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いいよ、お兄様

「……お父さま……」


 小さな声が零れた。


 長い夢の中から現実へ引き戻されるように、ルシアはゆっくりとゼノンの首筋から口を離した。


 頬が濡れている。


 いつから泣いていたのか、自分でも分からなかった。


 目を閉じれば、今でも鮮明に浮かんでくる。


 優しく笑っていた父。


 いつも自分を抱き締めてくれた母。


 山奥に建つ大きな屋敷。


 家族四人で過ごした、何気ない幸せな日々。


 そして、すべてが血に染まったあの日。


「……お母さま……」


 声にした途端、堪えていた涙が溢れ出した。


 父と母は、十一年前に亡くなった。


 頭では理解している。


 けれど、ルシアにとって、その記憶はたった今戻ってきたばかりだった。


 ついさっきまで父も母も生きていて、自分は二人の娘として笑っていたような感覚が残っている。


 母に髪を梳かしてもらったこと。


 父に抱き上げられたこと。


 家族で食卓を囲んだこと。


 どれも、昨日の出来事のように思い出せる。


 それなのに、もう二度と会えない。


「……お兄様……」


 震える声で呼ぶと、ゼノンは何も言わずにルシアを抱き締めた。


 その胸へ顔を埋めた瞬間、張り詰めていたものが完全に崩れた。


「お父さまと……お母さまが……っ」


「うん」


「全部……思い出した……」


「うん。そうだね」


「私……本当に……ルシア・ヴァルディエなんだね……」


「ああ」


 ゼノンの腕に、僅かに力がこもる。


「僕の妹だよ。ずっと、そうだった」


 その言葉が胸に沁みた。


 ずっと「ゼノ兄さん」と呼んできた人。


 幼い頃から自分を可愛がってくれて、会うたびに嬉しそうに笑ってくれた人。


 自分が知らないところでも、ずっと見守ってくれていた人。


 その人は、本当に自分の兄だった。


「……忘れてて、ごめんなさい……」


 ルシアが呟くと、ゼノンはすぐに首を横に振った。


「謝らないで」


「でも……お兄様のことも、お父さまとお母さまのことも……全部……」


「僕が封じたんだよ。ルシアが悪いわけじゃない」


「……っ」


「それに、僕は覚えてた」


 ゼノンはルシアの髪を撫でた。


「ルシアが僕を忘れても、僕は一度も忘れなかったよ」


 その優しい声に、また涙が溢れた。


 ルシアはゼノンの服を握り締め、子供のように声を上げて泣いた。


 ゼノンは急かさなかった。


 無理に泣き止ませようとも、何かを説明しようともせず、ただ昔と同じように髪を撫で続けてくれた。


 どれくらいそうしていただろう。


 ようやく泣き声が小さくなった頃、ルシアはふと顔を上げた。


「……お兄様」


「何?」


「どうして……全部思い出したの?」


 ゼノンは静かにルシアを見つめた。


「僕の血を飲んだからだよ」


「……お兄様の血?」


「うん。ルシアにかけた封印には、二つの仕組みがあったんだ」


「二つ……?」


「一つは、ヴァンパイアとしての身体と力を封じるもの。もう一つは、過去の記憶を封じるものだよ」


 ゼノンはルシアの黒髪を一房すくった。


「身体の封印を解くには、僕がルシアに牙を立てて血を吸い、同時に僕自身の血を君の体内へ送り込む必要があった」


「……だから、さっき……」


「そう。あれでルシアは、本来の純血のヴァンパイアに戻ったんだ」


 ルシアは自分の髪を見つめた。


 昨日まで白金色だった髪。


 今は、ゼノンと同じ漆黒へ戻っている。


「でも、それだけでは記憶は戻らないんだ」


「……え?」


「記憶を完全に取り戻すには、ヴァルディエの血を飲む必要があった」


「じゃあ……私がお兄様の血を飲んだから?」


「うん。封じられていた記憶が呼び覚まされたんだよ」


 ルシアは小さく頷いた。


 けれど、すぐに何かを思い出したように顔を上げた。


「でも……私、お兄様の記憶も見たよ?」


 ゼノンの表情が僅かに変わった。


「……僕の?」


「うん」


 ルシアは胸元で手を握り締めた。


「お父さまとお母さまが亡くなった日のこと……私が知らなかったことまで、見えたの」


「……」


「お兄様が、私を抱き締めて泣いてたことも……」


 ゼノンは何も言わなかった。


「それから……私が全部忘れちゃったあとも、お兄様がずっと私を見守ってくれてたことも……」


