第伍四回戦!!ラジオの第一声
第伍四回戦!!
世界代表!3C政策、セシル・ローズ!日本代表!ラジオの第一声、京田武男!
世界史に載った彼は元はただのビジネスマンだった。だが、彼が成そうした鉄道計画はイギリスと自社の繁栄のために計画された理想の政策だったのである。
対するは1925年、日本で初めて電波に声を乗せたアナウンサー。武力でなく、知力でもなく、声と言葉で戦う彼は民間に最速で情報を届ける報道者である。
第伍四回戦、開始!!
「私はアフリカのナポレオンと謳われたビジネスマン!!
さあ、足で大地を掴んで踏ん張れ!!我が領地、ローデシアをここに召喚する!!」
民間企業の経営者でありながら本国、イギリスの4倍以上の土地を所有したセシル・ローズは生前、自身が支配していた広大な土地を召喚した。
ここは1894年のアフリカ南部。セシル・ローズの会社の所有地であり、ケープ植民地首相のセシル・ローズの意思によって全てが決まる私有地でもある。
「全兵士は我が敵を排除せよ!」
セシル・ローズの号令の下に白人も黒人も総動員で京田武男に向かって走り出す
一方、暑い日差しの中スーツを着てネクタイときっちり締めた京田武男はテーブルと椅子と召喚するとそこに座った。
広いアフリカの大地のど真ん中で席に着く彼は諦めたわけではない。
彼はアナウンサー。
ラジオは声と言葉のみであらゆる情報を人々に届けるマスメディア。
ならば、彼がやるべきことはマイクに向かって喋ること。
原稿は常に新しい物を。情報には鮮度がある。
さあ、オンエアだ。
「joke、joke、ここで緊急速報です。
アフリカ南部にあるイギリスの植民地ローデシアで大規模なゲリラ豪雨が降りました。
該当地域のみなさんは洪水にご注意下さい。」
京田武男の放送が流れる。
ゲリラ豪雨と言ったが実際には雨すら降っていない。
では、何故、京田武男はこのような放送をしたのか?
それは、時差である。
京田武男の声は日本で1番最初に電波に乗り、音速を超えて人々に情報を届けた。
生の音声と電波上の音声の間で生じる時差はほんの僅か。
そのほんの僅かの間に現場の矛盾点を修正しようと事態は起こる。
京田武男の明瞭かつはっきりとした声は空間の時系列を歪めて未来の出来事を過去に、過去の出来事を現代に持って来る。
急速に発生して分厚く積もる積乱雲。
雷鳴が響き、雷と共に大量の雨粒が降って来る!
「なんと、天候を操るか。ならば、洪水も虚言ではないかもしれんな。
海上装備をしてボートに乗り込め!!
水流に乗って一気に近づき叩くぞ!!」
すぐに近くの川が氾濫するがセシル・ローズの的確な指示により被害は軽微。
配下の無事を確認したセシル・ローズは土地に対して命令する。
「敵を中心に流れを集中させよ。水流の方向を互い違いにし大きく航路を定めよ。」
無秩序の洪水部分がセシル・ローズに言葉によって幹線道路の車道の様に片側三車線の如く水流のが形成される。
水流に乗って京田武男に迫るセシル・ローズ麾下のボート群。
「ここで再び緊急速報です。
ローデシアにおいて、急速に巨大な熱帯低気圧が発生しました。ローデシアには暴風警報と竜巻注意報が発令されます。周辺住民の皆さんは急な突風と竜巻にご注意下さい。」
積乱雲が高速で回転し始める。
雨が天へ向けて逆行し、水面が宙に浮き始める。
ボートが突風に煽られて乗組員ごと吹き飛ばされる。
至る所で同じことが起き、同時に発生する3つの竜巻。
兵士は風に捕われて四方八方へと散って行く。
「何のこれしきっ!!ぼた山を形成し発火せよ!!」
高速で形成される廃石の山。
これは鉱山の採掘の際に出る砂利。
主な成分は岩石だが所々に極小の石炭などが混ざっており、自然発火することも珍しくない。
セシル・ローズは人の手で決着をつけることを諦め、大地の力を行使する。
燃えるぼた山。
竜巻に巻き込まれて炎の渦となったぼた山は収録室にいる京田武男にも熱波を伝え、ダメージを与える。
京田武男は大粒の汗を流しながら、呟く。
「熱波が何だ。
暑さでアナウンサーが根を挙げてちゃアナウンサーになった意味がないだろ。
さて、ニュースの時間です。
ローデシア周辺地域に震度6強の地震が発生しました。
津波や土砂崩れ、地震火災が立て続けに起き、現地はまさに地獄絵図の様であります。」
天候どころか大地すらも改変する京田武男の言葉。
セシル・ローズの庭たるローデシアに地震が起き、地面が、建物が、人が、木が、川が、全てがひっくり返った。
セシル・ローズは尻餅をついて混沌とするローデシアを見渡す。
視界の奥に原稿を持ちながらセシル・ローズを見つめる京田武男が見えたが、セシル・ローズは何も出来ない。いや、する気が起きない。心が折れてしまったのだ。
私有地では王の如く自身の思いのままだったセシル・ローズだが、言葉一つで全てを迎え撃ち、全てを破壊した京田武男にセシル・ローズは膝立ちのまま呆然と自身の敗北を認めるしか出来なかった。
日本初スポーツ中継・魚谷直
「京田さんは日本で初めてアナウンサーになった人だ。その声や言葉ははっきりと明瞭で誰にでも聞き取りやすい声だった。」




