148話 「眉山」
動きを止めていたカルラさん、遂にリングインすると…… 1+1=200 を極めるバカ王女に突進していきます! そして身体を投げ出すようにして激突! その衝撃に……1+1=200 は解除されました。これで、ようやくルカさんは激痛から解放されます。
さあ、解放されたルカさん、ここまで極められ続けた足の痛みに……転がるようにリング外へ、マットに落下しながら場外へと逃れました。セコンドの皆さんが、ルカさんの足の状態を確かめていますね。大丈夫でしょうか?
「おやおや、随分と無粋な横槍ですこと。ですが……あちらの場外へ逃げ出した娘と、貴方はただならぬ仲なのでしょう? もし、よろしければ……貴方も脅威の胸囲集団……ゴールデンパッドズに加えてさしあげても……よろしくてよ?」
カルラさんを前にした王女、そう言うと……自身の胸パッドを取り出し、カルラさんに差し出しています。これは、イクセントラさんと同様……ゴールデンパッドズへの勧誘のようですね。
〈なんだ、バカ王女のヤツ……結局アイツもまな板じゃねえか!〉
〈リング上見てみろよ、イクセントラ、王女、カルラ……全員がまな板だぜ!〉
〈ゴールデンパッドズとか名乗ってやがるが、実際はまな板同盟じゃねえか!〉
「貴方も豊満な谷間には興味……おありでしょう? ワタクシがその高みへと導いて差し上げますわ」
更に勧誘を強めるバカ王女。カルラさんは俯いて、それを聞いています。きっと迷っているのでしょう。
カルラさんの思考時間は……おそらく数十秒でしょうか。ですが、長くの時間が経過したように感じられますね。選手達だけでなく、お客さん達も……カルラさんの決断を息を飲んで見守っていました。
そして、カルラさん……ゆっくりと胸パッドに腕を伸ばしました。
〈おいおい、頼むからやめてくれー!〉
王女の手のひらの上の胸パッドを掴むカルラさん。それを握りしめると…………
「こんな紛い物……ボクはいらないのです!」
そう言うと、胸パッドを場外へと投げ捨てました!
〈よくやったぞ、カルラ!〉
〈俺は信じてたぞ!〉
「ボクは……最強を目指してスカイハイに入団したのです! でも、デビュー戦でルカに負けた借り……まだ返せてないのですよ! それなのに、ゴールデンパッドズなんかに加入したら……ボクは負け犬になってしまうのです! いずれ出来る……最強の証のベルトをルカより先に巻くまでは、ボクがスカイハイを辞めるなんて……ありえないのですよ!」
〈うおおおおおおおお!〉
「それに、お客さん達にはいつも……ボクはまな板って呼ばれてましたけど、ボクは王女と違って……人情まで薄くはないのです! 偽物の胸に、偽物の最強なんて……ボクには必要ないのですよ!」
そういうとカルラさん、ロープに駆け……反動をつけて戻って来ると…………
「これで、やっと……その平たい胸にドロップキックを当てられるのです!」
ドカーーーーーン!
〈うおおおおおおおおおお!〉
遂に……胸パッドによるガードを失った、バカ王女の平らな胸に目掛けて……カルラさんの美しい一回転式のドロップキックが直撃しました! 大きく吹っ飛ぶ王女。その様子にスカイハイファンの皆さん達からは大歓声が巻き起こっています。
ドロップキックを喰らった王女はダウンしています。その隙を見てか、カルラさん……イクセントラさんに話しかけていますね。
「イクセントラさん……そんな王女の人望みたいに薄い胸パッドより、自前のヌーブラの方が……人望も胸も、どちらも分厚かったのですよ。目を覚ますのです!」
カルラさんの熱弁を聞くと……イクセントラさん、何やら考え込んでしまいました。そして、リングを降りると……花道奥へと姿を消してしまうのでした。
こうしてレフェリー不在のリング上、王女とカルラさんだけが残されました。王女はダウンから立ち上がりましたが、その立ち上がりをカルラさん、ローリングソバットで……またしても胸部を蹴り飛ばします。
〈なんだ、お前なんて、パッドなしじゃ雑魚じゃないか!〉
さあ、カルラさん攻め手を緩めません。ダウンしたバカ王女の髪を掴んで立たせると、その背後を取りました。両腕をバカ王女の腰に回してロックします。これは……ジャーマン・スープレックスを狙っているのでしょうか? ここでルカさんの得意技を出そうとするのは、何か意味を感じますね。うん、カルラさん……一皮剥けたような気がします!
「貴方のような、か弱く小柄な娘が反り投げですって!? そのような無礼、わたくしが許すはずもなくてよ!」
しかしバカ王女、腰を深く落として耐えています。流石にここまで抵抗されては、カルラさんの体格では投げきれそうもありません。二人は、その姿勢のまま……膠着状態になってしまっていますね。
その時です、エプロンから……ルカさんがリングに上がってきました。ようやく足の痛みを落ち着いたのでしょうか。リングインすると、背後からカルラさんに近づいていきます。
「レフェリーがいないのに、ジャーマン・スープレックスをしても……意味ないわよ」
「あ……そう言えば、そうだったのです」
「まあ、その心意気だけは認めて上げるわ。ほら、しっかりバカ王女をホールドしてなさいよ」
ルカさん、カルラさんと会話を交わすと……カルラさんの背後に組み付きました。これは……バカ王女の背後を取るカルラさんの背後を取るルカさん。そんな体勢です。
「みんなーーー、眉山……行くよーーー!」
そしてルカさん、何やらお客さん達に、新技名をアピールすると……バカ王女を抱えこんだままのカルラさん諸共、ジャーマン・スープレックスの要領で背後に放り投げました!
ドカーーーーーン!
〈うおおおおおおおおおおおおおおおお!〉
言わば、二段階式の投げっぱなしジャーマンとでも申しましょうか。ルカさんはカルラさんごと、王女を後方に投げ捨てたのです。そんな圧巻の光景に会場は大・大・大盛況!
これは……流れがスカイハイに傾いてきた気がしますね。
長い時間、苦戦を強いられてきましたが……ここから大反撃ですよ!