 ルシアの瞳に、再び涙が浮かんだ。


「お兄様、ずっと寂しかったんだね……」


「……ルシア」


「私、何も知らなかった」


 声が震える。


「お兄様は全部覚えてたのに……私だけ、何も覚えてなくて……」


 ゼノンは静かにルシアを抱き寄せた。


「それでよかったんだよ」


「でも……」


「ルシアが何も知らずに笑っていられるなら、それでよかった」


 その声は、驚くほど穏やかだった。


「僕が覚えていればいいと思ってたんだ」


「……そんなの、寂しいよ」


「……うん」


「私も……覚えていたかった」


 ゼノンの腕に力がこもる。


「……そうだね」


 しばらくして、ゼノンが静かに口を開いた。


「ヴァルディエの血で記憶の封印が解けたんだけど、ルシアが僕の記憶まで見たのは、僕が当時を思い出してる時に僕の血を飲んだからだと思う」


「……そうなの?」


「ああ。血を通して、僕の中に残っていた記憶まで流れ込んだんだろうね」


 ゼノンは少しだけ困ったように笑った。


「本当は、そこまで見せるつもりはなかったんだけど」


「……どうして?」


「僕の辛かった記憶まで、ルシアに背負わせたくなかったから」


 ルシアは首を横に振った。


「……見られてよかった」


「ルシア?」


「お兄様が、どんな気持ちで私を守ってくれてたのか……分かったから」


 ルシアはゼノンをまっすぐ見つめた。


「もう、お兄様だけに全部背負わせたくない」


 ゼノンの赤い瞳が、僅かに揺れた。


 ルシアは涙を拭い、少しだけ微笑んだ。


「それに……私、後悔してないよ」


「……後悔?」


「封印が解けて、記憶が戻ったこと」


 ゼノンは真剣な顔でルシアを見つめた。


「こんなに辛いことまで思い出したのに?」


「うん」


 思い出さなければ、こんなに悲しくはなかった。


 父と母が殺された光景も、知らないままでいられた。


 あの日の恐怖も、胸を引き裂かれるような喪失感も、感じずに済んだのかもしれない。


 けれど、それと一緒に。


 父の笑顔も。


 母の温もりも。


 家族四人で過ごした幸せな時間も。


 全部、忘れたままだった。


「苦しいけど……やっぱり、お父さまとお母さまのことを忘れたくない」


 ゼノンの瞳が僅かに揺れた。


「二人が私を大切にしてくれてたことも、一緒に暮らしてたことも、全部私の大切な記憶だから」


「……うん」


「思い出せて、よかった」


 そう言ってから、ルシアは唇を噛んだ。


 ただ、一つ。


 どうしても理解できないことがあった。


「でも……あいつは誰なの?」


 ゼノンの表情が変わった。


「エドモンドって人。お父さまとお母さまを殺した……あの人」


「……ああ」


「私を狙ってたよね?」


 思い出すだけで、身体が震える。


 血に濡れた男の手。


 不気味な笑い声。


 そして、自分を迎えに来ると告げた言葉。


「どうして? 私の血が欲しかったの? あの女の人たちは誰? どうして私たちの家を知ってたの?」


「ルシア」


「それに、お父さまとお母さまは、私を守ろうとして……」


 言葉が喉に詰まった。


 恐ろしい考えが浮かんでしまう。


「……私がいたから、二人は……」


「違う」


 ゼノンが強く遮った。


 ルシアはびくりと肩を震わせる。


「でも……!」


「ルシアのせいじゃない」


「だって、あいつは私を迎えに来るって言った!」


 自分でも声が大きくなっていると分かった。


 けれど、止められなかった。


「私が狙われてたから、お母さまも、お父さまも……!」


「ルシア、落ち着いて」


「もし私がいなかったら、二人は死ななかったかもしれない!」


「そんなことはない!」


 ゼノンの声が強くなる。


 けれどルシアには、もう何も聞こえなくなりかけていた。


 母が最後に自分を抱き締めた感触。


 父の姿を二度と見られなかったこと。


 そして、幼い自分を抱き締めて泣いていた兄の顔。


 封印されていた自分自身の記憶と、ゼノンの血を通じて垣間見た兄の記憶。


 二つの悲しみが重なり、胸の奥で激しく渦巻く。


「私が……私さえ……!」


「ルシア!」


 その瞬間だった。


 ――ビシッ。


 何かが軋むような音がした。


 ゼノンが顔を上げる。


「ルシア、力を――!」


 ――バリバリバリッ!!


