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あべこべ世界でのランナー ~マラソン日本記録保持者が女性過多で貞操観念も逆転した世界線に転移し無双する~  作者: アサノ霞
第10章 夏の合宿 編

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第88話 白樺湖での合宿③ 準高地の風

8月8日(水) ―― 14時00分。

 午前中の騒動を終え14時、僕たちはクリスが手配してくれた大型観光バスに乗り込み、午後の練習拠点となる「女神湖運動公園」へと到着した。

宿泊先からの移動をすべてバスに統一したのは、選手たちの疲労軽減と万が一の事故を防止するためだ。


 バスのステップを降りると、眼前には太陽の光を浴びてキラキラと輝く美しい女神湖が広がっていた。そしてそのすぐ脇には、全天候型の実に立派な400mトラックが鎮座している。


(元の世界ではただの土トラックとサッカーグラウンドだったのに……この世界線では完璧なナイター設備と更衣室、シャワールーム付きの陸上競技場になってるなんてな)


 僕は心のなかで呟く。しかも、ネットで事前確認したら、この素晴らしい施設は地元の高校が週1回の占有予約をしている程度で、ほぼ貸切状態である。

標高1500mという僕にとっては最高峰の『準高地トレーニング』環境が野放しになっているのは、とても勿体なさすぎる。


 僕は合宿期間中の空き枠すべてを占有予約しておいたのだった。


「みんな、荷物はトラックの隅にまとめて置いてね! マネージャー(男子)がドリンクを用意してくれるから、準備ができたら芝生に集まって!」


 僕の声かけに、部員30名が素早く動く。僕と朱里、クリス、そして護衛たちも見守る中、トラック内側の青々とした芝生の上で準備運動を開始した。


「監督(クリス)、僕も一緒に走るから、外側からフォームチェックとタイム計測をお願いします」


「うん、任せて! マネージャーたちと一緒にしっかり記録しておくね」


 クリスが満面の笑みでタイム計測用のストップウォッチを掲げてみせる。妊娠初期の身を案じる僕の心配をよそに、彼女の体調はすこぶる良さそうだ。どうやら僕の杞憂に終わったらしい。


 準備運動を終え、僕たちはジャージを脱ぎ捨てて練習用のセパレートユニフォーム姿となった。

水色のブラトップにブルーのショーツを身にまとった部員たちに、僕は今日の目玉となる『効率的な給水法』を説明するために集合させた。


 設置された簡易デスクの上には、男子マネージャーが用意してくれたスポーツドリンク入りの紙コップがずらりと並んでいる。


「みんな、ちょっとこちらに注目してほしい! 午後はトラックを5周(2000m)走るごとに、必ず1回の給水タイムを入れる。……ただし! 立ち止まって飲むんじゃない。『走りながら確実に給水する技術』を今日ここでマスターしてもらう!」


部員たちが「えっ、走りながら……!?」とざわついた。

みんなトラック競技を中心としていたので、ロードでのランニングの経験がない者が多い。


「いいかい? 実際の駅伝やマラソンでは、走りながら給水ボトルやコップを取るのが鉄則となる。この合宿中にマスターしてほしい。これから、やり方を説明するよ。まず、給水所に差し掛かったら一列の縦隊になる。無理に割り込もうとはしないこと。若干スピードは落ちてもいいから、慌てず確実に紙コップを掴むこと」


僕は実際に紙コップを手にとって見せた。


「コップを掴んだら、こうして人差し指と親指で上部を挟み、V字型に折り曲げるんだ。こうすることで注ぎ口が狭くなって、走りながら口に含んでも水が顔に跳ねたり、こぼれたりしにくくなる。飲み終わったコップは、しっかり手の中で潰してから、指定のゴミ箱に投げ入れるか、安全なコースの隅に落とすこと。分かったかな?」


