな亀裂が走っていた。


 次の瞬間、氷が粉々に砕け散る。


「……っ!」


 アルベルトが目を細めた。


 砕けた氷の向こうから、エドモンドが姿を現す。


「相変わらず見事な氷結だね」


 その声には、余裕があった。


「でも、少し物足りないな」


 エドモンドは、何事もなかったかのように歩みを進めた。


 アルベルトの周囲に、無数の氷槍が形成される。


「それ以上近づくな」


 次の瞬間。


 氷槍が一斉に放たれた。


 鋭い風切り音。


 エドモンドは、僅かに身体を傾けた。


 一つ。


 二つ。


 三つ。


 次々と氷槍をかわしていく。


 けれど、最後の一本が肩を貫いた。


 鮮血が散る。


 私は息を呑んだ。


「……当たった」


 しかし、エドモンドは笑っていた。


「いいね」


 肩に刺さった氷槍を掴み、ゆっくりと引き抜く。


 傷口が、みるみる塞がっていく。


「さすが、ロザリアの幼馴染だ」


 アルベルトの表情が変わった。


「その名前を口にするな」


 エドモンドは、楽しそうに笑った。


「どうして? 君も、あの子のことが大好きだっただろう?」


 次の瞬間。


 アルベルトの足元から、巨大な氷の柱が立ち上がった。


 それらはエドモンドの周囲を囲み、瞬く間に氷の檻を形成する。


 分厚い氷の格子。


 さらに外側から、何層もの氷壁が重なっていく。


「そこで大人しくしていろ」


 アルベルトが低く告げた。


 エドモンドは、氷の檻を見回した。


「なるほど」


 その唇に、薄い笑みが浮かぶ。


「これは、なかなか頑丈そうだ」


 次の瞬間。


 檻の内側から、激しい衝撃が響いた。


 一度。


 二度。


 三度。


 氷に亀裂が走る。


 アルベルトがさらに氷を重ねる。


 けれど。


 ――バリィンッ!!