 凄まじい音とともに、部屋の窓ガラスへ一斉に亀裂が走った。


 次の瞬間、ガラスが砕け散る。


「きゃっ!」


 ゼノンが咄嗟にルシアを抱き寄せ、自分の身体で庇った。


 細かな破片が床へ降り注ぎ、甲高い音を立てる。


 やがて静かになった部屋へ、割れた窓から冷たい風が吹き込んできた。


 ルシアは呆然とした。


「……え?」


 何が起きたのか分からない。


 ただ、目の前にあるはずの窓が、跡形もなく割れていた。


「今の……何……?」


 ゼノンはルシアに怪我がないことを確かめてから、ゆっくりと身体を離した。


「ルシアの力だよ」


「……私?」


「ああ」


「私が……やったの?」


「そうだよ」


 ルシアは割れた窓を見つめた。


「でも、何もしてないよ……?」


「分かってる」


 ゼノンは落ち着いた声で答える。


「純血のヴァンパイアは、普通のヴァンパイアよりも遥かに強い力を持っている。特にヴァルディエの血はね」


 そう言いながら、ルシアの手を取った。


「今のルシアは、十一年間封じられていた力が一度に戻ってきたばかりなんだ。身体も感覚も、まだその力に慣れていない」


「……だから?」


「感情が大きく乱れると、自分の意思とは関係なく力が溢れることがある」


 ルシアは自分の手を見つめた。


 ただ悲しくて。


 怖くて。


 どうしていいか分からなくなっただけだった。


 それだけで、窓が割れてしまった。


「……怖い」


 震える声が零れた。


「私、また何か壊しちゃうかもしれない……」


「大丈夫」


 ゼノンがその手を包み込む。


「これから僕が教えるよ」


「……お兄様も、こうだったの?」


「昔はね。僕だって最初から上手に扱えたわけじゃない」


「本当?」


「本当だよ」


 ゼノンは優しく笑った。


「まずは、自分の感情が大きく動いたことに気づくこと。それから呼吸を整えて、溢れそうな力を内側へ戻すんだ」


「……感情を抑えるの?」


「感情そのものをなくす必要はないよ。怒ってもいいし、泣いてもいい。ただ、その感情に力まで引っ張られないようにするんだ」


 ゼノンの親指が、ルシアの手の甲をゆっくり撫でる。


「少しずつ慣れていこう」


「……うん」


「僕がずっと教えるから」


 その言葉に、ルシアの身体から少しだけ力が抜けた。


 窓を割ってしまったことは怖かった。


 けれど、ゼノンが傍にいるなら、きっと大丈夫だと思えた。


 ゼノンは泣いた跡の残るルシアの頬を撫でた。


「それと……ルシア」


「なに?」


 彼の声が、少しだけ甘くなった。


「もう一度、ルシアの血を飲んでもいい?」


「……私の血?」


「ああ」


 ゼノンの赤い瞳が、ゆっくりとルシアの首筋へ向けられる。


「さっきは封印を解くためだったからね。今度は、何も気にせず飲みたいんだ」


「……何も気にせず?」


「うん」


 ゼノンは笑っていた。


 けれど、その瞳には、今まで見たことのないほど強い欲が滲んでいた。


「ずーっと、こうしたかった」


「ずっと……?」


「十一年間、ずっと我慢してたんだ」


 その言葉を聞いて、ルシアは思い出した。


 以前、夜会でゼノンが知らない女性の血を飲んでいたこと。


 自分が怪我をしたときは、血を舐め取るだけで、決して牙を立てようとはしなかったこと。


 あのときは、少し寂しかった。


 ゼノンは自分のことを大切にしてくれるのに、どうして自分の血だけは欲しがらないのだろう。


 ずっと不思議だった。


「じゃあ……私の血、欲しくなかったわけじゃないの?」


 ゼノンが僅かに目を見開いた。


「……逆だよ」


「逆?」


「君の血だけは、欲しすぎた」


「……え?」


 ゼノンはルシアの頬に触れたまま、静かに続けた。


「ルシアの血の匂いを感じるたびに、どれだけ飲みたいと思ったか分からない」


「でも……今まで一度も……」


「飲めなかったんだ」


 その声には、珍しく苦しそうな響きがあった。


「僕がルシアに牙を立てて血を吸い、僕の血を送り込めば、封印が解けてしまうから」


「……だから?」


「うん。君が本来の姿に戻れば、エドモンドに存在を知られる危険があった」


 ゼノンはルシアの頬に手を添えた。


「もちろん、僕の血を送り込まなければ封印は解けない。でも、一度君の血を飲んでしまったら、もう我慢できなくなるかもしれなかった」


「……お兄様が?」


「そうだよ」


 ゼノンは困ったように笑った。


「ルシアを取り戻したいって、ずっと思ってたからね」


「……」


「だから、最初から牙を立てないと決めてたんだ」


 ルシアの胸が、きゅっと締めつけられた。


「……そんなに我慢してたの?」


「してたよ」


