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あべこべ世界でのランナー ~マラソン日本記録保持者が女性過多で貞操観念も逆転した世界線に転移し無双する~  作者: アサノ霞
第5章 新年度始動 編

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第38話 次のトレーニングへ向けて

4月18日㈬

 昨日、ヨッシーに相談した後、妻たちを自宅に呼び種付けのスケジュールについて話し合った。

 妻たちは、僕が種付けそのものを嫌がっているのではないかと心配していたようだが、僕にその気はなく、それを伝えると皆ほっとした様子を見せた。


 ただ――元の世界の倫理観を持つ僕としては、「種付け」という行為自体が、政府公認で浮気を認めているように感じられ、戸惑いが残るのも事実だ。


 しかし妻たちはむしろ、「無理はしないで」「できる範囲で、多くの女性に幸せを分けてあげて」と、僕の背中を押してくれた。


 その結果、最初の種付けは“知り合いの方がいいだろう”という結論に至り、「㈱ミナーヴァ」のシューズ開発責任者である「木村和子」さん(31歳) を最初の相手として、北川さんに連絡を入れ、お願いすることにした。


 日時は木村さんの都合――排卵日に合わせ、来週末で調整していただけることになった。


 その後も妻たちと相談を重ね、今年度の種付け候補100名の中から30名を選定し、その旨を北川さんに伝えた。


 僕が思ったよりも早く決断したからか、北川さんは少し驚いていたようで、電話越しの声がやや上ずっていたのは……気のせいではないだろう。


◆◆◆◆◆


 日課としている総合運動公園内での20km早朝ランを終え、朝食の準備と同時に、妻たち・北川さん・真由美さん(愛里の担当官)・護衛たちのお弁当を作り終える。


 奈月、朱里、愛理と朝食を済ませ、8時30分過ぎにお弁当を手渡し、マンションのエントランスで見送った。

 その後、護衛を伴って隣のマンションへ移動し、美月と彼女の護衛にもお弁当を手渡して見送る。


 毎日作るお弁当の数は、妻たち5人分、僕と愛理の護衛4人分、

4月いっぱいまでは他の妻たちの護衛分8人、さらに北川さんと真由美さんの分を含め、合計19人分にもなる。


 メニューを考えるだけでも大変だが、手渡した瞬間に見せてくれる皆の満面の笑顔を見ると、そんな苦労は一瞬で吹き飛んでしまう。

最近では愛理が率先して手伝ってくれるようになり、本当に助かっている。


 一通り家事を終えた後、僕は10時から15時までトレーニングに入る。


 今日のメニューは、護衛を伴い、昨日北川さんが選定してくれた河川敷のサイクリングコースでの3分/km設定ペースでの30km走だ。


 アップを兼ね、スタート地点までの約3kmを、ロードバイクに乗った護衛と並走しながら移動する。

僕はランニングTシャツに短パン、腰には給水ポーチ、念のためサングラスも着用した。初めて走るコースということもあり、“ヘソ出し”ユニフォームは控えている。


護衛たちは黒のバイクジャージにレーパン、同色のヘルメットとサングラス姿。腰のポーチの中には、おそらく拳銃が忍ばせてあるのだろう。


 普段は黒系の服装が多い彼女たちだが、バイクジャージ姿は新鮮で、体のラインがはっきり分かる分、妙に色気があった。


 河川敷に到着し、スタート地点として設定された橋の下で一息入れる。次の橋までの5km区間が設定コースで、これを三往復する。


 この河川敷はその先も信号や車両の往来がなく、止まらずに走り続けられる理想的な環境だ。

コース上には、まばらにジョギングや散歩をする人影がある。全員女性で、当然のように好奇の視線を向けられる。


深く息を整え、30km走をスタートした。


~~~~~


 久しぶりの30km走だったが、大きな失速もなく、設定ペースを維持して走り切ることができた。タイムは 1時間30分とまずまずだ。

ただ、久々ということもあり、走り終えた後に“30kmの壁”がやってきて、全身がずしりと重い。


 こればかりは走り込みで慣らすしかない。次は一週間後、35km走を入れよう。


 護衛たちは後方と横を中心に並走し、途中でいくつかフォーメーションを試していたようだが、最終的にはその形に落ち着いたようだった。


◆◆◆◆◆


 2人の護衛と共に昼食を済ませてから自宅で休息後、16時30分に東相大学へ移動し、ラグビー部のフィジカルトレーニングの指導に入る。


 勝田戦術担当コーチと“三人の天使”――男子マネージャーたちから、「持久力と回復力がかなり向上した」との報告を受け、今日から次の段階として瞬発力とパワー向上の指導を行うことにした。


 事前にウエイトトレーニングのメニューと動画を見せてもらったが、内容はボディビル寄りだった。基礎としては悪くないが、直線的な動きに偏っている。


