門
発した言葉で疑惑の視線が明確な殺意の視線に変わった。
「そこの団長は本当に何も知らない。
仲間も殺され、戦意も失った団長に慈悲というか、かわいそうだなって思って出てきたんだ。」
「今まで一体どこに...、いや、そのローブの下の顔を見せてもらおう!【知る者】」
「残念、効かないよ?」
「なっ!我が祝福が弾かれただと!?」
「ルヒエルという天使のことについてなんだけどさ、彼女は生を望んだんだ。」
「...?」
「そのままだよ、生か死を選択して、生を選んだ。
仲間の下に返してあげようか?」
「貴様!ルヒエルに何をした!」
「待て、カマエル、落ち着け。」
流石にミカエルという天使は立場を分かっているようだ。
隣で震えているレミエルとかいう天使も同様だ。
いや、あれは俺じゃなくアイツに恐怖しているのか。
「でもミカエル様!」
「うるさい!黙ってろ!!」
ものすごい怒号でカマエルは萎縮してしまった。
「まぁまぁ落ち着いて、コーヒーでも飲むかい?」
俺は小袋の中から瓶を取り出しどこからか取り出したカップに注ぐ。
熱々の淹れたてで香ばしい匂いが充満する。
そのコーヒーを一気に飲み干し、カップを投げ捨てる。
「すまないね、俺が怖いかい?」
左にいた怯えている天使を見つめる。
底見えぬ恐怖を与えた。
俺に見つめられていた天使は、突如泡を吹き出し、地に墜落した。
そのままもがき続けたが、すぐに動かなくなり身体が変色し腐敗していった。
「なっ!」
「おっと、すまないね。
あまり見つめられることが無くてね、つい見つめ返しちゃった。」
冗談交じりに軽くいってみたが余計、化け物を見るような目で見られた気がする。
右前方から複数の天使が急に襲い掛かってきた。
「おい!動くな!」
ミカエルの制止も聞かず、剣を突き立て俺の身体を何本もの剣が突き刺さる。
無表情の天使はどこか笑っていたかのように見えた。
刺さったまま、身体をねじ込み、2天使の手を掴む。
「痛いよ?」
空いた手をそのまま天使達の腹に刺しこみ鈍い音と何かが危機千切れるような音が聞こえた。
天使を見ると先ほどと打って変わって、青ざめた表情をしている様に見えた。
「食べちゃっていいかしら?」
ペンダントから声が聞こえてくる。
「あれ?いつ帰って来たんだい?」
「ついさっきよ、せっかく買おうと思ってた肉串の店主がいなくなっちゃったんだもん。」
「そっか、じゃあ”これ”食べていいよ。」
「いただきま~す。」
ペンダントからうす紫色の手が伸び、天使達の髪の毛を掴む。
そのまま引きずり込まれるようにペンダントに吸収されていった。
「なんなのだ、アレは...。」
「ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ..........!」
「レミエル...?」
レミエルは白目を向き空に向かってぶつぶつと喋るようになってしまった。
せっかくの美貌が台無しだな。
「おっとすまんな、いい加減ルヒエルを返してあげないとな。」
「出しちゃうの?また、お腹空いちゃうわ~。」
「良いごはんがいるから大丈夫だよ。」
「それもそうね~、じゃぁそこら辺に出しちゃうわね?」
ペンダントから眩い光が溢れ出す。
光が収まると同時に俺の横に女性が立っていた。
「な...、我々は何を見ているのだ...!?
な、なぜあの御方が...!」
天使達が片膝をつき、面を下げる。
「薄暗い空ねぇ~、グレイス~。」
「そうだな、ヘカテ。」
「もう~、堅苦しい方で呼ばないで頂戴?」
「あぁ、エディ。」
「うーん!貴方に名前を呼んで貰えると嬉しいわ!」
ちらっと天使の方を見てみた。
ありえない量の汗と、今まで以上の緊張を感じ取る。
「エディ、自己紹介をしてやってくれ。
俺から言ってもどうせ信じないだろうしな。」
エディは一歩前に出て、手を挙げた。
優しい目からゴミを見るかのような目に変わる。
「グレイスにたてつく愚かな者よ、我が名はヘカテ・エノディア。原初にして冥界を統べる女神よ。」
エディから放たれる異様な圧に名を冠する天使以外は皆、気絶してしまった。
「そこの、レミエルという天使よ、こっちに来なさい。」
「ぁぁぁあああぁぁぁ...。」
顔面ぐっしゃぐしゃでおぼつかない足取りでこちらに歩いてきた。
「誰の許可を得て、蘇らせた?」
「ぁぁぁぁぁ。」
「万死に値する。」
エディが手を横に振ると、空中に巨大な門が出現した。
その門からは幾千の雷が降り注いでいた。
「ハデス?仕事よ。」
門がゆっくりと開かれ、中からその門の大きさには見合わない老父があるいて生きた。
「お久しぶりでございます、500年ぶりでしょうか。」
「挨拶は良いから、そこの天使を懲役1万の刑に。」
「かしこまりました。」
ハデスはレミエルに向け手をかざすと魂を掴み門の中へと帰ってしまった。
「グレイス?何だったかしらルヒ...?」
「ルヒエルだ。」
「あぁそれね。」
空中で円を描くように手を回すと門から大きな白い塊が転がってきた。
それをミカエル達の前に置いた。
「【閉門】」
一瞬にして巨大な門は消え去り、重々しい空気が若干緩和された気がした。
おそるおそるミカエルが口を開く。
「...こ、これは...?」
「ルヒエルとかいう天使よ。
生を謳歌しているでしょう?」
白い塊をよくよく見てみると、表面には顔らしきものが何個も形成され、笑っている表情もあれば泣いてたり、絶望していたりと様々だった。
「ほら、それがルヒエル。」
エディが指をさすところを見てみると、一際大きな顔があった。
その表情は絶望と安堵が混在していた。
「グレイス~、お腹空いちゃったぁ。」
「そうだね、じゃぁそっちのどっちかを食べさせてもらおうね?」
俺はミカエルとカマエルの両者を指さした。
「さて、ルヒエルは返却したし、今度はこっちがお願いするね?
俺は《選択する者》、ミカエル、カマエル、どちらが命を差し出す?」