 ゼノンは小さく笑う。


「十一年間、ずっとね」


 ルシアは自分の首筋に手を当てた。


「じゃあ……今は?」


「今は違う」


 ゼノンの指が、その手にそっと重なった。


「封印は解けた。ルシアは本来の純血のヴァンパイアに戻ったんだ」


 彼の瞳が嬉しそうに細められる。


「もう、我慢しなくていい」


「……お兄様」


「ルシア」


 ゼノンは、まるで大切な宝物を扱うように、ルシアの頬を包んだ。


「飲んでもいい?」


 その問いに、ルシアは少しだけ驚いた。


 けれど、怖くはなかった。


 先ほどまで自分は、ゼノンの血を夢中で飲んでいた。


 そしてゼノンも、自分の封印を解くために血を飲んでくれた。


 けれど、それまでの十一年間。


 ゼノンはずっと、自分の血を我慢していたのだ。


 自分を守るために。


「……うん」


 ルシアは小さく頷いた。


「いいよ、お兄様」


 ゼノンの表情が変わった。


 嬉しそうで、安心したようで、それでいて今にも何かが溢れ出しそうな顔だった。


「……ありがとう」


 彼の腕がルシアの腰へ回る。


 そっと身体を引き寄せられ、ルシアは自然とゼノンの肩に手を置いた。


 首筋へ温かな吐息が触れる。


「……ルシア」


「なあに?」


「やっと、手に入れた」


 耳元で囁かれた声は、驚くほど甘かった。


「僕のルシア……」


 次の瞬間。


 ――ぷつり。


 鋭い牙が、ルシアの首筋へ食い込んだ。


「……っ!」


 一瞬だけ、細い痛みが走った。


 けれどすぐに、噛まれた場所からじんわりと熱が広がっていく。


 ゼノンが血を飲み始めた。


 一口。


 また一口。


 長い間、ずっと求めていたものを、ようやく確かめるように。


 ルシアの背中を支える腕に、僅かに力がこもる。


 ゼノンは急がなかった。


 それでも、その仕草からは簡単には離したくないという気持ちが伝わってきた。


「……お兄様……」


 小さく呼ぶと、ゼノンは一度だけ動きを止めた。


 ルシアの背中を優しく撫で、また静かに血を飲む。


 ルシアは目を閉じた。


 不思議だった。


 先ほど封印を解かれたときとは違い、今度は何かを取り戻すためではない。


 ただ、ゼノンが自分の血を欲しがってくれている。


 それが嬉しかった。


 自分の血が嫌いだったわけではない。


 欲しくなかったわけでもない。


 大切だったから、飲まなかったのだ。


 やがてゼノンがゆっくりと牙を抜いた。


 首筋に残った小さな傷へ、そっと唇を寄せる。


「……痛かった?」


 ルシアは首を横に振った。


「ちょっとだけ」


「ごめんね」


「大丈夫」


 ゼノンは嬉しそうに笑った。


「……美味しかった」


「そ、そういうこと言わないでよ……」


「どうして?」


「なんか、恥ずかしい……」


 ルシアが頬を赤くすると、ゼノンはますます楽しそうに笑った。


「僕は嬉しいよ」


「……何が?」


「やっと、何も心配せずにルシアの血を飲めたことかな」


 そう言って、もう一度ルシアを抱き締めた。


「ずっと、この日を待ってた」


 ルシアもそっと腕を回す。


「……私も」


「うん?」


「お兄様が、私の血を嫌いじゃなくてよかった」


 ゼノンは一瞬黙ったあと、困ったように笑った。


「嫌いなわけないでしょ」


 その声があまりにも優しくて、ルシアは胸がいっぱいになった。


 そのときだった。


 廊下の向こうから、激しい足音が聞こえてきた。


 今のルシアには、まだずっと遠くにいるはずの誰かが、こちらへ走ってくることがはっきり分かった。


 ――誰か来る。


 そう思った直後、勢いよく扉が開いた。


「ルシア!!」


 クレイドだった。


 彼は部屋へ飛び込んだ瞬間、足を止めた。


 割れた窓。


 床に散らばるガラス。


 ベッドの上に座るルシア。


 その身体を抱き寄せているゼノン。


 そして、ルシアの首筋に残る小さな噛み痕。


 部屋には、まだ血の香りが残っていた。


 クレイドの表情が一変した。


「……お前」


 ゼノンが顔を上げる。


「クレイド」


「お前……!」


 クレイドは拳を握り締めた。


「ルシアをヴァンパイアに変えやがったな!!」


 そのままゼノンへ掴みかかろうとする。


「待って!」


 ルシアが慌てて二人の間へ入った。


「どけ、ルシア!」


「違うの!」


「何が違うんだよ!」


 クレイドの怒鳴り声に、ルシアは一瞬怯んだ。


 けれど、今度は逃げなかった。


「私、元々ヴァンパイアだったの!」


 クレイドの動きが止まった。


「……は?」


「お兄様が私をヴァンパイアにしたんじゃない。ずっと封じられてたの。血も、力も、記憶も……全部」