 檻が内側から砕け散った。


「……くそっ」


 アルベルトが小さく舌打ちした。


 エドモンドは、ゆっくりと姿を現した。


「悪くないよ、アルベルト」


 その赤い瞳が、私へ向けられる。


「でも、私には時間がないんだ」


     ◇


「ルシア、走って!」


 エリーゼが私の手を引いた。


 私は頷き、屋敷へ向かって走り出した。


 ルナが私たちの隣を駆ける。


 背後から、氷が砕ける音が響いていた。


 振り返りたい。


 けれど、振り返ってはいけない。


 アルベルトが時間を稼いでくれている。


 私がここに残れば、余計に危険になる。


 そう分かっているのに。


「……アル」


 小さく名前を呼んだ。


 そのときだった。


 ルナが突然、足を止めた。


「……ルナ?」


 白狼が低く唸る。


 感覚を共有した瞬間、背後から凄まじい速度で近づいてくる気配を感じた。


「エリーゼ!」


 私は咄嗟に彼女の手を引いた。


 次の瞬間。


 私たちの目の前に、黒い影が落ちた。


「やあ」


 聞き覚えのある声。


 顔を上げる。


 エドモンドだった。


「随分と足が速いね」


 その姿を見た瞬間、身体が強張った。


 どうして。


 さっきまで、アルと戦っていたはずなのに。


 エドモンドは、私たちを見下ろして微笑んだ。


「でも、逃げなくてもいいんだよ」


 その手が、ゆっくりと伸びてくる。


「私は、君を傷つけるつもりはないんだから」


 エリーゼが、私の前へ出た。


「ルシアに触れないでください」


 その声は、静かだった。


 けれど、明確な怒りが滲んでいる。


 エドモンドは、少しだけ首を傾げた。


「君は?」


「エリーゼです」


「ああ。ルシアの護衛をしている子だね」


 エドモンドは微笑んだ。


「随分と忠実だ」


「当然です」


 エリーゼは答えた。


「ルシアは、私の大切な友人ですから」


 その言葉に、胸が温かくなった。


 けれど、次の瞬間。


 エリーゼの足元から、白い霜が広がった。


 氷結。


 エドモンドの足元へ向かって氷が伸びる。


 その足首を捕らえようとした瞬間、エドモンドが軽く跳び退いた。


「おや」


 その声には、楽しげな響きがあった。


「君も氷結を使うのか」


 エリーゼは答えなかった。


 さらに氷を広げる。


 エドモンドの周囲へ、次々と氷の柱が立ち上がった。


 けれど、男はその隙間を縫うように移動する。


「なかなか器用だね」


 エドモンドが笑った。


「でも、まだ若い」


 次の瞬間。


 エドモンドの姿が、視界から消えた。


「……え?」


 気づいたときには、エリーゼの背後に立っていた。


「エリーゼ!」


 私は叫んだ。


 エドモンドの手が、彼女の肩へ伸びる。


 その瞬間。


 ルナが飛び出した。


 白狼の前に、透明な膜が現れる。


 エドモンドの手が膜へ触れた。


 次の瞬間、腕が弾かれる。


「おや?」


 エドモンドが目を見開いた。


「反射か」


 その赤い瞳が、ルナへ向けられる。


「面白いね」


 ルナが低く唸る。


 私はエリーゼの手を引き、後ろへ下がった。


「ルナ、ありがとう」


 白狼は私を見上げ、すぐにエドモンドへ視線を戻した。


 エドモンドは、ゆっくりと私へ向き直った。


「ルシア」


 その声が、少しだけ低くなる。


「君は、随分と興味深い異能を持っているんだね」


 私は答えなかった。


「白狼に、反射」


 エドモンドは嬉しそうに笑った。


「ますます欲しくなったよ」


     ◇


 その頃。


 王都西側の別邸では、ゼノンがヴェロニカを見つめていた。


「エドモンドは、ルシアを連れ出すつもりなんだね」


 ヴェロニカは、王家の命令に逆らえないまま頷いた。


「……はい」


 セドリックが顔を上げた。


「ゼノン、もう十分だろ」


「うん」


 ゼノンは静かに頷いた。


「戻ろう」


 ヴェロニカの身体から、僅かに力が抜けた。


 けれど、ゼノンは彼女を見つめたまま告げた。


「君は、ここから動かないで」


 王家の命令。


 ヴェロニカの身体が、再び強張る。


 ゼノンは、護衛兵たちへ視線を向けた。


「彼女を拘束して、王宮へ連行してください」


「かしこまりました!」


 護衛兵たちが動き出す。


 ゼノンは、セドリックへ向き直った。


「急ごう」


「ああ」


 二人は屋敷を飛び出した。


 ガルとレオが、それぞれの影から姿を現す。


 黒狼たちが低く唸る。


 ゼノンは、王都の方角へ視線を向けた。


「ルシア……」


