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あべこべ世界でのランナー ~マラソン日本記録保持者が女性過多で貞操観念も逆転した世界線に転移し無双する~  作者: アサノ霞
第8章 歪なこの世界の闇 編

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第64話 新座での生活と深淵からの警告

6月20日㈬

 その日、僕を取り巻く環境は一気に、そして決定的に動き出すこととなった。


「天馬さん、準備はよろしいですか? これより移動を開始します」


 重苦しい表情でそう告げたのは、いつも僕たちをサポートしてくれている北川さんだった。

僕と、僕の愛する妻たちの身の安全を確保するため、これから「陸軍新座駐屯地」へと拠点を移す。持っていく荷物は、着替えなどの最低限のものだけ。

期間は10日間程度だという。

その間に、すべてに片を付ける目処が立ったとのことだ。


 移動の車内で、北川さんは事の仔細を静かに語ってくれた。その内容は、僕の想像を遥かに超える、この世界の闇そのものだった。


 僕のデータファイルを改ざんしていた主犯は、男性保護庁のトップである「立河理子」長官であること。そして、その背後で糸を引いていたのが、「蓮田みずき」元スポーツ庁長官だ。

蓮田元スポーツ庁長官といえば、一ヶ月前に僕の大会出場を阻止し、潰そうとした人物である。


 二人の目的は……僕の「精液」とのことだった。


 この世界において、5000m走とハーフの世界記録を圧倒するタイムで更新し、稀人でもある僕の肉体と遺伝子は、まさに国家最高レベルの「至宝」となってしまっていた。彼女たちは、僕の精液を入手すべく、色々画策していた様だ。

それだけでなく、僕を拉致する可能性もあるという。


「立河理子と蓮田みずきは、東欧、そしてアジアの第三国と深く繋がっていたのが確認されました。それらの国の富裕層や議員、高官たちが、天馬さんとの性接触……つまり、種付けを熱望しているのです」


 不法に僕の身柄を海外へ流出しようとする陰謀の可能性がある。

現在、日本国はその東欧やアジア第三国とは過去の紛争が原因で国交こそあれど、仲が悪く、精液の輸出を停止している状態だ。だからこそ、闇のルートで僕を手に入れようとしているらしい。

それだけではない。北川さんの口から漏れたのは、さらにおぞましい事実だった。


「彼女たちは、男性保護庁が管理・運営している少年たちの保護施設にまで手を染めていました。少年への強制売春による、精液の国外不正流出です……すでに、国内外のマフィアも巻き込んだ一大スキャンダル、いえ、国際犯罪に発展しています」


「そんな……少年たちが、そんな目に……」


 胸が痛んだ。この歪んだ世界で、守られるべき少年たちが道具のように扱われている。一刻も早く、彼らが無事に解放されることを願うしかなかった。


「天馬さんを狙う敵の動向を鑑み、これ以上の自宅滞在は危険と判断しました。ちなみに……」


北川さんは少しトーンを落とし、書類に目を落とした。


「すでに天馬さんが種付けを行われた女性6名につきましては、国防軍の福生基地にて厳重に保護されてます。こちらも拉致誘拐を防ぐための措置です。……それから、検診にて木村さんの妊娠が確認されました。他にも2名、妊娠の兆候が確認されてます」


「本当ですか……っ!」


 シリアスな状況の中、その報告だけは僕の胸を震わせた。僕の子を宿してくれた。その新しい命を守るためにも、絶対にこんな陰謀に屈するわけにはいかない。


 そして、安全対策として、本日より僕の護衛は4名から6名へと増員された。

本来なら先週の13日㈬からそうしたかったらしいのだが、国が僕の護衛の再度の身元照会はもちろん、増員予定者、さらには新座駐屯地内に出入りする外部職員(食堂や売店、設備管理のスタッフ)や業者に至るまで、徹底的に身元照会が行われていたのだという。


「時間がかかってしまい、申し訳ありません。ですが、敵がどこに潜んでいるかわからない以上、慎重にならざるを得ませんでした。その間、既存の護衛にはキツいシフトを強いることになってしまいましたが……」