「……何、言ってんだよ」


 クレイドは理解できないというようにルシアを見つめる。


「お前は人間だっただろ」


「ううん。人間として暮らしてただけだったの」


「そんなわけ……」


「それにね」


 ルシアはゼノンを振り返った。


 もう迷わなかった。


「ゼノ兄さんは……本当のお兄様だったの!」


 クレイドの顔から、完全に表情が消えた。


「……なんだって?」


「私、全部思い出したの」


 ルシアは自分の黒髪を一房持ち上げた。


「この髪も、目も、本当はこうだったんだよ」


「……ルシア」


「お父さまとお母さまのことも、昔住んでた家のことも……全部」


 クレイドはゼノンを見た。


 それからルシアを見る。


「……嘘だろ」


「嘘じゃないよ」


 ルシアが答えたところで、再び扉が開いた。


「何の騒ぎだ?」


 アルベルトだった。


 部屋へ入ってきた彼は、まず割れた窓を見た。


 それから床に散らばるガラスと、ベッドの上の二人を順番に眺める。


「……派手にやったな」


 ルシアはしゅんと肩を落とした。


「……ごめんなさい」


「怪我は?」


「ない……と思う」


 アルベルトはゼノンを見る。


「お前もか?」


「僕も平気だよ」


「ならいい」


 アルベルトはそう言ってから、改めてルシアを見つめた。


 漆黒へ戻った髪。


 鮮やかな赤い瞳。


 その姿を見た瞬間、彼の表情が僅かに変わった。


「……ルシア」


「アル……」


「思い出したんだな」


 ルシアは小さく頷いた。


「……うん」


「そうか」


 たったそれだけだった。


 けれど、その短い言葉には、言い尽くせないほどの感情が込められているように聞こえた。


 アルベルトは、ルシアがまだ幼かった頃から知っている。


 父と母が生きていた頃も。


 あの事件のあとも。


 そして、何も覚えていない人間の少女として育った十一年間も。


 そのすべてを知っている人だった。


「……アル」


「何だ」


「私、お父さまとお母さまのこと、思い出したよ」


 アルベルトの瞳が揺れた。


「……ああ」


「アルが昔、遊びに来てくれたことも」


「……そうか」


「私、アルに絵を見せたよね」


 アルベルトは一瞬だけ目を見開いた。


 それから、懐かしそうに笑った。


「俺だけ描いてなかったやつか」


「……うん」


「ひどい娘だったな」


「ごめん……」


「今さら謝るな」


 アルベルトはルシアの頭を軽く撫でた。


「思い出したなら、それでいい」


 そのやり取りを聞いていたクレイドが、堪えきれないように口を開いた。


「……アルも知ってたのか?」


「ああ」


「ずっと?」


「ずっとだ」


「じゃあ、俺だけ何も知らなかったってことかよ」


 アルベルトは黙ってクレイドを見た。


「どういうことだよ……」


 クレイドの声には、怒りだけではないものが混じっていた。


 困惑。


 戸惑い。


 そして、どこか傷ついたような響き。


「俺、ずっとルシアと一緒にいたんだぞ……?」


「分かってる」


「だったら、なんで……!」


「クレイド」


 アルベルトは静かに遮った。


「全部説明する」


 そしてクレイドの肩へ手を置いた。


「リビングに来なさい」


「いや、俺は――」


「ルシアは、封じられていた記憶が戻ったばかりだ」


 アルベルトの声が少しだけ厳しくなる。


「今は休ませてやれ」


 クレイドは納得していないようだった。


 けれど、泣き腫らしたルシアの目を見た瞬間、それ以上何も言えなくなった。


「……あとで全部聞くからな」


「……うん」


「本当に大丈夫なんだな?」


「大丈夫だよ」


 ルシアが微笑むと、クレイドは少しだけ眉を寄せた。


「……無理すんなよ」


「うん」


 最後にゼノンを思い切り睨んでから、クレイドはアルベルトと部屋を出ていった。


 扉が閉まる。


 ようやく静かになった部屋で、ゼノンが小さく息を吐いた。


「……怒ってたね」


「うん……」


「まあ、仕方ないか」


 ゼノンはルシアの髪を撫でた。


「クレイドにとっても、突然のことだから」


「……嫌われちゃうかな」


「そんなことないよ」


 ゼノンはすぐに答えた。


「クレイドはルシアが大好きだからね」


「……そうかな」


「そうだよ」


 その言葉に、ルシアは少しだけ安心した。


 ゼノンは割れた窓へ目を向ける。


「とりあえず、ここは片づけてもらおうか」


「……うん」


「今日はもう休もう」


 ゼノンがルシアをベッドへ戻そうとすると、ルシアはその服を掴んだ。


「でも……まだ聞きたいことがいっぱいある」


「分かってる」


