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「こんにちは」
「あ、井本先輩」
夏なのに一人だけ涼しそうだ。
日傘をさしているのも影響しているのかもしれない、ただ一番大きいのはその隣に立っている龍生の「早く屋内に退避したい……」みたいな弱々しい顔のせいでもある。
「あ、俺の方はこれから雛の家にいこうとしていたところなんです、そちらはどうですか?」
「私達はお散歩をしていたところよ――そうね、私達も参加させてもらおうかしら」
「雛なら歓迎してくれると思います、いきましょう」
これは彼のためでもあった。
俺がいるせいかろくに会話をしていなかった二人だが上地家に着いたら流石に変わった。
「ねね、辰巳先輩はなんであんなにお疲れモードなの?」
「分からない」
「まあ、ジュースでも飲ませておけば回復するか」
何気に上地家って冷えるんだよなあ
朝とか昼に家にいるのは彼女だけ、つまり彼女が温度調節をしているということになるが……なにもここまで下げなくてもなあ。
リビングのエアコンが点いているということは扉は開けられてはいけないわけで、どうにかしたいなら廊下に逃げるしかなかった。
「あら、上手くいっていないの?」
「いえ、冷えるじゃないですか」
「だったら上げてって言えばいいじゃない、前と違って彼女なんだから遠慮をする必要はないわ」
「いやでも、こういうのは人によって違いますからね」
「太っている人とかなら分からなくもないけど雛さんは細いじゃない、だから雛さんなりに考えてくれた結果なのかもしれないわよ?」
下げれば下げるほど電気代も高くなるからもしそうなら申し訳ないが。
「え、なに? もしかして下げすぎていた感じ?」
「ああ悪い」
「もう何回も来ているんだから……ちゃんと言ってよ」
「ありがとな」
「べ、別にいちいちお礼とか言わなくていいけど」
これ、先輩達がいてくれてよかったな。
今回も彼女が誘ってくれたから来ていただけだが二人きりだったらなにをしていたのか……。
「ふふ、仲良しね」
「付き合っていますからね――あ、先輩は――」
「付き合ってはいないわね、それどころか龍生君が弱ってしまっていて気になるわ」
「ちゃんと見ておいてあげてください」
「そうね、ちゃんと見ておくわ」
温度設定を変えてくれたことによってすぐに過ごしやすくなったリビングで龍生の隣に座って天井を見ていると「やったな」と言われて頷いた。
「なんとなくこうなる感じはしていたよ」
「そうか」
「蓮介に彼女ができてよかった」
「そうだなあ」
狙っていなかったのがいい方に働いたのかもしれない。
「よいしょっと、もう大丈夫でしょ?」
「ああ」
「はは、それならよかった」
一日でも長く続くように、そしてこの前よりも好きになった笑顔を見られるように頑張ろうと改めてそういう気持ちになったのだった。