 北川さんの視線の先には、松田さんの姿があった。

この間、自宅マンションの前には私服警官が目立たないよう常時6名配置され、僕が外出する際には、常に4名の護衛のほかに、遠巻きで私服警官が4名張り付いていたという。


「松田さん……。本当に、ありがとうございました。殆ど休まれていないんでしょう? 少し休んでください」


 僕が心からの労いを込めてそう言うと、松田さんは小さく首を振って、真摯な目で僕を見つめた。


「いいえ、固辞いたします。私は、少しでも、1秒でも長く、天馬さんの側でお仕えしたいのです。それが私の望みですから」


彼女の強い意志と好意に、僕はただ圧倒され、同時に深い安心感を覚えていた。


 また、愛里も僕と同じく本日より護衛が6名に増員されることになった。それ以外の妻たちと、婚約者である蘭については国の身元照会が間に合わなかったため、千代乃が自費でそれぞれ2名ずつ、民間の最高峰の護衛(警察と陸軍OBで構成)を手配してくれていた。

後日、国から千代乃へ費用が支払われる予定だが、彼女は「そんなはした金はいらない」と固辞しているらしい。


 ここまでとても手厚い保護であるのだが、裏を返せば、それだけ自由がないということでもある。


「……みんなに、幽閉に近い不自由な生活を強いてしまって、本当に申し訳ない。僕が、あんなに目立ちすぎたから、いけなかったのかもしれない。もっと、ひっそりと暮らしていれば……」


ぽつりと、小声で罪悪感を漏らしてしまう。すると、北川さんが強い口調でそれを遮った。


「そんなことはありません、天馬さん。男性保護庁の長官自らが不正を行っていたのです。遅かれ早かれ、あなたのような素晴らしい男性は目を付けられます。気に病む必要は一切ありません」


「そうですよ、天馬さんが大会に出場して輝いてなければ、私たちは天馬さんと出会うことだってできなかったんですから。気にしちゃダメです」


 そう愛里が言ってくれた。側にいた妻たちも、優しい笑顔で僕の言葉を否定してくれた。その温かさに、胸の奥が熱くなる。みんなの優しさに、心から感謝した。

ちなみに、ここには千代乃の姿はない。彼女は今、「蓮田みずき」と「立河理子」の罷免決議を取るため、国会議員たちへ「根回し」という名の、脅しに近い猛烈な圧力をかけに奔走してくれているそうだ。敵に回すと一番恐ろしい人が味方でいてくれて、本当に良かったと思う。


 やがと車列は新座駐屯地に到着した。

僕たちがここに一時宿泊することは、極秘中の極秘とされている。

表向きの理由は、「国防軍からの要請で、国防軍体育隊の陸上長距離選手の臨時コーチに短期間採用された」というもの。妻たちはそれに同行しているだけ、という建前で入場許可が降りていた。


 だが、敵の目を欺くための作戦はそれだけではない。


「これより、ダミー(身代わり)を作動させます」


 そう北川さんが言って現れたのは、情報省から派遣された女性工作員たちだった。

驚いたことに、彼女たちは僕や妻たち、蘭とよく似た体型で、完璧な変装を施されていた。サングラスをかけ、遠目から見れば僕たちそのものだ。


 彼女たちが僕たちの代わりに自宅や本来の移動先へと向かい、敵を撹乱する。僕のスマートフォンもそのダミーの女性が携行し、僕には全く別のクローズドなスマホが支給された。

これに伴い、妻たちの仕事はすべてリモートへと切り替えられ、大学に通う蘭も、リモートでの講義受講となった。


 この一件が片付くまで、僕たちはこの新座駐屯地から一歩も外に出ることはできない。

まさに「幽閉」だが、命の安全には代えられない。国防軍の駐屯地には、外部からの侵入が不可能な「証人保護」のための強固な施設と仕組みが確立されており、用意された個室も驚くほど快適だった。