「エドモンドのことも、あの女の人たちのことも……」


「明日話そう」


 ゼノンは優しく答えた。


「エドモンドのことも、あの日一緒にいた二人の女のことも、僕が十一年間調べてきたことも。全部話すよ」


「……本当?」


「本当」


「隠さない?」


 ゼノンは少しだけ黙った。


 それから、ルシアの手を握る。


「ルシアが知りたいことは、ちゃんと話す」


「……うん」


「でも今日は、少し休んでほしい」


 ルシアは頷いた。


 身体は思っていた以上に疲れていた。


 記憶が戻ったことも。


 泣いたことも。


 力が暴走したことも。


 すべてが一度に起きたのだから、当然なのかもしれない。


 ゼノンが立ち上がろうとする。


 ルシアは慌ててその服を掴んだ。


「お兄様」


「何?」


「……一緒に寝よ?」


 ゼノンが少し驚いた顔をした。


「僕と?」


「うん」


 ルシアは俯いた。


「昔みたいに……」


 幼い頃。


 怖い夢を見た夜も、寂しくなった夜も、よく兄のベッドへ潜り込んでいた。


 手を繋いでもらうだけで、安心して眠れた。


 その記憶が戻った今、どうしても一人になりたくなかった。


 ゼノンは柔らかく笑った。


「いいよ」


「……ほんと?」


「ああ。今日は一緒に寝よう」


 その答えに、ルシアの顔が少しだけ明るくなった。


 割れた窓は、使用人が応急処置をしてくれることになった。


 寝室を移ることも勧められたが、ルシアは自分の部屋で眠りたいと言った。


 やがて窓が仮に塞がれ、床の破片も片づけられると、二人はベッドへ入った。


 ゼノンの隣へ横になる。


 ルシアは自然と手を探した。


 指と指が重なる。


 昔と同じだった。


「……懐かしい」


「うん」


「お兄様」


「何?」


「今度は、いなくならないでね」


 ゼノンは繋いだ手を強く握った。


「いなくならないよ」


「……絶対?」


「絶対」


「私のこと、もう忘れさせないでね」


 ゼノンの表情が僅かに曇った。


 けれど、すぐに優しく微笑んだ。


「うん。もう二度と、あんな思いはさせない」


 ルシアは安心したように目を閉じた。


「……おやすみなさい、お兄様」


「おやすみ、ルシア」


 ゼノンは眠りにつくまで、ずっとその手を握っていた。


     ◇


 翌朝。


 ルシアが目を覚ますと、隣にゼノンの姿はなかった。


「……お兄様?」


 思わず呼んでから、ゆっくり身体を起こす。


 窓には応急処置の板が貼られ、床のガラスも綺麗に片づけられていた。


 昨夜よりも身体が軽い。


 あれほど苦しかった喉の渇きも、今は落ち着いている。


 ベッドから降り、何気なく鏡の前を通り過ぎようとして、ルシアは足を止めた。


「……あ」


 鏡の中にいる自分。


 昨日まで白金色だった髪は、艶のある漆黒へ変わっていた。


 ゼノンと同じ色。


 記憶の中の父と母とも同じ色。


 ヴァルディエの黒。


 瞳も、人間だった頃とは違う。


 鮮やかな赤だった。


「……本当に、戻ったんだ」


 髪を一房持ち上げる。


 幼い頃の自分と同じだった。


 ずっと忘れていた、本来の姿。


 鏡の中の自分は、どこか知らない少女のようにも見えた。


 けれど同時に、ひどく懐かしかった。


「……お父さま、お母さま」


 小さく呟く。


 二人がこの姿を見たら、何と言うだろう。


 きっと、母は優しく笑ってくれる。


 父は少し大袈裟なくらい喜んでくれるかもしれない。


 そんな想像をした途端、また少しだけ胸が痛んだ。


 それでもルシアは、鏡の中の自分へ微笑んだ。


「……おはよう、ルシア」


 新しい自分に挨拶するように呟いて、着替えを始めた。


     ◇


 リビングへ向かうと、いつもの朝の光景があった。


 アルベルトはコーヒーを飲み、その向かいではゼノンもカップを手にしている。


 クレイドは朝食を食べていた。


「おはよう」


 三人が一斉にこちらを見る。


「おはよう、ルシア」


 ゼノンが嬉しそうに笑った。


「よく眠れた?」


「うん」


「それならよかった」


「おはよう」


 アルベルトもいつも通りだった。


 クレイドだけは、ルシアをじっと見つめていた。


「……何?」


「いや」


「髪?」


「まあ、それもある」


「……変?」


「別に」


 クレイドは少し視線を逸らした。


「似合ってる」


「……ほんと?」


「嘘ついてどうすんだよ」


「えへへ。ありがとう」


「朝からうるせぇ」


 いつものクレイドだ。


 そのやり取りだけで、ルシアは少し安心した。


 昨夜のことがあっても、彼は変わらず自分に話しかけてくれる。