「「「はいっ!!」」」


「最初はこぼしたりして上手くいかないかもしれないけれど、これも大事な実戦練習だ。慣れていこう!」


10名ずつ3つのグループに分かれ、午前中と同じキロ5分15秒ペースで15kmのジョグがスタートした。


「5周経過! 給水所入ります!」


 男子マネージャーが拡声器でそう告げる。最初の給水となり、部員たちは慣れない手つきで紙コップを掴もうとし、バタバタと水をこぼしたり、うまく口に入れられなかったりと苦戦していた。

だが、周回を重ねるうちに僕の教えた「コップの取り方」と「V字折り」のコツを掴み始め、最後には全員がスムーズに走りながら水分を補給できるようになった。


「よし、ラスト3周! 集中していこう!」


 約1時間20分後、全員が遅れることなく15kmを走り切った。


「ハァ……ハァ……! な、なんだか……午前中より足が重いです……っ」


 トラック脇に倒れ込む部員たち。標高1500mという環境下で15kmを走り込んだことで、身体にズッシリとした倦怠感が押し寄せてきているのだ。これこそが低酸素環境による刺激――準高地トレーニングの証拠であった。


「みんなナイスラン! この標高(1500m)の負荷がしっかり身体に効いてる証拠だよ。さあ、最後は芝生の上で体幹トレーニングと自重筋トレを行って締めくくろう!」


 15時40分過ぎ、最後はしっかりとストレッチを行ってから、こうして陸上長距離・駅伝部の午後の練習が無事に終了した。着替えのために更衣室へ向かう部員たちは、「今日の夜までに課題終わらせなきゃ〜!」「特待生じゃないから提出しなきゃ〜!」と学生らしい悲鳴を上げていた。過酷な練習の傍らで学業にも励む彼女たちの逞しさに、思わず笑みがこぼれる。


 着替えを済ませた僕は、4名の護衛(女性)を引き連れて、陸上競技場のすぐ隣に併設されている「女神湖ラグビー場」へと向かった。

更に数百メートル離れた場所にはラグビー日本代表が使う3面の天然芝グラウンドと屋内練習場があるが、今僕が向かっているのは「東相大学ラグビー部」が合宿を行っているグラウンドだ。


 グラウンドの敷地に入った瞬間、パッと花が咲いたような歓声が響いた。


「天馬さ〜ん! お疲れ様ですっ! お待ちしておりました!」

「天馬さん! 今日もよろしくお願いしますっ!」


 こちらまで走って出迎えてくれたのは、ラグビー部の天使たち⋯⋯もとい、男子マネージャーである「鶴田愛斗」君と「亀山未来」君の二人だった。

透き通るような白肌に“くりっくりっ”とした大きな瞳。スポーツウェアを着ているものの、まるでアイドルか美少女アニメのヒロインのように、とても可愛い美少女の様な二人である。


「やっ、やあ……愛斗君、未来君。今日もよろしくね」


(うぐっ!……相変わらず可愛すぎるな……。男だと分かっていても、つい顔が熱くなっちゃうよ……)


思わず赤面しそうになるのを必死で耐えつつ、僕は周囲を見渡した。


「あれ? ……優君の姿が見当たらないみたいだけど、今日は休みかい?」


「あ、はい! 今日の優は、旦那さん⋯⋯悦子さんのサポートのために、あちらのグラウンドへ向かわれてるんです!」


愛斗君がラグビー日本代表が練習している場所を指差し、申し訳なさそうに教えてくれた。


(くっ!……可愛い天使に会えないのは、残念だ……!)


