俺の望み
なるべくエディから離れたところに来た。
「それで、お話とは?」
「うん、すっかり忘れていたんだけどもうすぐ千年祭じゃないか?」
「あぁ~、確か後10年ほどで迎えますな。」
「でしょ?
今回の千年祭は気を付けた方がいいよってのを伝えたかったんだ。」
「と、言うと...?」
「そろそろ俺の問題もなんとかしたいのさ。
この身体になってからもうすぐで四千年が経つ。
今までやってなかったことに挑戦してみたいんだ。」
「ほう、それは良いことですな。」
「良いことかさておき、それに伴って俺は独断で行う。
エディにはいずれ話すつもりなのだが、もしもの時にはエディの左腕のハデス、お前が何とかしてやってくれないか?」
「グレイス様...、一体何をなさるつもりですか?」
この瞬間から、ハデスに謎の警戒心を感じた。
俺何を言おうとしているのか大体察しでもついているのだろうか。
「今まで生きていて、国も建てたし、文明も発達させた、制度も作り、仲間のための居心地の良い場所も作った。
この世界で歴史上成しえたことのない条約や多種族との共存も手助けしてきた。
でもな、全部俺自身のためにやったんだ。
周りからは働き者だとか、命を懸けた馬鹿者だとか、俺はただ俺の問題を解決させるためにやった一つの手段に過ぎないってのにな。」
「グレイス様の身に何があったのかは詳しくはありませんが多少の事なら存じ上げております。
もう少し周りを頼ってみてもよいのではないでしょうか?
このハデスも、エディ様も貴方様のためなら悩みや願い、共に手を取り合えますぞ。」
「良いんだ、そう言ってくれるだけでも嬉しいが、それは昔とっくにやったんだ。
数えきれないほど繰り返した。
繰り返すたびに結果は変わったが、終着点は変わらず。」
「.........。」
「俺は最後の手段を取るんだ。
最期までやる決断をするのに悩んだ。
悩み悩み、最善の手を全て尽くした俺にはコレが残った。
ハデスさん、聞いてくれるか?」
「貴方の覚悟は無駄にはしたくありませぬが、聞いたうえで判断させていただきます。」
「ハデスさんらしい、良い考えだなぁ。」
まだ、明るい木々の隙間から見える眩しい太陽の光を手で遮った。
これまでにしたことがない、最後の手段。
とっておきの笑みで言い放ってやった。
「俺はこれから俺自身を殺すべく、世界を敵に回します。」
「.........。」
「止めようとしても無駄です。
このまま、手当たり次第に殺しまわってもいいのですが、私も生き物、人間であります。
慈悲は与えてもいいのではないか、と考えました。
俺が作り上げた、仲間と手を取り合って作り上げた”力”を存分に使って俺を殺してくださいって、頼みに行きます。
反対されたり、軽蔑されたりするかも...いや、するでしょうね。
千年祭の祭りが始まる時刻、ぴったりに宣戦布告、殺害を始めます。
俺は自分で言うのもなんだけど”強い”。
この身体になってから敵一人いません。
束でなら俺に、傷をつけることができるかもしれない。
俺の頼みは、俺を殺すべく、全力を千年祭に向けて蓄え、鍛え、準備してください。」
言い放って、ハデスさんの顔を見た。
かわいそう、悲しい、困惑、マイナスなイメージが次々と溢れてくるような目をしていた。
「...わかりました。
それがグレイス様の御望みなのですね。
冥界の管理者である私にこれを伝えたということは、神界にも情報が行きますが...。」
「いっぱい流してくれ。
そして、全種族、全勢力、ありとあらゆうる力を使って千年祭に向け準備してくれないか?」
「承りました。
悲しいですが、グレイス様の覚悟はもっと辛いでしょう。
エディ様含め、こちらのことは私にお任せくださいませ。」
「ありがとう、ハデスさん。
久しぶりに天使と会った昨晩、これならって思ったんだ。
そっちは頼んだよ。」
言いたいことを言い終え、エディの元へと向かう。
すると、エディは先ほどの女の子と仲良くなっていた。
何がどうなってああなったのか疑問だらけだが、横にいたハデスさんも戸惑っていたのでまぁいいか。
「エディ、話終わったぞ。」
「ミニュー、こっちは...ん?やっと終わったのね。」
立ち上がって手を振ってきた。
「エディ、まだ腹に剣が刺さってるぞ?」
呑気ににしてて忘れていたが、一応刺されたのだ。
「それを言うならグレイス、貴方だって剣が刺さってるじゃない?」
「あ。」
俺も俺だな。
腹に違和感がないからとっくに抜いたものだと思っていた。
何のためらいもなく刺さった剣を引っこ抜き、そこら辺に投げ捨てた。
その光景を見ていた女の子は再び気絶してしまった。
「あぁ...、せっかくお話していたのに。
こちらの子ミニューというのですわ。」
「お二人方、このような場所で立ち話もなんですから、場所を変えましょうぞ。」
流石、ハデスさん。
気が利くなぁ。
「あ、そうだ、俺らメギア地方のヒロンド魔国に行こうとしてたんだった。」
「む?ヒロンド魔国...。
あぁ、ヒーロンド魔国でしょうか?」
「グレイス、貴方記憶力悪いんじゃないのぉ...?」
「いえ、エディ様。
昔はヒロンド魔国でしたが今は勢力が変わり、ヒーロンド魔国へと名が変わったのです。」
「ふーん。」
「ヒーロンド魔国でしたなら、ここから東に進み山を越え、北へ歩き、西に進まないとたどり着けませぬ。」
「なんか、遠回りしてなーい?」
「メギア地方にはロンバーギ山脈があります。
あそこは我々でもちと厳しい土地でして、魔国に生きたのならば迂回した方が賢明かと。」
「ロンバーギ山脈と言えば、ドラゴンが常に飛び回っていて、それはそれは強大な魔物がうろついてるとか、聞いたことがあるな。」
「はい、おっしゃる通りです。」
「しょうがないわねぇ、私ドラゴンだけは嫌いなのよ。
グレイスおんぶして~。」
「やだよ、それにロンバーギはとても寒いはずだ。」
「寒いのやだー。」
「じゃぁペンダントの中入ってろ。」
「そうするわぁ。」
「ミニューは、私が運びましょう。」
よいしょと、ハデスさんはミニューを持ち上げた。
「あれ?ハデスさんも一緒に来るの?」
「はい、エディ様が門を閉じられてしまったので、魔国にあるゲートを使って帰ろうかと。」
その間にエディはしゅるりとペンダントの中に閉じこもってしまった。
「着いたら教えてねぇ~、それまで起きないからぁ。
ふわぁああぁ。」
寝たぞ。
「大変な主人を持つと大変ですね、ははは。」
「慣れましたぞ、ははは。」
ハデスさんを先頭にまずはロンバーギ山脈付近にある検問所を目指し、再び歩き始めた。