 そのことが嬉しかった。


 ルシアが席へ着くと、ゼノンが口を開いた。


「ルシア。学校のことなんだけど」


「……うん?」


「夜間部へ編入しよう」


「えっ?」


 ルシアは目を丸くした。


「今のルシアはヴァンパイアだからね。昼間部にいるより、夜間部で学んだ方がいい」


「……嫌」


 即答だった。


 ゼノンが眉を寄せる。


「ルシア」


「私、そのまま昼間部に通いたい」


「でも――」


「ミアもいるし、友達もいるもん」


 ルシアは真剣な顔で続けた。


「昨日まで普通に通ってたのに、突然夜間部へ移るなんて嫌だよ」


「今までとは違うんだよ」


「分かってる」


 ルシアは頷いた。


「でも、突然夜間部に移ったら、それこそヴァンパイアだって言ってるようなものでしょ?」


 アルベルトがコーヒーを飲みながら頷く。


「それはそうだな」


「アル」


 ゼノンが少し不満そうに呼ぶ。


「事実だろ」


 アルベルトは平然と答えた。


 ルシアはゼノンを見る。


「お願い。まずは今まで通り通ってみたい」


 ゼノンはしばらく考えていた。


 その表情から、簡単には賛成できないことが伝わってくる。


「……分かった」


「ほんと?」


「ただし、しばらく様子を見るだけだよ」


「うん!」


「それと、条件がある」


「条件?」


 ゼノンは真剣な顔になった。


「ルシアがヴァンパイアに戻ったことは、昼間部の生徒には絶対に知られないこと」


「うん」


「正体が知られたら、その時点で夜間部へ編入」


「分かった」


「知られそうになった場合も同じだよ」


「ええっ?」


「そこは譲らない」


 ルシアが不満そうに頬を膨らませると、クレイドが呆れたように口を開いた。


「そもそも夜間部に移った時点で、ヴァンパイアだってバレるだろ」


「そうなんだよね……」


 ルシアが苦笑する。


「だから、できるだけバレないようにする」


 ゼノンはルシアの黒髪へ視線を向けた。


「まず、その髪はどう説明するつもり?」


「染めたって言う」


「……それで通すの?」


「うん。急に黒くしたくなったって」


 クレイドが口を挟む。


「目はどうすんだよ」


「……あ」


 ルシアが固まった。


 ゼノンは小さく笑う。


「瞳は色付きのレンズを使おう。今までの色に近いものを用意するよ」


「そんなのあるの?」


「あるよ」


「よかった……」


「髪はともかく、目まで変わってたらさすがに怪しまれるからな」


 クレイドの言葉に、ルシアも頷いた。


「ミアには絶対いろいろ聞かれそう……」


「そうだろうね」


 ゼノンが微笑む。


「だから、余計なことは話さないように」


「……はーい」


「それから、力の制御」


 ゼノンは少し表情を引き締めた。


「昨夜みたいにならないために、まずは感情が大きく動いたとき、自分で気づけるようになろう」


「……怒ったりしちゃ駄目?」


「怒ってもいいよ」


 ゼノンは優しく答えた。


「でも、怒りに任せて力まで溢れさせないこと。そうなりそうなときは、一度止まって呼吸を整えるんだ」


「昨日は全然分からなかった」


「最初はそれで普通だよ」


「……できるようになるかな」


「なるよ。僕が教える」


 その言葉に、ルシアは小さく頷いた。


「うん」


 ゼノンはそこで、さらに真剣な表情になった。


「それより問題なのは、血の方だね」


 ルシアも自然と姿勢を正した。


「今は平気?」


「うん。昨日みたいに苦しくない」


「でも、いつまた渇くか分からない」


 ゼノンはルシアをまっすぐ見つめた。


「ルシアは元々ヴァンパイアだけど、十一年間完全に封じられていた。だから身体は今、ヴァンパイアになりたての子と似た状態なんだ」


「なりたて……」


「ああ。血への反応も、どの程度飲めば満たされるのかも、まだ安定していない」


 ルシアは昨日の自分を思い出した。


 ゼノンの腕から血が流れた途端、何も考えられなくなった。


 血が欲しい。


 飲みたい。


 その気持ちだけで頭がいっぱいになった。


「……学校で、ああなったら……」


「だから、そうなる前に僕のところへ来て」


「お兄様のところ?」


「少しでも喉が渇く、身体が熱くなる、誰かの血の匂いが気になる。どれか一つでも感じたら、すぐ来ること」


「授業中でも?」


「授業中でも」


「でも、先生に怒られちゃうかも……」


「僕が説明するよ」


「何て?」


「体調が悪くなったって」


 ゼノンは何でもないことのように答えた。


「無理に我慢して誰かに噛みつく方が問題でしょ?」


「……はい」


「僕が夜間部の校舎にいなければ連絡して。どこにいても迎えに行くから」


