50話 危機
今日は、残酷な描写があります。
苦手な人は止めておいた方がいいかもです。
「セイン君!!」
「フェストさん!? どうしたの!? その腕!?」
え!? なになに!?
腕が大変な事になってるよ!?
「今はそんな事良いから!!それより...」
「おいおい、ダメだって嬢ちゃん。それより、早く治療しないと...」
「おじさん、ちょっと待って。フェストさん、それよりなに?」
「セイン君! みんなが!!」
鬼気迫る表情で言うフェストさんの様子に、僕は焦る
「ん!? みんながどうしたの!?」
「学園街の城壁が爆発して、下級から最上級までの魔物の大軍が押し寄せてきて、ジェイド様が先導して戦う事になって......」
な!? ジェイドなにしてんの!?
仮にも王子なんだから最前線に行っちゃダメでしょ!!
「それで、皆で戦って下級の魔物は殆ど倒して、中級の魔物も半分くらい倒したんだけど、中級とか上級の魔物がどんどん増えていくし、体力も魔力も尽きてきて、私とロンズの氣力が尽きたのを引き金に崩れてきて......」
はぁ!? それって結構ヤバくない!?
援軍は!? ハンスさんなにやってんの!?
「それで、私が熊の魔物の突進を受けちゃって戦えなくなったから、アレク君に、前線を離れて、援軍を呼んできてくれないかって言われて、私だけ逃がしてもらって......」
そこまで言ってフェストさんは、泣き始めてしまった
みんながこんな目に遭ってる間僕は一体なにをしたいた!?
ただダラダラと無駄な時間を過ごしていただけじゃないか!!
今、この時もみんなが危険に晒されていると言うのに!!
「フェストさん、ちょっと待ってて。今、エリアス伯父さ...王様に報告してからすぐに僕が向かう!!」
「うん...みんなを...助けてあげて...」
「うん。当たり前だよ」
そう言うと、フェストさんは安心して力が抜けたのかその場で倒れ込んでしまいそうになる
「っと...」
僕は易しく支えてあげ、ついでに折れている両腕を《魔素操作》を使って治す
フェストさんは、痛みか消え、疲れが出たからか眠ってしまう
「フェストさん、伝えてくれてありがとう」
僕は、兵士さん達を説得し、今まで僕が生活していた部屋のベッドに寝かせてやった
そして、超特急でエリアス伯父さんの所に向かう
バァン!!!
「エリアス伯父さん!!」
「セイン君!? どうしたんだ急に? それと勝手にこっちまで来ちゃダメだろう」
「そんな事行ってる場合じゃないです!! ジェイドが、僕の研究会のみんなが、魔物と戦っててピンチだそうなので、僕は行かせてもらいます!!」
それだけ言うと、僕はエリアス伯父さんの執務室の窓から飛び出した
そして、背中を【炎化】させ、片方が身長の3倍はある二対四翼の炎の翼を生成する
翼自体の上昇気流に乗り、一度羽搏くごとに、標高とスピードを上げていく
「持ちこたえてくれよ...」
「待ってくれセイン君!! それは...ってもう行ってしまったか」
さて、どうしたものかとエリアスは考える
まだセインの【禁断の叡智を持つ者】は公表は疎か、宰相にしか言ってない
しかも、十二分な口止めをした上でだ
【禁断の叡智を持つ者】はそれほどまでにヤバい称号なのだ
【禁断の叡智を持つ者】をセインが持っていることが知られればどんな騒ぎになるか、想像が出来ない
「無茶はせんでくれよ...」
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フェストが応援を呼びに行った後、直ぐにアレクとジェイドの2人で、城壁から入って来た魔物が散って行かないように、城壁から自分達のいる所を『高氷壁』で囲み、魔物が町に入らないようにしていた
ジェイド達が激しく消耗していくなか、
城壁の外には中級以上の魔物が次々と集まってきていた
「魔物は減らないし! 消耗は激しいし! もう持ちそうにないよ!!」
「グッ 」
『厚土壁』
ドォン!!
「ぐはぁッ」
先程フェストを吹っ飛ばした上級の熊の魔物がアレクに突進して行き、アレクは、わざと柔らかく、クッション性のある厚土壁で応戦するが、熊の魔物は土壁で止まりきらず、アレクは吹っ飛ばされた
「アレク!!!?」
「グ、うう、だ、大丈夫、かな...」
「クッ、フェストは、応援は未だか!?」
「無茶言わないで、私でも此処から王城まで10分以上かかるのよ?」
「んな事言ってもよぉ...」
「......シーン、ロンズ、アリス。喋ってる暇は無いようだ...」
そう言われ、3人は城壁の外を見る
すると......
「な!?」
「うそ...」
「ざけんな!? この状況で、アレクさんもこんななのに、そんな事...」
まるで、ここまで弱るのを待っていたかのように、王城の外、数キロ離れた所にいた最上級の魔物達が此方に向かってくる
その数 5体
それに加え中級以上の魔物3500体以上
そんなとんでもない数の魔物が、現状、此方もぱっと見3000体以上の魔物がいる所に援軍として来るのだ
ジェイドの顔が引きつり、シーンは泣きそうな顔をする
ロンズは憤り、アリスとレオンの顔からは表情が抜け落ち、アレクは悲観的な顔をしている
そんな中トールだけは覚悟を決めた顔をしていた。
「皆さん...此処から離れて下さい」
「...トール......なにをする気だ?」
「...スキルを...使います。僕が指定した範囲を無差別に絨毯爆撃するものなので、応援が来るまでの時間稼ぎにはなりますし、運が良ければ殲滅出来るかも知れません。此処も危ないので皆さん離れて下さい」
「......トール、君はどうするんだ?」
「僕は...このスキルにも射程があるので残ります。
安心して下さい。ちゃんと後を追いますから」
「......分かった。絶対に追いついてこい」
「...はい」
「教師陣も含め、全員、引け!!!」
そう言ってジェイドが先導し、アリス、シーン、レオン、教師陣と続き、最後にアレクを抱えたロンズがその場を離れる
ジェイドが、分厚い【氷壁】に穴を開け、最後にロンズに担がれて出たアレクが再度【氷壁】で穴を塞ぐ
その瞬間、
上空に雷雲が立ち込め...