 その赤い瞳に、鋭い光が宿った。


「待ってて」


     ◇


 ヴァルディエ家の庭園。


 エドモンドは、ゆっくりと私へ近づいてきた。


「さあ、ルシア」


 その声は、穏やかだった。


「そろそろ行こうか」


 私は、ゆっくりと首を横に振った。


「……行かない」


「困った子だね」


 エドモンドは小さく笑った。


「君の意思を尊重したいところだけれど、今日はそうも言っていられない」


 その言葉に、胸が冷たくなった。


「……どういうこと?」


 エドモンドは答えなかった。


 ただ、私の背後へ視線を向けた。


 その瞬間。


「ルシア!!」


 アルベルトの声が響いた。


 振り返る。


 アルベルトが、庭園の向こうから走ってきていた。


 その表情は、今まで見たことがないほど険しかった。


「そいつから離れろ!!」


 私は、思わず一歩下がった。


 けれど。


 そのとき、エドモンドが動いた。


 あまりにも速かった。


 気づいたときには、目の前にいた。


 伸ばされた手が、私の腕を掴もうとする。


「……っ!」


 私は咄嗟に右手を上げた。


 透明な膜が現れる。


 反射。


 エドモンドの手が膜へ触れた瞬間、強い衝撃が跳ね返った。


 男の身体が、僅かに後ろへ押し戻される。


「ほう」


 エドモンドが、楽しそうに笑った。


「やはり、いい力だ」


 私は、荒くなった息を整えようとした。


 怖い。


 けれど、逃げるだけでは駄目だ。


 私は、ルナへ視線を向けた。


 白狼が、静かに頷くように頭を下げる。


「ルナ」


 私が小さく名前を呼ぶと、白狼は静かにこちらを見上げた。


 赤い瞳。


 雪のように白い毛並み。


 私の影から生まれた、もう一人の私。


 言葉にしなくても、気持ちは伝わっていた。


 怖い。


 逃げたい。


 けれど、ここで逃げれば、エリーゼやアルが傷ついてしまうかもしれない。


 私は、ゆっくりと息を吸った。


「一緒に、頑張ろう」


 ルナが小さく鼻を鳴らす。


 次の瞬間、白狼は地面を蹴った。


 エドモンドの右側へ回り込む。


 私は左側へ一歩移動した。


「ほう」


 エドモンドが楽しそうに目を細める。


「挟み撃ちのつもりかい?」


 私は答えなかった。


 ルナと感覚を共有する。


 自分の視界。


 ルナの視界。


 二つの景色が、重なる。


 エドモンドの正面と背後。


 その両方が、同時に見えているような感覚だった。


「面白いね」


 エドモンドが微笑んだ。


「アルフォンスの影狼とも、ゼノンの影狼とも違う」


 その名前に、胸の奥が痛んだ。


 お父さま。


 あの人のことを、この男の口から聞きたくなかった。


「……お父さまの名前を、呼ばないで」


 小さく告げると、エドモンドは少しだけ目を丸くした。


「おや」


 そして、笑った。


「怒ったのかい?」


 私は唇を噛んだ。


 怒っている。


 怖いだけではない。


 お父さまとお母さまを殺したこの男が、何事もなかったかのように笑っていることが、どうしても許せなかった。


 そのとき。


 エドモンドの姿が、視界から消えた。


「……っ!」


 ルナの視界に、黒い影が映る。


 右側。


 私は咄嗟に手を上げた。


 透明な膜が現れる。


 次の瞬間、強い衝撃が走った。


 反射。


 エドモンドの拳が弾かれ、男の身体が僅かに後退する。


「いい反応だ」


 エドモンドが微笑んだ。


「でも、まだ甘い」


 その言葉と同時に、男が再び動いた。


 今度は背後。


 私は振り返ろうとした。


 けれど、間に合わない。


 その瞬間、ルナが飛び出した。


 白狼の前に、透明な膜が広がる。


 エドモンドの手が触れ、勢いよく弾かれた。


「……!」


 私は息を呑んだ。


 ルナが守ってくれた。


 その感覚が、胸の奥へ伝わってくる。


 自分が反射したときと、ほとんど同じ感覚。


 私とルナは、確かに繋がっている。


「なるほど」


 エドモンドが静かに呟いた。


「白狼も、同じ異能を使えるのか」


 その赤い瞳が、興味深そうに細められる。


「ますます素晴らしい」


 私は、ルナのそばへ歩み寄った。


 エドモンドは、私たちを見つめながら微笑んでいる。


「ルシア。君は、自分の力がどれほど貴重なのか理解しているかい?」


 私は首を横に振った。


「そんなこと、どうでもいい」


「どうでもいい?」


「私は、あなたに力を渡すつもりなんてない」


 エドモンドの笑みが、僅かに深くなった。


「渡す必要はないよ」