「甲斐田さん、お騒がせしております」


 部屋に落ち着くと、情報共有役として一緒に駐屯地内で生活することになった牧野椿姫大尉と葵少尉の姉妹が挨拶にやってきた。


 普段は凛々しい国防軍の制服に身を包んでいる牧野椿姫大尉だが、僕の前に出た瞬間、あからさまに顔を紅潮させ、満面の笑みを浮かべた。いつも張り詰めている彼女の、そんな「素」の可愛らしい姿に戸惑いつつも、微笑ましくなって僕も笑顔で応える。


「牧野大尉、先日は……その、強引にしてしまって、すみませんでした」


 前回の非礼を謝罪すると、彼女は目を白黒させて動揺しながらも、もじもじと身をよじった。


「い、いえっ! 気に、気にしておりませんので、大丈夫です! ……むしろ、その、私としては、何度でも、その、していただいて構いません、ので……っ」


 赤面しながらのそんな直球なアピールに、こちらが照れてしまいそうになる。

その後、今後の情報共有のため、まだ事情を詳しく知らない蘭と、牧野姉妹の3人に対し、僕がこの世界の人間に非ず、「稀人」であるという事実を北川さんが開示した。


「マレビト……?」


 蘭は首を傾げ、いまいちピンと来ていないようだった。特に驚く様子もなかったのだが、隣にいたクリスから「元いた世界は逆転してるの、だから、ものすごく性欲が強くて絶倫なのよ」と耳打ちされると、途端にフシューッと鼻息を荒くして僕を見つめ始めた。別の意味でスイッチが入ってしまったらしい。


 一方、妹の牧野葵は「稀人」の存在を知っていたようで、じっと僕を見つめてきた。その熱を帯びた眼差しには、明らかな好意と、どこか艶っぽい色気が混ざり合っている。その素直な態度がとても愛らしい。

そして、姉の牧野椿姫大尉に至っては――完全にノックアウトされたような、とろけた表情をして、まっすぐに僕を凝視していた。


「……牧野大尉。公私の区別をつけなさい」


ズシッ、と鈍い音が響いた。

横にいた北川さんが、容赦なく牧野大尉の脇腹に肘鉄を食らわせたのだ。


「うぐっ……!?」


 結構な衝撃だったらしく、牧野大尉は一瞬苦痛に顔を歪めたものの、すぐに執念で満面の笑みに戻り、僕へと視線を送り続けた。


 不自由で、緊迫した状況だけれど、僕を命がけで守ろうとしてくれる。

愛すべき女性たちに囲まれた新座駐屯地での生活が、こうして幕を開けたのだった。


〜〜〜〜


6月20㈬――正午

 一方その頃、天馬たちが新座駐屯地へと身を寄せたのと時を同じくして、首相官邸の応接室は、凍りつくような沈黙に支配されていた。


「――それで? 蓮田と立河、両名の罷免決議はいつ開かれるのかしら?」


 豪奢な革張りのソファに深く腰掛け、優雅に足を組んでいるのは、天馬の第6夫人である千代乃だった。

鮮やかなグリーンのワンピースを完璧に着こなし、艶やかな銀髪を見にまとった姿は、どう見ても20代半ばの美女にしか見えない。だが、その正体は200年以上の時を生きる「やおびくに」種である。

彼女の背後に控える実娘であり秘書の里美は、70歳を過ぎ、見た目こそ若いが、母親より年上にみえてしまうことこそが、千代乃の異常性と底知れなさを物語っていた。


対面に座る現総理――45歳の若さで美貌を誇る女性――と、70代後半の副総理(女性)は、千代乃の視線から逃れるように、のらりくらりと視線を泳がせていた。


「千代乃さん、そう急かさないでいただきたい。政府としても事態は重く受け止めてますが、手続きというものがありまして……」


総理が美しい顔に営業用の笑みを張り付かせてかわそうとする。


「そうですよ。野党との調整や、党内の意見集約にも時間がかかる。拙速な動きはかえって政局を混乱させかねません」


副総理も老獪な口調で、煙に巻こうと言葉を重ねた。


 二人が及び腰な本当の理由⋯⋯それは自らの保身と、蓮田たちが握る「不都合な真実」への恐怖であることなど、千代乃はとっくに掴んでいる。これ以上、この凡俗たちの茶番に付き合うつもりはなかった。


