↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
279/354

戻ってきた駒 2

 マティアスが出て行った後、ガレスはしばらく扉を見つめていた。

 使える駒は限られている。

 ヴィクトルは危うい。

 印章は回収された。

 残滓がどこまで効いているかは分からない。

 あれは、セヴランから渡されたものだった。

 ガレス自身に、術式の細部は分からない。

 名を言えなくなると説明された。命令内容を口にできなくなると聞いた。だが、魔術の効果など、使う側にとっては常に不確かだった。

 効いているはずだ。

 そう思いたい。

 しかし、団長がヴィクトルを再聴取した。

 ユアンが同席した。

 ヘルムートが記録した。

 魔術院の人間まで呼ばれた。

 つまり、印章の残滓に気づかれた可能性がある。

 ガレスは机の奥から一通の小さな返書を取り出した。

 セヴランへ送った問いへの返答だった。

 ――現在、騎士団長への再干渉は推奨しません。

 ――警戒下での認識阻害は痕跡が残ります。

 ――観測価値より露見リスクが高い。

 ――既存の記録攪乱と人的経路の整理を優先してください。

 実にセヴランらしい文だった。

 必要なことしか書かない。

 助けるとも、見捨てるとも言わない。

 ただ、動かない。

 ガレスは紙を握り潰しかけ、思いとどまった。

 感情を荒らすな。

 自分は副団長だ。

 ここまで上り詰めるために、政治家の顔色も、騎士たちの不満も、戦場の不運も、すべて処理してきた。

 こんなことで失脚してたまるか。

 エリオット・バーンスタンなど、二年前に終わったはずの男だ。

 右腕を失い、田舎へ消えたはずの騎士だ。

 それがなぜ、今さら白い治療師などと共に戻ってくる。

 ガレスは別の封書を開いた。

 ベルトラン侯爵側からのものだった。

 ――エリオット・バーンスタンに関する確認を急げ。

 ――白い治療師と接触している以上、彼の状態は政治的にも看過できない。

 ――騎士団内の再調査を制御せよ。

 制御せよ。

 簡単に言う。

 ガレスは、低く息を吐いた。

 上は命じる。

 セヴランは動かない。

 団長は疑い始めている。

 ヴィクトルは不安定。

 マティアスは戻ったばかりで、まだ使える。

 なら、使うしかない。

     


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。