 その言葉に、背筋が冷たくなる。


「君の中にあるものを、私が受け取ればいいだけだからね」


     ◇


 そのとき。


 庭園の向こうから、鋭い氷槍が飛んできた。


 エドモンドが顔を向ける。


 氷槍は男の足元へ突き刺さり、進路を塞いだ。


「ルシアから離れろ!」


 アルベルトだった。


 その後ろには、エリーゼもいる。


 アルベルトの周囲には、すでに複数の氷槍が形成されていた。


「ルシア、下がれ!」


 私は頷いた。


 けれど、エドモンドは動かなかった。


「随分と邪魔が入るね」


 アルベルトが手を振り下ろす。


 氷槍が一斉に放たれた。


 エドモンドは軽く身をかわす。


 その足元へ、エリーゼの氷が広がった。


 氷結。


 エドモンドの足首を捕らえようと、地面から氷が伸びる。


「今だ!」


 アルベルトの声が響いた。


 次の瞬間。


 エドモンドの周囲に、巨大な氷の柱が立ち上がった。


 柱同士が繋がり、厚い氷の檻を形成する。


 さらに、外側から何層もの氷壁が重なった。


「……捕まえた?」


 私は小さく呟いた。


 けれど、アルベルトは表情を緩めなかった。


「まだだ」


 その言葉と同時に、氷の檻の内側から激しい衝撃が響いた。


 一度。


 二度。


 三度。


 氷に亀裂が走る。


 アルベルトがさらに氷を重ねる。


 けれど、次の瞬間。


 氷が内側から砕け散った。


「……っ!」


 エドモンドが、ゆっくりと姿を現した。


「なかなかいい連携だね」


 その声には、まだ余裕があった。


「でも、私を閉じ込めるには足りない」


 アルベルトが舌打ちする。


「化け物め」


 エドモンドは楽しそうに笑った。


「褒め言葉として受け取っておこう」


     ◇


 私は、ゆっくりと後ろへ下がった。


 ルナが隣へ並ぶ。


 反射を使うたびに、身体の奥が少しずつ重くなっている気がした。


 まだ、長時間の戦闘には慣れていない。


 お兄様が教えてくれたことを思い出す。


 無理に力を使い続けないこと。


 感情に引っ張られないこと。


 そして、自分の限界を知ること。


 私は深く息を吸った。


 落ち着いて。


 焦らないで。


 そのとき。


 エドモンドが、突然こちらへ視線を向けた。


「ルシア」


 その声が、少しだけ低くなる。


「そろそろ終わりにしようか」


 私は身構えた。


 ルナも低く唸る。


 けれど、エドモンドは私ではなく、エリーゼへ視線を向けた。


「君は、随分と彼女を大切にしているようだね」


 その言葉に、嫌な予感がした。


「……やめて」


 私は小さく呟いた。


 エドモンドは微笑んだ。


「どうして?」


 次の瞬間。


 男の姿が消えた。


「エリーゼ!」


 私は叫んだ。


 けれど、間に合わなかった。


 エドモンドは、すでにエリーゼの背後に立っていた。


 その手が、彼女の首元へ伸びる。


「……っ!」


 エリーゼが振り返ろうとする。


 けれど、その前に。


 エドモンドの腕が、彼女の身体を拘束した。


「動かないで」


 穏やかな声だった。


 その手には、鋭い爪が覗いている。


 エリーゼの首筋へ、そっと当てられた。


「少しでも動けば、この子の首を傷つけることになるよ」


 私は、その場に立ち尽くした。


「……エリーゼ」


 エリーゼは、苦しそうに顔を上げた。


「ルシア、来ちゃ駄目!」


 エドモンドが小さく笑う。


「いい子だね」


 その赤い瞳が、私へ向けられた。


「さあ、ルシア」


 私は、震える手を握り締めた。


「君がこちらへ来てくれれば、この子には何もしない」


 その言葉に、胸が締めつけられた。


 エリーゼ。


 私の大切な友人。


 いつも、そばにいてくれた人。


 私を守ろうとしてくれた人。


 その人が、今、私のせいで危険な目に遭っている。


「……やめて」


 私は、小さく声を絞り出した。


「エリーゼを、離して」


「もちろん」


 エドモンドは微笑んだ。


「君が来てくれればね」


 私は、ゆっくりと一歩踏み出した。


「ルシア!」


 アルベルトが叫ぶ。


「行くな!」


 私は足を止めた。


 けれど、エリーゼの首筋に当てられた爪が、僅かに動く。


 細い血の筋が、白い肌を伝った。


「……っ!」


 エリーゼが小さく息を呑む。


 その瞬間。


 私は、もう迷えなかった。


「……分かった」


 震える声で答えた。


「私が行くから」


 エドモンドの笑みが、深くなった。


「いい子だ」


 私は、ゆっくりと歩き始めた。