 一瞬、露骨にショックな表情を浮かべてしまった僕だったが、すぐに頭を振り、大学ラグビー部のフィジカルトレーナーとしての『プロの顔』へと一瞬でスイッチを切り替えた。

ちなみに、義妹のリリカを含む部員5名も、日本代表の合宿に参加しているので、こちらにはいない。


 グラウンドの中央へ向かうと、東相大学ラグビー部の首脳陣が待機していた。

監督の「鶴田浩子」さん(愛斗君のお母さん)、ヘッドコーチの「若山登美子」さん、そして戦術担当コーチの「勝田真紀」さんだ。


「甲斐田トレーナー、本日もよろしくお願いいたします!」


鶴田監督と若山ヘッドコーチが、深々と丁寧に頭を下げて僕を出迎えてくれた。


(……本当に、雰囲気がガラリと変わったよなぁ)


 実は、春先までこの二人は重度の「女性至上主義」的な価値観の持ち主で、男性である僕に対しては露骨に冷たい「塩対応」を決め込んでいたのだ。しかし、僕が考案したフィジカルメニューを導入した結果、「関東州春季大学リーグ」で、東相大ラグビー部は圧倒的なフィジカルの強さと無尽蔵のスタミナを発揮し、他大学をなぎ倒して全試合完封全勝の完全優勝を達成したのだ。

それ以来、二人の僕に対する態度は180度ひっくり返り、今や絶大な信頼と好意を寄せてくれている。


 その横で、最初から僕の科学的トレーニング理論に心酔していた勝田コーチが、「ふふん、だから言ったでしょう」と言いたげに目を丸くして誇らしげに鼻を鳴らしていた。


「若山ヘッドコーチ、部員の皆さんを集めていただけますか? 今日のメニューについて説明します」


「はいっ! ただちに集めます!」


若山HCの笛の音とともに、グラウンドからガッシリとした体躯の美しい女子部員たちがゾロゾロと集まってきた。その数、およそ100名。


(うはぁ……女子ラグビー部員が100人……!しかもみんな美人だ!元の世界の男からしたら、羨ましすぎる光景だな……)


男心を心の中で呟きつつ、僕は大勢の部員たちの前に躍り出た。


「皆さん、お疲れ様です! これから今日のメニューを説明します」


「「「よろしくお願いしますっ!!」」」


100名の女子部員から腹の底から響くような地鳴りのような挨拶が返ってくる。僕は全体を見渡しながら、朗々(ろうろう)と声を張った。


「まず、普段行っている『100mインターバル走』ですが――今日からは本数を30本から36本に増やします! これを合宿中、週3回実施します!」


部員たちの間に緊張が走る。


「なぜ本数を増やすのか。理由は、ここが標高1500mの『準高地』だからです! 平地と比べて気圧が低く、空気が薄い環境下で100mインターバル走を行うことで、平地と同じトップスピードを維持しながら、心肺機能に極限の負荷をかけることができる。この3週間で、君たちのスタミナの限界値をさらに一段上のステージへ引き上げます!」


僕の説明が進むにつれて、部員たちの顔から甘えや緩みが一瞬で消え去った。全員の瞳に勝利を貪欲に欲するプロのアスリートとしての鋭い光が宿っていく。


「おお……なんという集中力……!」


それを見た鶴田監督と若山HCは感嘆の声を漏らした。


勝田コーチに至っては「ああ……天馬さんの論理的な指導……素敵すぎる……っ」と、うっとりと頬を染めて恍惚の表情を浮かべていた。


僕は説明を続ける。


「さて! これまで数ヶ月間、皆さんは『ボックススクワット』と『スプリント式ランジウォーク』を徹底的にやり込み、下半身と体幹の完璧な基礎を作り上げてくれました。サボらずに基礎を固めてくれたからこそ……今日、いよいよ次のステップへ進みます!」


僕は着ていたジャージの上着と下を脱ぎ捨てた。


中に着ているのは、黒色で肌にピタッと密着する胸元までのノースリーブ・コンプレッションウェアと、黒のローライズ・ショートタイツ。いわゆる「腹出しヘソ出し」のセパレートスタイルだ。


「「「っっっ……!?」」」

「「「………!!!」」」


100名の女子部員たちが一斉に息をのんだ。

鍛え上げられた僕のシックスパックと、胸筋・背筋の美しい筋肉美が露わになると、部員たちの目が一瞬で「獲物を狙う肉食獣」のそれに変化し、好色じみた熱い視線が僕の身体に突き刺さる。


