09
「あ、大賀先輩」
「よう、元気そうだな」
今回も岩佐の方から呼ばれて出てきている状態だった。
石上も近くのベンチに座っている、俺を見るなり手でしっしとやられてしまったが。
「はい――あ、ただ私と石上さんはまだお付き合いはしていませんが」
「きゅ、急だな」
「大賀先輩ならまずそれを聞いてきそうだったので」
俺達が付き合い始めたという話は雛から聞いたらしい。
どうやらそのことでも気になっている……のかもしれない。
「おめでとうございます」
「ありがとな。でもさ、岩佐もそろそろ石上のことを名前で呼んでもいいんじゃないか?」
「私達はもう少しゆっくり仲を深めていきます」
「そうか」
このタイミングで石上が近づいて来て腕に攻撃を仕掛けてきた。
「よくあの上地を振り向かせたな」
「龍生のところに井本先輩が現れていなかったら負けていたよ」
「どうだかな」
「私的には石上さんが頑張ってくれていなかったら大賀先輩ともっと仲良くなっていたかもしれません」
敢えて思ってもいないことを重ねて相手に構ってもらいたいということだろうか? 彼だって最初は意地悪をしたいわけじゃないのに本を取り上げるみたいなことをしていたよな。
「んーこの人両方と仲良くって上手くできそうにないし、結局は上地ばかりを優先されていたんじゃね?」
「その場合は私が物凄く頑張ります、雛さんばかりを優先させません」
「待て待て、敢えて石上の前でそんなことを言わなくてもいいだろ?」
「それだけ大賀先輩は酷いことをしてくれたということです」
何度振り返ってもあのとき頑張ってくれたのはカサカサ君だし、彼が素直にハンカチを返してくれたからこそだから俺と彼女が上手くいくなんてことはなかっただろうな。
俺が雛と付き合い始めたからこその冗談というやつだ、一応なにかがありましたみたいに言ってくれる優しい子というだけだ。
「となると、その場合は俺が上地に……? ないな」
「石上も『そんなこと言うなよ』って止めてくれ」
「たまに冷たくなるときもあるけど岩佐なら大丈夫なんだ」
「そ、そうかい、仲がいいからこそってやつね」
それでも付き合うまではこういうヒヤヒヤするやり取りはやめてほしいところだ。
「あ、ちょ、もしかして上地を呼んでいたのか?」
「いや?」
「またですね。でも、今回はちゃんと雛さんに言って出てきたんじゃ……?」
「ああ、岩佐に呼ばれたからいってくるってちゃんと教えたぞ」
「まあ、前とは少し違いますからね、来てしまってもなにもおかしくはないですね」
気になるとしても呼んでくれればちゃんと付き合うのに。
そして結局、隠れて見てきているだけで二人と話している間は近づいてきたりはしなかった。