 『パチン』――と、千代乃が細い指先を鳴らす。

その瞬間、応接室の空気が物理的に重くなったかのように、総理と副総理の呼吸が詰まった。


「のらりくらりと、よくそんな軽口が叩けるものね」


千代乃の声音から感情が消えた。


「お前たち与党議員全員の首根っこを、私がこの手で握っていることも知らずに」


「な、何をおっしゃるんですか……」


副総理が声を震わせる。


「法律の上限を超えた違法献金。企業の弱みを握っての汚職。そして――蓮田と昵懇じっこんの間柄にあり、男性保護庁の保護施設で、薬漬けにされた少年たちの買春を何度も行っていた議員が、お前たちの足元に数十名も転がってるわ。全員の名前も、日時も、証拠の映像も、すべてこちらのデータにあるけれど?」


総理の顔から血の気が引いていく。

千代乃は静かに身を乗り出した。その仕草一つで、二人の心臓が跳ね上がる。


「本当ならね、今回はすべて目をつむってあげる予定だったのよ。トカゲの尻尾切りで、蓮田と立河の二人だけを差し出せば、お前たちのささやかな権力ごっこは見逃してあげるつもりだった。……なのに、何かしらその態度は? 私を誰だと思ってるの?」


 千代乃の瞳⋯⋯美しい碧眼と赤い眼のオッドアイが、まるで“深淵”のようにくらにごる。見た目は20代の美女だが、その眼奥にあるのは、2世紀にわたり権力の裏側を支配してきた本物の「怪物の眼」だった。浴びせられる圧倒的なプレッシャーに、総理は蛇に睨まれた蛙のように指一本動かせず、副総理はガチガチと歯の根を鳴らし始めた。


「そんな風に逃げ回るなら、いいわ。与党議員全員、文字通り『全員』叩き潰してあげる。二度と社会復帰できないようにね」


千代乃は冷酷に宣告する。


「お前たちだけじゃない。与党議員の家族、親族、子供や孫に至るまで、その人生を根こそぎ破壊してあげる。路頭に迷い、世間から石を投げられ、泥水をすすって惨めに、野垂れじぬ末路を約束してあげるわ。……ああ、口先だけの脅しだと思っているのかしら? 里美、例の件は?」


後ろに控えていた里美が、静かにタブレットを操作した。


「はい。先ほど、与党の重鎮議員二名の決定的な汚職の証拠を、各マスコミにリークいたしました。明日の朝刊、そしてワイドショーは、地獄のような大騒ぎになります」


「ひっ……!?」


総理の口から情けない悲鳴が漏れた。


「これはほんの見せしめ。挨拶代わりの忠告よ」


千代乃は凍りつくような笑みを浮かべた。


「直ちにあの二人の罷免決議を取りなさい。さもなければ、連立与党を含めた400名が、その身内諸共、一人残らず社会的に抹殺する手筈は整ってるわ。すでに私は、野党を含めて次世代の議員候補400名を『確保』してるの。お前たちが消えても、国会は一ミリも困らないのよ」


 千代乃はそう言い放つと、ソファーから立ち上がり、傲然ごうぜんと二人を見下ろした。その姿は、人の皮を被った《《神魔》》のようだった。


「期限は二日。今からちょうど48時間後の22日の正午まで」


 一歩、千代乃が歩を進める。総理と副総理は、恐怖のあまりソファの背もたれに体を限界まで押し付けた。


「お前たちがこうして無駄な時間を引き延ばしている今この瞬間も、監禁されてる少年たちは、麻薬漬けにされ、見ず知らずの女たちに無理やり身体をむさぼられてるのよ!……お前たちに一秒たりとも、休んでる時間なんてないわ!」


 千代乃は二人の目の前まで歩み寄ると、壊れ物を覗き込むような、ゾッとするほど美しい笑顔を向けた。だが、その目は一切笑っていない。絶対的な死を告げる死神のそれだった。


