優雅なひと時
椅子から立ち上がり、埃を被った本棚から一冊の本を取る。
題名は『美味しい嗜好品集』。
その本を手に取り再び椅子に座る。
綺麗で純白な服を着た女性がコーヒーを入れる。
「なんだか外が騒がしいなぁ、そう思わない?」
「ん?気のせいだろ、コーヒー俺にも淹れてくれないか?」
「しょうがないわね。」
香ばしい匂いが鼻に抜ける。
熱々のコーヒーを一口飲み、本を読み始める。
数ページ読み進め、あるページに書かれた物を見せる。
「なぁ、これ美味しそうじゃないか?」
「なになに?わぁ!ほんとね。食べてみたいわねぇ。」
「この食べ物の起源は確か西の土地じゃなかったっけ?」
「たしかそのはずよ、久しぶりに散策でもしましょ!」
「それもありだね、前外に出たときはいつだったかな...。」
「そうと決まれば準備しなきゃね?」
と言うと、女性は熱々のコーヒーを一気に飲み干す。
何事もなかったかのように、荷物を詰め込み始めた。
「持ってく物は最小限にしろよ?
確か、昔いらないものだらけで碌に役に立たなかっただろ?
あの時...。」
「はいはい、分かってますよ。」
男も一気にコーヒーを飲みほした。
男は立ち上がり椅子に掛けてあったローブを羽織り、小物を腰に付けた。
「そろそろ行くぞ?」
「しょうがないなぁ。」
女性は男に近寄った。
「いつも通り。」
「旅のご加護を。」
男の首に付けてあった宝石のついたペンダントが光り、女性が消えた。
「では、出発するとしようか。
結界はそのままにしておこう、また帰って来た時に腐敗していたら困るからな。
昔しばらく家を空けて帰って来た時に家具が腐敗してたのは最悪だった...。」
「まぁた、思い出にふけっちゃって。さっさと行くよ!」
「ほいほい。」
男は家を出てある程度歩いたところで何もないとこに手を向ける。
すると、そこに最初からあったかのように透明な壁が出現する。
その壁を押し込み空間に扉のような跡が出来上がる。
強烈な風が外から押し寄せてきた。
「なんだ?外は風が強いのか?ならしっかりフードまで被らないとな。」
男が扉を開け中に入るとひとりでにその扉は閉じた。




