第伍三回戦!!舞姫作者
第伍三回戦!!
世界代表!若きガンマン、ビリー・ザ・キッド!日本代表!舞姫作者、森鷗外!
馬に跨がって現れたのはカウボーイハットを被り拳銃とライフルを装備した若者。正確で精密な早撃ちを得意とする彼はアメリカ西部開拓時代を代表するアウトローである。
対するは医者であり翻訳家であり小説家。ドイツに留学し、代表作のきっかけを得た彼は日本の文学史に大きな足跡を残した軍人である。
第伍三回戦、開始!!
先手必勝とばかりにビリー・ザ・キッドは拳銃を抜き森鷗外へ向けて発砲した。
間一髪横に飛んで3発の銃弾を避ける森鷗外。
後ろの壁には森鷗外の頭の位置にほぼ同じ場所に弾痕が作られている。
一瞬で3発撃ち、その全てが正確に急所を狙うビリー・ザ・キッドの鉄砲術に呑気に感心する森鷗外。
ビリー・ザ・キッドは破壊力のあるライフルを構えると森鷗外の足に向けて撃った。
ライフル弾の威力を知っている元軍医の森鷗外は大きく跳んでライフル弾の着弾範囲から離脱する。
だが。それを読んでいたビリー・ザ・キッドは移動先に向けて既に銃を向けていた。
空中で身動きの取れない森鷗外に向けてライフルが撃たれる。
脇腹の大半が吹き飛ぶ森鷗外。
森鷗外が目を見開き倒れると、ビリー・ザ・キッドは勝利を確信した。
ムクリ
何事もないかのように起き上がる森鷗外。
ビリー・ザ・キッドは理解出来ないと言わんばりに棒立ちになって固まる。
傷はそのままで動く森鷗外。ゾンビにしか見えない。
だが、実際はゾンビよりもタチが悪い。
起き上がった森鷗外が崩れたのだ。
崩れた山を見ると大量の紙があり、今さっき撃たれた森鷗外は髪を固めた人形だったのだ。
騙されたことに気づいたビリー・ザ・キッドは本物の森鷗外を探す。
見渡す限り何もないので等間隔に銃を撃ってみる。
しかし、森鷗外は出てこない。
攻撃のしようがないビリー・ザ・キッドは森鷗外んpアクションを待つことにする。
ジッと360度を警戒しながら待っていると森鷗外の人形の残骸が動き出した。
すぐにライフルを撃つビリー・ザ・キッド。
残骸の紙は一瞬風穴が開いたように大きく舞うが何も現れず、渦を巻くように回転し始めた。
渦は縦に広がり竜巻のように紙が舞う。
そして紙は突然回転を辞めて、中から1人も女性が現れた。
森鷗外作、【舞姫】、この小説を読んだことのある者ならば分かるだろう。
女性は登場人物エリス。森鷗外を愛し、森鷗外に愛され、そして置いていかれた悲劇的なヒロインである。
彼女は回り、舞う。自身が愛した男のために、ビリー・ザ・キッドは得体の知れないドイツ女に警戒し、自己最速の早撃ちでエリスを倒そうとする。
しかし、エリスは舞いながら銃弾を避け続け、当たりかけるものは何十枚ものの紙が銃弾を受け止めてエリスを守る。
銃を撃ち続けるビリー・ザ・キッド。エリスのは笑顔を見せながら舞い、ビリー・ザ・キッドに迫る。そしてすぐ目の前に到達する。
ビリー・ザ・キッドは一か八か、ライフルを目の前のエリスに向けて近距離射撃した。
森鷗外の人形と同じように脇腹の大半が吹き飛ぶエリス。
崩れるエリス。
紙の山に戻ったエリス。
目的を果たしたエリスは、愛する人の役に立ったと呟いていた。
そう、目的を果たしたのだ。
ビリー・ザ・キッドの近距離に出来た紙山は森鷗外の指示に従いビリー・ザ・キッドに纏わり付く。
1枚分の薄い紙ならばともかく何十枚、何百枚分の厚さで体に紙が纏わり付くと欧米人の成人にしては小柄なビリー・ザ・キッドでは身動きが取れなくなる。
やがて紙の山にガンマンが埋もれると、その真後ろの背景がペラペラとめくれ白い紙切れになって剥がれていった。そこに立っていたのは森鷗外。
剥がれた紙には情景や舞台に関する文字が書かれており、それによって背景、いや空気と完全同化するようになっていたのだ。
森鷗外はその紙で作られた空間内にいたので空気と同化し銃弾すらも受け流すことができたのだ。
日本赤十字社・石黒忠悳
「森君、君の舞姫の本だが、君に置いていかれた後、エリスが発狂しているようにしか思えないのだが…、私の読み間違いかな?」