だが、僕は意に介さず、用意させておいた20kg(左右のウエイト10kgずつ)のバーベルの前に立った。


「今日のテーマは『最大の瞬発力とパワー』の到達です! 相手と激しく衝突するラグビーにおいて、一瞬で最大100(%)の爆発的なパワーを発揮するための効果的なトレーニング――『ハイクリーン』を伝授します!」


僕はバーベルの前に腰を落とし、正しいフォームを作った。


「グリップは肩幅よりやや広く。背筋を伸ばし、床から一気に引き上げる……! 股関節と脚の爆発的な進展を使い、肩をすくめ、肘を高く挙げて……ターンオーバー!!します」


シュパッ――カチャンッ!!


一瞬の静寂の後、バーベルが僕の鎖骨の上、フロントラックのポジションに完璧な軌道で収まった。目にも留まらぬ素早さと、無駄のない洗練された動作である。


「「「凄い……!!」」」

「「「美しい……なんて綺麗なフォームなの……っ!?」」」


100名の部員たちから、惜しみない歓声と拍手が巻き起こった。


「いいかい? ハイクリーンは全身の連動性と瞬発力を鍛える最高の種目だ。ただし、正しいフォームで行わないと腰や手首を痛める。みんなはこれまで基礎トレーニングをしっかり積み重ねてきたから、絶対にできる! 5名ずつ20組に分かれて、まずは10kgの軽いバーベルでフォームを確認しよう!」


 グラウンド脇には、大学からトラックで運んできたウエイト器具が見事にセッティングされていた。この環境を整えてくれたスタッフの優秀さに感心しつつ、トレーニングがスタートした。


「そう! 肘をしっかり前に突き出して受け止めて!」

「腰を反らせすぎない! 股関節と脚の爆発力でバーを持ち上げるんだ!」


僕は各組を細かく回り、一人ひとりのフォームをチェックしながら熱血指導を行った。

驚いたことに、これまで数ヶ月にわたって「ボックススクワット」と「スプリント式ランジウォーク」を地道にこなしてきた成果が完璧に表れていた。部員たちは誰一人としてフォームを崩すことなく、完璧な軌道で『ハイクリーン』を挙げてみせたのだ。


(すごいな……地味で辛い基礎トレーニングを、誰一人サボらずに継続してきたからこそだ。このチームは、もっと強くなる!)


部員たちの成長に、胸の奥から熱い感動がこみ上げてくる。


当初は、鶴田監督から「指導時間は1時間まで」と決められていたのだが、熱の入った指導は止まらず、気づけば1時間を超えてしまい、時刻は17時30分を回っていた。


「いやあ、素晴らしい指導でした、甲斐田トレーナー!」


鶴田監督が感無量といった様子で歩み寄ってきた。


「春季リーグを全勝で制覇できたのも、部員たちの目覚ましい成長も……すべては甲斐田トレーナーの情熱的なご指導のおかげです。心から感謝いたします」


「いいえ、部員のみなさんが努力を惜しまなかった結果ですよ」


夕暮れ時の女神湖ラグビー場。

頭を下げる監督や部員たちの笑顔を見つめながら、僕はしみじみと思った。


(男だ女だという性差なんて関係ない。正しい理論と情熱をもって努力を重ねれば、人はどこまでも強くなれるんだ)