 ルナが、私の隣へ並ぶ。


 アルベルトが、必死に何かを叫んでいる。


 けれど、その声が遠く感じられた。


 エリーゼを助けたい。


 ただ、それだけだった。


 エドモンドの前へ立つ。


 男は、嬉しそうに私を見下ろした。


「やっと、来てくれたね」


 私は、エリーゼを見つめた。


「……離して」


「もちろん」


 エドモンドは、ゆっくりとエリーゼから腕を離した。


 エリーゼがその場へ崩れ落ちる。


「エリーゼ!」


 私は駆け寄ろうとした。


 けれど、その瞬間。


 エドモンドの手が、私の腕を掴んだ。


「約束は守ったよ」


 その声が、耳元で響いた。


「今度は、君の番だ」


 私は、咄嗟に反射を使おうとした。


 けれど、身体の奥に残っていた力が、思うように動かない。


 何度も使い続けたせいだ。


 透明な膜が、一瞬だけ現れ、すぐに消えた。


「……っ!」


 エドモンドが、楽しそうに笑った。


「もう限界かな?」


 私は必死に腕を引いた。


 けれど、びくともしない。


「離して……!」


 そのとき。


 ルナが飛びかかった。


 白狼の牙が、エドモンドの腕へ向かう。


 けれど、男は空いている手でルナを弾き飛ばした。


「ルナ!」


 白い身体が、石畳へ叩きつけられる。


 その衝撃が、私の身体にも伝わった。


「……っ!」


 膝から力が抜ける。


 ルナは私の分身。


 痛みも、感覚も共有している。


 私は、その場へ崩れ落ちそうになった。


 エドモンドが、私の身体を支える。


「大丈夫。すぐに終わるよ」


 その声が、ひどく近かった。


 私は、恐怖で身体を震わせた。


「……お兄様……」


 小さく名前を呼んだ。


 その瞬間。


 遠くから、激しい風の音が響いた。


 エドモンドが顔を上げる。


 庭園の木々が、一斉に大きく揺れた。


 次の瞬間。


 鋭い風の刃が、エドモンドの腕へ向かって飛んできた。


「……!」


 エドモンドが咄嗟に身を引く。


 私を掴んでいた手が離れた。


 その隙に、誰かが私の身体を抱き寄せた。


「ルシア!」


 聞き慣れた声。


 顔を上げる。


「……セドリックさん……?」


 そこには、セドリックが立っていた。


 その後ろには、黒い礼服を着た青年。


 漆黒の髪。


 深紅の瞳。


 そして、見たことがないほど冷たい表情。


「……お兄様……」


 ゼノンだった。


 足元には、ガルとレオ。


 二匹の黒狼が、低く唸っている。


 ゼノンは、私を見つめた。


 その赤い瞳が、僅かに揺れる。


「……ルシア」


 私は、何も言えなかった。


 ただ、涙が溢れた。


 ゼノンは、ゆっくりと私へ近づいた。


 そして、セドリックから私を受け取るように抱き寄せた。


「遅くなって、ごめんね」


 その声は、驚くほど優しかった。


 私は、ゼノンの服を握り締めた。


「……怖かった……」


「うん」


 ゼノンは、私の頭を胸へ抱き寄せた。


「もう大丈夫」


 その手が、ゆっくりと髪を撫でる。


「僕が来たから」


 私は、声を上げて泣いた。


 ゼノンは何も言わず、ただ抱き締めてくれた。


 その間も。


 彼の赤い瞳は、エドモンドから一度も離れなかった。


     ◇


「また会えたね、ゼノン」


 エドモンドが、楽しそうに微笑んだ。


「今度は、随分と大勢で私を迎えてくれるじゃないか」


 ゼノンは、ルシアを背に庇うように立たせると、ゆっくりとエドモンドへ向き直った。


「前に会ったときから、君が何を企んでいるのかは分かっていた」


 エドモンドの笑みが、僅かに薄れる。


「それなら、どうして一人で来たんだい?」


「君が僕を誘い出したからだろう」


 ゼノンの声は、冷静だった。


「母上の血まで使って」


 エドモンドは、肩をすくめた。


「君があれほど簡単に罠へ入ってくれるとは思わなかったよ」


「僕が罠にかかったと思っているの?」


 ゼノンの周囲の空気が、ゆっくりと沈み始める。


「君の目的は、最初からルシアだった。僕を遠ざけたところで、彼女を守る者がいることくらい分かっていたはずだ」


 エドモンドは、赤い瞳を細めた。


「なるほど。では、私をここへ誘い込んだのは君の方だと?」


「違う」


 ゼノンは一歩前へ出た。


「君が自分から、逃げ場のない場所へ来ただけだ」


 その瞬間、庭園全体の空気が重く沈んだ。


 重圧。


 石畳に細かな亀裂が走り、エドモンドの足元が僅かに沈む。


「……ほう」


 エドモンドが、初めて笑みを消した。


「随分と強くなったね」