「分かった」


「それと、しばらくパックの血は飲まないで」


 今度はクレイドが反応した。


「なんでだ?」


「今は身体が安定していないからね。どんな血にどの程度反応するか分からない」


 ゼノンはルシアを見る。


「まずは僕の血だけにして、状態を確かめたい」


「……毎回、お兄様から飲むの?」


「ああ」


 ゼノンは即答した。


 それどころか、少し嬉しそうだった。


「必要な分は、僕があげるよ」


「……必要な分だけ?」


「うん。ルシアが加減を覚える練習にもなるからね」


 クレイドが疑わしそうにゼノンを見る。


「お前、本当に加減させる気あんのか?」


「もちろん」


「さっきから嬉しそうすぎるんだよ」


 ゼノンは悪びれる様子もなく笑った。


「十一年待ったからね」


「気持ち悪ぃ」


「クレイド!」


 ルシアが思わず声を上げた。


 その瞬間。


 ――カタカタ。


 テーブルの上に置かれたカップが、小さく震え始めた。


「……あ」


 全員の視線がカップへ向く。


 ルシアは慌てて口を閉じた。


 昨夜のことを思い出す。


 窓ガラスが割れた音。


 ゼノンに庇われたこと。


 自分の力が、意思とは関係なく溢れてしまったこと。


 ――落ち着いて。


 ルシアは目を閉じた。


 怒らない。


 慌てない。


 呼吸。


 ゆっくり息を吸って。


 吐く。


 ゼノンが教えてくれた通りに、意識を自分の内側へ向ける。


 胸の奥で何かがざわめいているような、不思議な感覚がした。


 それを、そっと落ち着かせるように。


 何度か呼吸を繰り返す。


 やがて、カップの震えが止まった。


 ルシアは恐る恐る目を開けた。


「……止まった」


 ゼノンが嬉しそうに笑う。


「上手だよ、ルシア」


「……本当?」


「うん。今の感覚を覚えておいて」


「……できた」


 ルシアは自分の手を見つめた。


 昨夜は何も分からないまま、窓を割ってしまった。


 けれど今は、自分の意思で止められた。


 ほんの少しだけ。


 それでも、確かに前へ進めた気がした。


「……私、ちゃんとできるようになるかな」


「もちろん」


 ゼノンは迷わず答えた。


「焦らなくていいよ。僕が全部教えるから」


「……うん!」


 ルシアは笑った。


 まだ始まったばかりだ。


 血への渇きも。


 力の使い方も。


 鋭くなった五感も。


 何もかも、分からないことだらけだった。


 それでも、昨日までとは違う世界を、少しずつ受け入れ始めていた。


 十一年間、人間として過ごしてきた時間が消えるわけではない。


 ミアと笑ったことも。


 学校で過ごした日々も。


 アルベルトの娘として育ったことも。


 クレイドと一緒に暮らしてきたことも。


 全部、自分の人生だ。


 その前にもう一つ。


 ルシア・ヴァルディエとして生きていた六年間があった。


 父と母に愛されて。


 兄に大切にされて。


 家族四人で笑っていた日々。


 忘れていた自分が、そこにいた。


 そして今。


 二つに分かれていた自分が、ようやく一つに戻った。


「……今日から頑張らないとね」


 ルシアが呟くと、ゼノンが頷いた。


「ああ」


「お兄様」


「何?」


「これから、いっぱい教えてね」


 その呼び方を聞いた瞬間、ゼノンの表情が柔らかくなる。


「うん。任せて」


 ルシアは嬉しそうに笑った。


「よろしくね、お兄様」


「こちらこそ」


 ゼノンはルシアの手を取った。


「おかえり、ルシア」


 その言葉に、ルシアは一瞬だけ目を見開いた。


 十一年前。


 あの山奥の屋敷で。


 いつも兄を迎えていたのは、自分の方だった。


『お兄さま、おかえりなさい!』


『ただいま、ルシア』


 あの頃には、もう戻れない。


 父も母もいない。


 あの屋敷で過ごした日々も、今は記憶の中にしかない。


 それでも、目の前には大好きな兄がいる。


 そして、自分を育ててくれたアルベルトも、ずっと一緒に過ごしてきたクレイドもいる。


 失ったものは、確かに大きい。


 けれど、今ここにある幸せまで失ったわけではなかった。


 ルシアはゼノンの手を握り返した。


「……ただいま、お兄様」


 ゼノンは、心から嬉しそうに笑った。


 人間として過ごしてきた日常を続けながら、少しずつ本来の自分へ戻っていく。


 純血のヴァンパイアとして。


 ヴァルディエの娘として。


 そして、大好きな兄の妹として。


 ルシアの新しい日常が、ここから始まろうとしていた。

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