 より実戦的なパワーと瞬発力を得るには、動きの中でのトレーニングが必要だ。

屋内練習場に集まった約100名の選手を前に、僕は説明を始める。


「今日は、瞬発力とパワーを向上させるトレーニングを行います。まず、皆さんのウエイトトレーニングを見させて頂きました。ベースとしては十分です。ただ……それだけでは、動きは限定的となってしまいます―――」


 僕は普段皆が行っているトレーニングでは、80%くらいしかパワーを発揮できないことと、100%のパワーを出し切ることの大切さと、0%から一気に100%の力を発揮させるためには何が大切かを力説する。


「このトレーニングのみでは、試合では80(%)くらいしかパワーが発揮でないと思います! 決して悪いのではなく、基礎トレーニングとしてはとても良いです。しかし、このトレーニングのみでは、止まってる者に対しては効果的ですが、動いてる者に対しては、余り効果が期待出来ないと思います。例えば、ボールを持って全力走する者に対して、タックルをしますよね? 相手は動いてます、こちらも動いてます。そんな中で追いついてから80%のパワーで相手を倒すのは至難の技かと思います。ラグビーは常に動いてます。動きの中で最大のパワーを発揮できれば、これほど効率の良いものはないと僕は思いました。あくまでも素人目線ですので、専門的なことはご容赦下さい」


長々と僕は思ったことを言い述べる。監督と選手らは、ざわつき、とても驚く。僕は更に説明を続ける。


「例えば足が0.1秒速くなれば、それだけで大分違うと思いますし、相手のフェイントといった素早い動きに対して、追っていけたり、全力走の相手を確実に倒せれば、これほど良い事はないと思います。そこで、僕が思ったのは、素早い動きの中で100%のパワーを発揮できれば、あらゆる動きに対処できるのではないかと考えました。テーマとしては“最大の瞬発力とパワー”です」


僕の話しを聞いていた皆が更に目を見開き、驚きと共に、食い入るように説明を聞く。


「トレーニングメニューは多くあるのですが、最終的にはハイクリーンを目標とします。只、これはとても技術が必要で、中途半端なフォームでやると、ケガをしますし効果も半減します。そこで、本日は基礎固めとして、“スプリント式ランジウォーク”と“ボックススクワット”を実施します」


 先ず、僕は40㎏(20㎏×2)のウエイトのバーベルで“ハイクリーン”を実践して見せた。

ここにいる皆は、驚きと共に、僕の素早い動きに見とれている。


 次に、10㎏(5㎏×2)のウエイトのバーベルで、“スプリント式ランジウォーク”と同じウエイトにて、“ボックススクワット”を一つひとつ丁寧に説明しながら実践してみせた。

 僕の説明と実践を見せると、監督を含め選手らも驚いた表情を見せ、実演を食い入る様に見ていた。

 

 この二つのトレーニングを丁寧に説明後、10グループに分けて選手(部員)らに実践させた。

選手たちは今までにない刺激に驚きながらも、真剣に取り組んでいた。

僕は見回りながら熱心に指導をした。


 それを見ていた義弟の福原優くんが、目を輝かせる。


「天馬兄さん、すごいですね! めちゃくちゃ効果ありそうです!」


 その純粋な眼差しに、思わず赤面してしまい、苦笑いで返すのが精いっぱいだった。

 

 一方、腕を組んで練習を眺めていた鶴田監督と若山ヘッドコーチは、不機嫌そうな表情で小声のやり取りを交わしていた。


「ふんっ!……若山、どう思う? こんなので効果あるのかねぇ」


「さあ……どうでしょうねぇ。理事長から“アレ”の指導には口出しするなって言われてますし、好きにやらせればいいんじゃないですか」


若山さんは僕の方をあごで指す仕草をする。


それを見ていた鶴田愛斗つるたまなと君が、ついにたまりかねたように眉間に皺を寄せ、監督の元へ歩み寄った。


「あのさ~、そういうのやめてくれない! 感じ悪いよ! 今度言ったら……嫌いになるかも? もうお弁当作るのやめようかな!」


その一言で鶴田監督の表情は一瞬で凍りついた。


「ち、違うのよ! これは、その……ほら、独り言! そう、独り言!

さっき若山と一緒に西北大の練習動画を見てただけで……ね、若山!」


突然話を振られた若山さんは、明らかに動揺しながら頷く。


「えっ!……あ、は、はい!そうです」


愛斗まなと君はそんな二人をジト目で見つめたまま短く言った。


「今は練習中なんだからさ~、ちゃんと見てあげて」


「……はい」


鶴田監督はすっかり意気消沈した様子で、素直に頭を下げる。


 相変わらず、鶴田監督は愛斗君にはまったく頭が上がらない。その様子に内心助けられた僕は、愛斗君に向かって小さくサムズアップを送った。彼もまた、気づいたように軽く頷き返してくれる。


 こうして今日も、無事にラグビー部のフィジカル指導は終了し、張りつめていた空気が解け、ようやく一息つく