青白い落雷の雨が降った
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「皆さん、離れてくれましたね」
「皆さん、すみません」と心の中で謝る
「それじゃあ、『雷神』さん。よろしくお願いしますね」
トールの体から、強く、神々しい気配が発される
「おう!! 久しぶりだなぁ! トール! もっと話しててぇがヤバそうだかんな! 今回はここまでだ」
「それじゃあ魔力もらうぞ?」
「...はい」
『雷神』は、トールの魔力を1だけ残して残りの魔力を全て吸い取る
「グッ うう ウァッ っ はぁ はぁ はぁ はぁ はぁ...ゴッホ ゴホ すぅ~ はぁ~ ......お願いします」
「おうよ! 『我が雷神の名の下に、魔力を糧とし罪を討つ神罰となれ』」
『《雷神の気紛れ》』
雷神が神言を言い終えた瞬間、空に雷雲が立ち込め、落雷の雨が降る
「グガァァァァァァァァッァァァ」
「キャゥゥン」
中級や上級の魔物の一部は直撃や余波で次々と焼け焦げていき
残りの上級の魔物も何度もの直撃をうけ次々と力尽きていく
そんな中、トールの所は落雷が避けて通っている......が
「すまんなトール。今のお前ぇじゃあこれで限界だ」
トールから『雷神』の気配は消え、トール自身は仰向けに倒れ込んでしまう
魔力欠乏症だ
魔力は、使いきると気絶してしまう特性がある
現在、トールの体には魔力が1しか残っていない
完全に気絶しているわけではないが、意識が朦朧とし体に力が入らず、動けない状態だ
その合間に落雷の雨がやむ
そこはまさに地獄絵図だった
数百、数千体の魔物の焼死体が積み重なり、肉の焼ける臭いが充満し、この場にいた殆どの魔物達が倒れていた
「...ははは...これでも死なない魔物が要るなんて......もう、ダメかなぁ」
トールは、乾いた笑いを溢すと皮肉げに言った
そう、トールの決死の攻撃でも、最上級は疎か上級でも残っている魔物も多い
裕に2000体は残っているだろう
トールは自分の命を諦めそうになっていた
「トール!!! 大丈夫か!?」
しかし、この言が聞こえ、無意識に安心してしまった
「ぐ、う、ジェ、ジェイド様...何で...」
「...あれだけ強力なスキルだ。対価が無い方が可笑しい。落雷の雨が降った時に確信した。トール、君は元から追いかける気などなかっただろう?」
当たりだった
このトールはこのスキルを使えば、自身が動けなくなることを分かった上で、皆を逃がしたのだ
しかし、全ての魔物を殲滅できる自信もあった
その自信は、打ち砕かれたわけだが
「...はい」
「君が戦い続けているのに、私が逃げる訳にはいかないだろう。私は、この国の王族なのだから」
「そうっすよ! 異種のトール君が頑張ってくれているのに、僕達が命張らないなんて出来ないっす」
レオンがそう言うと、他の戻ってきたメンバーも同意する
「さて、もう少しの辛抱だ。意地でも持ち堪えるぞ!」
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「グハァ!!!?」
「ジェイド様!? ってキャァァァァァァ!!」
「シーンさん!? わ!? キャァ!」
「アリスさん!! がは!!?」
「ウガッ」
「ガハァ!!」
持ち堪えるとは言ったものの、格上相手に、数分も持たないうちに崩れる
大蛇の魔物が尾を鞭のように使って、ジェイド、シーン、アリスの順に叩き飛ばされる
内臓が破裂し、肋骨が数本折れた
アレクは熊の魔物に爪で、左肩から右脇腹まで切り裂かれる
その傷は肋骨数本と、腸などの内臓にまで及んだ
レオンとロンズは別の熊の魔物の突進をうけ吹き飛ばされる
脛と腕と肋骨が折れ、肩が外れる
全員が呻き声をあげ、血を吐く
トールは、魔力欠乏症で倒れたままだった
「不味い、速く、グッ、離れなければ...」
そこへ追い討ちを掛けるかのように蛇と熊、上級の魔物達が近づいてくる
「かはっ、うぐぐ...」
「うぅあァァァ」
「っ~!!!?」
少しずつ動こうと力を入れるが、力を入れるたびに体に激痛が走り、まともに動くことが出来ない
徐々に魔物達が近づいてくる
動くことが出来ない今、魔物に集られれば、魔物の餌食になる事は確実だろう
全員がまだ生きていたいと、逃げようと試みるがやっぱり体は動かない
...もうダメだと諦めそうになった時
「やめろぉぉぉぉぉおおぉぉぉぉぉぉ!!!!」
黄白色の雨が降る
今日も読んで頂きありがとうございます!!
やっとセイン君の参戦ですね!
初めて、少し残酷な描写を書いてみたのですが、どうだったでしょうか?
もう少しで第二章が終わります!
第二章が終わったら、少しの間休載するかもです。
これからも頑張って書いていくので
読んで頂けると嬉しいです。
よろしくお願いします!