 この世界でも、しっかりと結果を残せば人は認めてくれる。確かな達成感を胸に抱きながら、僕は汗を拭い、次なる場所へ向かう準備を始めるのだった。


~~~~~~~


17時30分過ぎ――。

 ラグビー部の熱気あふれるフィジカルトレーニングの指導を終えた頃には、時刻は17時30分を過ぎていた。


 茜色に染まり始めた夕空の下で汗を拭い、ようやく僕は自分自身のトレーニングへと取りかかる。


(よし、ここからは僕の時間だ。まずはコースの偵察も兼ねて、女神湖の周回コースを走ってみよう)


 女神湖の周回コースは1周およそ1.8kmである。天馬がジョグペースで駆け出すと、ピンク色のヘルメットを装着した女性の護衛2名(ピンク色のバイクジャージ)が、ロードバイクを漕ぎながらピタリと並走と追走を開始した。


 走り出してすぐ、天馬はその足裏の感触に驚かされた。

こちらの世界線における女神湖の周回コースは、歩道や路面が驚くほど緻密に整備されており、アスファルトの凹凸(おうとつ)も少なくて非常に走りやすい。スポーツ施設としてのインフラ投資が手厚いこの世界ならではの恩恵だった。


しかし――ふと視線を湖面へと向けた瞬間、天馬の足取りがわずかに緩んだ。


(……ああ、やっぱりそうだ)


 静まり返る湖面。周囲の木々を映し出す鏡のように澄み切った湖面。そして、その背後にゆったりと構える雄大な蓼科山(たてしなさん)の山容――。


 目に入る施設や周囲の賑わい、男女の立場や社会的構造までもが激変してしまったこの世界線において、今この眼前に広がる女神湖の情景だけは、僕がかつて元の世界線で何度も汗を流し、見上げてきたあの景観と、寸分違わずまったく同じ姿を保っていたのだ。


 周囲の建造物や人間関係がどれほど変わり果てようとも、この信州の雄大な自然だけは、変わることなく、ただそこに在り続けている。どこか懐かしく、胸がキュッと締め付けられるような温かい郷愁が僕の心を包み込んだ。


 澄んだ涼風を胸いっぱいに吸い込みながら、変わらぬ景観の中を心地よく駆け抜けていく。あまりの走りやすさとロケーションの素晴らしさに夢中になり、気づけば周回コースをあっという間に4周――距離にして約7km弱を走破していた。


「よし、このまま宿舎まで走って戻ろう!」


 僕は足を止めず、そのまま女神湖を離れて白樺湖畔にある研修館を目指すルートへと舵を切った。女神湖から白樺湖へ至る約7km弱の道のりは下り坂が続く。


「天馬さん、下り坂での着地衝撃にご注意ください!」


 並走する護衛のロードバイク2台が、1台は天馬の横で安全を確保し、もう1台はピタリと後ろに続いて往来する車両の追突を防ぐ完璧なフォーメーションで伴走してくれる。僕も脚への負担を考慮し、ペースを極力抑えめにコントロールしながら、沈みゆく夕日を背に受けて軽快に坂を下っていった。


 辺りが薄暗い群青色に包まれ始めた頃、天馬は無事に白樺湖畔の宿舎へと到着した。

着替えを済ませ、涼しい高原の夜風を浴びながら、僕は明日以降のスケジュールに思いを巡らせる。


(明日からは、いよいよ本格的なスピードトレーニングが始まるな)


 1500mの準高地環境で行うスピード練習は、陸上長距離・駅伝部の部員たちにとっても大きな追い込みとなるはずだ。天馬は指導者・コーチとして彼女たちを的確に牽引しつつ、自身も来月に控えたレース(非公認のフルマラソン)に向けて、部員たちと一緒にトラックで追い込むつもりでいた。


(そして……夕方はラグビー日本代表のフィジカル指導か)


 思い返せば、あの「清野《せいの》 隆《たかし》」ことヨッシーの圧巻の演技力とオーラに呑まれ、勢いと情に押される形で引き受けてしまった契約だった。だが、指導時間はあらかじめ「1時間限定」と固く定められている。北川さんが作成してくれたスケジュールなら、事前準備と時間管理さえ徹底すれば、決してこなせない過密日程ではないはずだ。


「よし……気合を入れて頑張るとするか!」


 自分の背中をポンと叩くように呟き、天馬は明日から訪れるであろうさらなる激動の一日に備えて、静かに心を整えるのだった。


【あとがき】

次回の投稿は金曜日を予定しております。

今後とも本作品にお付き合いしていただければ幸いです。

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