「その言葉は、もう聞き飽きた」


 ゼノンの瞳に、冷たい光が宿る。


「僕は、君に認められたいわけじゃない」


 エドモンドの周囲へ、さらに重圧が集中する。


「僕の家族に、二度と触れないで」


 エドモンドは膝をつきかけた。


 けれど、すぐに身体を起こす。


「家族、か」


 その声には、僅かな苛立ちが混じっていた。


「君は、まだそんなものに縋っているんだね」


「縋っているんじゃない」


 ゼノンは、静かに答えた。


「僕が守ると決めたんだ」


 エドモンドの視線が、ゼノンの背後にいる私へ向けられる。


「ルシアを、私から守れると思っているのかい?」


「思っているんじゃない」


 ゼノンの重圧が、さらに強まった。


「守るんだ」


 エドモンドの足元の石畳が、大きく砕けた。


 セドリックが、私とエリーゼを後ろへ下がらせる。


「ルシア、今のうちに離れるぞ」


 私は頷いた。


 けれど、ゼノンの背中から目を離せなかった。


 エドモンドは、重圧に耐えながらゆっくりと顔を上げる。


「なら、試してみようか」


 その赤い瞳が、ゼノンを射抜いた。


「君が本当に、あの子を守れるのか」


 ゼノンは、冷たく目を細めた。


「王家の命令だ」


 その声が、庭園に響く。


「エドモンド・ヴァルディエ。武器を捨て、両手を上げて跪け」


 空気が震えた。


 エドモンドの身体が、命令に引かれるように僅かに揺れる。


 けれど、彼は歯を食いしばり、無理やり立ち続けた。


「……王家の命令まで使うとはね」


「君には、それだけの罪がある」


「私を裁くつもりかい?」


「違う」


 ゼノンの瞳が、冷たく輝く。


「君を止める」


 エドモンドが、ゆっくりと笑った。


「できるものなら、やってみるといい」


 次の瞬間。


 彼の姿が、再び視界から消えた。


 ゼノンの重圧を振り切るように、黒い影が庭園を駆ける。


 狙いは、私だった。


「ルシア!」


 セドリックが叫ぶ。


 私は反射的に手を上げた。


 透明な膜が、私とエドモンドの間に現れる。


 エドモンドの手が膜へ触れた瞬間、強烈な衝撃が跳ね返った。


 男の身体が大きく弾き飛ばされる。


 けれど、エドモンドは空中で体勢を整え、地面へ着地した。


「まだ力は残っているようだね」


 私は荒い息を吐いた。


 ゼノンが、私の前へ立つ。


「もう、ルシアには近づけさせない」


 セドリックが両手を広げる。


 庭園の空気が渦を巻き、エドモンドの周囲を取り囲んだ。


「ゼノン、今だ!」


 風が一気に収束する。


 エドモンドの動きが鈍った。


 その瞬間、ゼノンが手をかざす。


 重圧が、エドモンドの身体を地面へ叩きつけた。


 石畳が大きく陥没する。


「……っ!」


 エドモンドが、初めて苦痛に顔を歪めた。


 ゼノンは、ゆっくりと歩み寄る。


「終わりだよ、エドモンド」


 けれど、エドモンドは地面に伏したまま、笑っていた。


「本当に、そう思うかい?」


 その言葉と同時に。


 屋敷の奥から、甲高い破裂音が響いた。


 窓ガラスが一斉に砕け散る。


 黒い煙が、屋敷の中から噴き出した。


「……何?」


 エリーゼが息を呑む。


 セドリックが、屋敷へ視線を向けた。


「まさか……別働隊か?」


 エドモンドは、ゆっくりと立ち上がった。


「君たちが私を相手にしている間に、もう一つの目的は果たされた」


 ゼノンの表情が変わる。


「何をした」


 エドモンドは、懐から小さな黒い鍵を取り出した。


「地下に眠る、ヴァルディエ家の記録庫を開けたのさ」


 私は息を呑んだ。


「記録庫……?」


「君の両親が残したものだよ、ルシア」


 エドモンドの赤い瞳が、私を見つめる。


「君が知らない、十一年前の真実が眠っている」


 ゼノンの重圧が、再び強まった。


「エドモンド!」


 けれど、男は笑っていた。


「さあ、選びなさい。私を捕らえるか、それとも真実を確かめに行くか」


 屋敷の奥で、さらに大きな爆発音が響いた。


 私は、ゼノンの袖を掴んだ。


「お兄様……」


 ゼノンは、エドモンドと屋敷を交互に見た。


 その瞳に、初めて迷いが浮かぶ。


 エドモンドは、その一瞬を見逃さなかった。


 黒い影が、煙の向こうへ滑り込む。


「待て!」


 ゼノンが叫ぶ。


 けれど、エドモンドの姿は、すでに煙の中へ消えていた。


 残されたのは、砕けた窓と、燃え広がる黒い煙。


 そして。


 屋敷の地下から響く、何かが開く音だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。