「これから不眠不休の地獄が始まるでしょうね。でも、安心しなさい。お前たちの疲労や精神的苦痛なんて――今も暗闇で泣き叫んでる少年たちの痛みに比べれば、大したことはないわ」


恐怖で涙目を浮かべる総理の耳元で、千代乃は愛をささやくように、冷たくささやいた。


「これはお願いではないの――警告よ」


 それだけを言い残すと、千代乃は一度も振り返ることなく、里美を連れて応接室を退出した。


 残された総理と副総理は、しばらくの間、呼吸の仕方を忘れたかのように、ただガタガタと震え続けることしかできなかった。


――翌、6月21日㈭――

 朝一番の静寂を破ったのは、スマートフォンの執拗な通知音だった。


 ネットニュースのタイムラインが一色に染まる。千代乃の警告通り、それは突如として始まった。標的となったのは、与党に所属する二人の有力女性議員。

当初はネット上の暴露に過ぎなかった不祥事は、数時間もしないうちに津波となってテレビメディアや大手の新聞各社を呑み込んでいった。


 報道されたのは、法律の枠組みを遥かに超えた地元有力企業からの違法献金、そして地方の公共工事における悪質な不正落札の裏工作。親族の経営する企業に有利な案件が回るよう、二人が露骨な「口利き」を行っていた生々しい証拠が、音声データや内部文書という言い逃れのできない形で白日の下に晒されていた。


 唯一の救いは、最も致命的であるはずの「少年への不同意性交と買春」の件が伏せられていたことだった。それが何を意味するか、渦中の当事者たちが一番よく理解していた。


 首相官邸を訪れた件の二人の女性議員に、かつての傲慢な面影はなかった。

幽霊のように青ざめた顔で、震える手で差し出されたのは議員辞職願である。


 これ以上頑なに拒めば、次に暴かれるのは「少年への不同意性交と買春」の汚名だ。そうなれば、自分たちだけでなく親族全員が社会的に抹殺される――死刑宣告に等しい破滅が待っていると察した彼女たちの決断は、憐れなほどに早かった。


 その様子を、総理と副総理はただ凍りついた目で見つめていた。


(本当に、やってのけた……)


 背筋におぞましい悪寒が走る。

千代乃という怪物の恐ろしさは、単に不祥事を暴いたことではない。約400名に及ぶ与党の全議員の情報を完璧に掌握していながら、まずは「たった2名」だけを、しかも「致命傷(不同意性交と買春)の一歩手前」の罪状で正確に切り落としてみせたことだ。


 これはいつでも全員を、その身内諸共、一瞬で奈落の底へと突き落とせるという、静かで絶対的な脅迫に他ならなかった。


残された時間は、あと36時間もない。


 総理の胸に去来したのは、国家の行く末への懸念ではなく、ただ己の保身と、千代乃への底知れない恐怖だけだった。


 官邸はすぐさま蜂の巣をつついたような騒ぎとなった。マスコミへの緊急対応を終えた総理は、記者会見の壇上に立ち、カメラのフラッシュを浴びながら「政府主導による徹底的な不正腐敗撲滅」を毅然とした態度で宣言した。


 その舌の根の乾かぬうちに、水面下で燻っていた蓮田と立河の罷免決議案が国会へと提出される。


 昨日までの及び腰は嘘のように消え去り、議場を包んだのは「逆らえば次は自分が抹消される」という議員たちの怯えだった。採決の結果は、全会一致の賛成。異例のスピードで、二人の罷免が決議された。


 そして、その可決の瞬間を待っていたかのように、国家の巨大な機構が牙を剥く。

情報省、国防軍、警察庁、厚生労働省――これまで蓮田と立河らの権力⋯⋯不逮捕特権によって縛られていた四つの組織が、堰を切ったように、闇の深淵へ向けて秘密裏に一斉に全速力で動き始めた。


 いつもご愛読くださり、ありがとうございます。

次回の更新は月曜日とさせてください。

よろしければ、ブクマ登録と評価や感想をいただけますと、執筆の大きな励みになります!

引き続き、本作をよろしくお願いいたします。


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