正当防衛...?
「なんかいきなり襲い掛かって来たんだが、外の世界はいつからこんな物騒になったんだ?」
「私に聞かれても知らないわよ。」
俺は急に襲ってきた少女の方を見る。
扉から出た瞬間凄まじい攻撃をされたので”そのまま”撃ち返してしまった。
自身の放った攻撃で自滅しているけど、俺正当防衛だよな...。
心配なので一応声をかけてみようと思い、近づいていみる。
「なぁ、おい?大丈夫か?」
「......。」
どうしよっかな。
と、思いふと大木の方へと視線を向けてみたら死にかけの人がいた。
「おい、あんた生きてるか?」
「ぁ。ぁあ。...んとか。」
「今手持ちがこれしかないんだ、これで治るだろ。」
適当に水をかける。
じゅぅ~っと音をたてながら傷が塞がっていく。
男は苦しみながらも痛みに耐えていた。
音が鳴りやむと、男は咳き込み大きな血塊を吐き出した。
「喋れるか?」
「はぁ、はぁ、なんとか。」
「急に襲われたし、なんかここら辺散らかってるし、お前は死にそうだし、何があったんだ?」
「助けてくれてありがとう。何者か知らんが天使がやってくる。すぐに逃げるんだ...って、え?」
少女の方に目を向けてそのまま固まってしまった。
「あぁこいつは、なんか自滅した。まだ生きてるっぽいがシャベル余裕はなさそうだ。」
「そうですか...。ここはオクタ村。今日は何事もない平和な一日になるはずでした。」
そう言って、何が起きたのか話してくれた。
まとめると、
・トレッド地方の離れにある小さな村
・国からの報告によると襲撃の日は来週
・村長の魔法により村の半分以上は避難
・残ったもので天使と言われる敵対者の対処
・想定外の強さの天使が来た
らしい。
「それで、貴方は?」
「俺は、グレイス。ここら辺に昔から住んでいる者だ。」
「この村に住んできたが村以外で人が住んでるなんて聞いたことが無いぞ。」
「まぁまぁ、俺はここから西の国へ行きたいのだがどうやって行くのが良いと思う?」
「西?やめときな。自殺行為だ。
西側諸国は今戦争中だ。もう20年近く続いている。」
「だが、どうしても行きたいんだ。まぁ俺は強いしなんとかなる。」
「だけどなぁ...っ!」
腹部に何かが突き刺さる感覚がした。
視線を落としてみると鋭い剣が突き刺さっていた。
そのまま後ろを見てみると、切り落とされていた半身が綺麗に繋ぎ合わされていて口から血を垂れ流している少女がいた。
「おい、あんたっ!」
「へへっ!私にとどめを刺さないのが敗因だ。
直に私の部下がやってくる。この村だけじゃなく土地もろとも破壊してくれるわ。」
俺は突き刺さった剣を握りしめ破壊した。
バキンッ!と音をたてて粉々に砕け散る剣を驚いた様子で少女と男は見ていた。
身体に残った残りの部分はドロドロに溶けていった。
振り向いて少女をじっと見つめる。
何を感じたのか少女は数歩後ずさった。
遠くから無数の少女達が飛んでくるのが見えた。
さっき助けた男は恐怖で顔を歪ませていた。
少女は勝ち誇った表情をしていた。
「我が名はルヒエル、《風を司る者》
我が命に従いこの地を殲滅する!」
「俺も名乗った方がいいか?
俺はグレイス。昔は《選択する者》とか呼ばれてたな。」
「天使達よ、切り裂く刃となり風を統べよ!」
一斉に武器を持った天使達が俺目掛けて突っ込んでくる。
凄い速さだ。
俺はゆっくりと手を伸ばし指さす。
「選択しろ、生か死か。」
飛んでいた天使達は羽をもがれた虫のように急に地面に転落していった。
その光景をルヒエルとか言ってたやつが絶句して口をパクパクさせていた。
俺は歩き、威圧する。
「生か死か。」
「風は止まないわ!行くのよ!」
「生か死か!」
少し大きな声を出す。
ルヒエル含め後ろの天使達は気が狂ったのか泣き叫んだり、嗚咽したり、失神したりと様々だった。
「お前が選べ、代表だ。
生か死か?」
いつの間にか腰が抜けて座り込んでた。
涙でぐちゃぐちゃになり焦点の合わない視線を向けてきた。
「選べ。
3。2。1...。」
「生!」
「生を望むか。」
「ば、びゃい!」
「だってさ、頼んだよ?」
「はいはーい、めんどくさいなぁ。
でも久しぶりの養分だし、いただきます!」
俺の手から紫と黒の二色が混じったヴェールが広がる。
ヴェールで包み込まれた天使達は包まれていった。
最終的に小さな小袋ぐらいのサイズとなり、それをつまむ。
ペンダントから手が伸びてきたので、その手にそれを預ける。
「ごちそうさま。」
「栄養も少しはついたかな?」
「えぇ、ほんの少しね。」
再び男の前に行ってみたが、すでに男はいなかった。
魔法が使われた残滓のようなものを感じ取ったので、恐らく村長とかいう者の仕業だろう。
「西に行くな...か。行くなって言われたら行くしかないよな。」
「悪い癖ね、まぁ行きましょう。」
「お前に言われたくないなぁ。」