~~~~~


 ラグビー部の練習が完全に終わる頃、僕の背後から快活な声がかかった。


「お疲れさま、義兄にいさん!」


振り向くと、そこにはラグビー部キャプテンであり、クリスの妹――義妹の大舘リリカが立っていた。


「今日のメニュー、かなり効きました! あたし、後半は脚ガクガクだったんだけど」


「それは順調ってことだよ。体力が落ちてるんじゃなくて、使ったことのない領域を刺激してるだけだから」


そう答えると、リリカは少し意外そうに目を瞬かせた。


「へぇ~、今までの“気合と根性”とは、ぜんぜん違う考え方なんだね」


僕はゆっくりと頷く。


「うん。だから最初は不安になる。でも、ちゃんと積み上げれば、必ず次の段階に行ける」


リリカは一瞬考え込むように視線を落とし、それからニッと笑った。


「キャプテンとして、部員たちにもちゃんと伝えるよ」


その言葉に、胸の奥が少しだけ温かくなる。


「ありがとう。無理だけはさせないで」


「それ、こっちの台詞。義兄にいさんこそ、無理しすぎないでよ? いろいろ背負いすぎなんだから」


鋭いところを突かれ、僕は苦笑するしかなかった。

リリカはそれ以上は踏み込まず、軽く手を振って部員たちの方へ戻っていった。彼女なりの距離感で気遣ってくれたのだと分かる。


――その直後だった。


ポケットの中で、スマホが震えた。表示された名前は「北川」さんからだ。


「はい、天馬です」


『お疲れさまです、天馬さん。一点、ご報告がありまして』


北川さんの声は、いつもより少し明るかった。


『先日の件ですが……木村さんとの“種付け”の日程が、今週末に決まりました』


「そうですか」


思わず息を整える。


『木村さんは、年齢的なこともあり、今回は本当に嬉しかったようで……ご連絡を差し上げた瞬間、言葉を失われてました』


北川さんは一拍置いて、続けた。


『その後はもう、驚喜といいますか……“本当に私でいいんですか”と、何度も確認されておりました』


僕は抑揚に応える。


「そうですか!」


『天馬さん。改めてになりますが、当日は体調最優先でお願いします。詳細は後ほどご連絡致します』


「分かりました。よろしくお願いします」


通話を終えスマホを下ろす。


夕暮れのグラウンドでは、部員たちの笑い声がまだ響いていた。

走り、支え、導き、そして――求められる。


僕は静かに息を吐き、再び前を向いた。


背負うものは増えていく。だが、それから目を逸らすつもりは、もうなかった。



【お知らせとお詫び】

 いつもご愛読いただき、誠にありがとうございます。

誠に勝手ながら、土日は所用のため更新をお休みさせていただきます。

楽しみにしてくださっている皆様には、ご不便をおかけし申し訳ございません。

次回の投稿は月曜日を予定しております。

引き続き、よろしくお願いいたします。

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