森の中、女の子に出会った
しばらく森の中を道なりに進んでいたが、突然道が消えどうしようかと思っていた頃、遠くの方で悲鳴が聞こえたような気がした。
エディの方を見てみると、そこら辺の木にいた虫を見つめていた。
「今の聞こえたか?」
「ん?もう着いたのぉ~?」
「いや、それより聞こえたか、聞こえてないかだ。」
「聞こえたとして、貴方は行くの?」
「む。」
確かに、聞こえたからなんだというのだ。
いちいち様子を見てたりしたら、目的地にたどり着くまでに途方もない時間を要するかもしれない。
「それもそうだな、ここから道なき道を進んでいくから、はぐれるなよ?」
「道なき道って...道あるじゃないの...?ん?」
エディはちょっとばかし、バカだ。
そういうものは受け流してくれるとありがたいんだがな、はは。
先ほどは何も聞こえなっかった、よし。
気にせず進み始めた瞬間、向こうの方から問題が走ってきた。
「けて!たすけて!!!」
相当焦っているのか、大きな足音をたてながら地面を蹴り上げる一人の女の子が走ってきた。
俺達を見つけたのか、目には希望が灯ったかのように見えた。
エディを見て、額に手を当てて困った顔をしてみた。
エディも俺と同じく、面倒ごとに巻き込まれたのを自覚したのか、諦めた表情をしていた。
「きゃぁ!」
女の子は俺達の前で大きな木の根につまづき盛大にころんだ。
そのままピクリともせず、無視するのもなんだか気が悪いので一応声をかけてみた。
「あ、あのぉ。大丈夫...?」
「はい!」
「うぉっ、びっくりした。」
何事もなかったかのようにその場に飛び起きあがり、土埃を払っていた。
「た、助けてください!魔物に襲われていて!」
と、言われたが近くに魔物の気配はしないしそれどころか、ここらあたり生き物の気配すらしない。
「かかったな!」
突然女の子は叫ぶと俺の腹にどこからか取り出した剣を突き刺した。
それはもう、綺麗に真っすぐ突き刺さった。
俺があっけにとられていると、女の子はその場で喜びガッツポーズをし始めた。
「やった!おじいの言う通り私には演技の才があるのね!早く返って報告しないと!」
と言ってそのまま来た道を引き返そうとするので、ちょっと力を込めて女の子の方を掴んでやった。
「おい、これがここの地方の挨拶か...?随分なものだな。
俺も”挨拶”しないとなぁ”?」
顔を引きつらせながらも出来るだけ笑顔で接してみた。
女の子は青ざめ、気が動転したのかわなわなと体を震え始めた。
「ど、どうして!生きてるの~!確かに刺したのに。
はっ!こっちの女子もやらなきゃいけないってこと~!?」
エディの方を向き俺と同じように剣を突き刺した。
見事に剣はエディの腹に突き刺さった。
「やった!目撃者消滅だ!これは褒められちゃうなぁ~。」
まずいなぁ、俺の怒りがひっこむほどの殺意が隣から漂って来たぞ...。
ちらりと横を見てみると、外面は表情一つ変えずにいるが内面沸きだつような明確な殺意を感じる。
「ねぇ、あなたこれはどういうことかしら...?」
「ひぃっ!こっちも生きてるのかぁ!?
こいつら化け物じゃないか~!
戦略的撤退を遂行します!
では!」
すごい勢いでその場を離れようとするがエディがぶちぎれた。
「この、クソアマ、どうしてくれようかしらねぇ”?」
と言いながら背後で門が開く音がした。
いやな予感がしたので後ろを見てみると、昨晩とは違った門が開門していた。
その光景を見て女の子は涙を流しながら絶望していた。
とことこと老父がこちらに歩いてくる。
ハデスだ。
困ったような顔で俺の方に向かってきた。
俺はそろーっとエディから離れハデスの方に行く。
「グレイス様、これはなんの騒ぎですかな?」
「ハデスさん、えーっとですね...。」
情報共有ということで一応何が起こったかは説明してみた。
「ふむふむ、それでエディ様はあのように。」
「アレ、どうしましょうかねぇ。」
空間が歪むほどの歪なオーラを放ちまくっているエディを指さす。
「私の見立てですと、あそこまでお怒りになられているエディ様が暴れた際、この大陸は海の底どころか海すら蒸発するでしょうなぁ。」
冗談じゃない、やばすぎる。
「グレイス様は冥界に避難すればなんとかなると思いますが、如何いたしましょうか?」
「アレをなんとか落ち着かせる方向で。」
「骨が折れるどころか、全身複雑骨折して呼吸困難になってしまいますなぁ。」
「複雑骨折って、またアイツからそんな言葉覚えたのか...。
なんとかなるんだな?俺も協力しよう。」
「その場合ですと頭蓋骨を粉々にする程度でなんとかなりますな。」
ぁ、あぁ。
「では、原因となる子供を私が保護いたしましょう。
グレイス様はこちらをエディ様に。」
そう言って渡されたのは、昔エディと一緒にとある城下町を散策していた時に食べた保存のきく食べ物だ。
名は確か、ジャーキーとか言ったか。
ハデスさんからジャーキーを受け取りエディにこっそり近づく。
息が詰まるような、灼熱の根源地に近づく。
エディの首からギギギとでも音が聞こえてきそうな感じでゆっくりとこちらを凝視してきた。
こわっ!
あぶね、口に出すとこだった。
なんとか、心の中で抑えてエディにジャーキーを差し出す。
その瞬間正気を取り戻したのか、張り詰められていた地獄のような空気が緩和された。
「そ、それは!ジャーキー!ちょっと、グレイス!どこに隠し持ってたのよぉ~。」
それはそれはとても可愛らしい笑みで美味しそうにジャーキーにかぶりついている。
ハデスさんの方を見ると親指を立てていた。
無事にあの女の子を確保できたようだ。
「エディ、ひとまず落ち着いてくれ。」
「もう、落ち着いたわ。許しはしないけど、まぁいいわ。」
食べ物ってすげーなぁ。
「あら、ハデス、どうしてここにいるの?」
「どうしても何も、エディ様がお呼びになられたのですよ、あの門と共に。」
背後でおびただしい気配を放っている門を指さした。
「あら、やだぁ。
恥ずかしいわぁ~、もういいわ帰って頂戴。」
そう言って、そそくさと帰ろうとするハデスさんを俺は引き留めた。
「ハデスさん、少しよろしいでしょうか?」
「?もちろんですとも。」
「エディ、ちょっとハデスさんとお話するから、その女の子とお話しててくれ。」
「早くしてね~、門はもう閉じちゃうわぁ。」
ゴゴゴゴゴと音をたてて巨大な門は閉門し、姿を消した。
「仲良くしろよ、くれぐれも殺さないように。」
「ほわぁーい。」
大きな欠伸をしながらけだるそうにジャーキーをしっかりと握りしめて女の子の方に向かっていった。
「では、ハデスさんこちらへ。」
「承知致しました。」




