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王子様になりたい私、勇者候補になりました?!2〜全ての虐待児に捧げる幸せな話〜  作者: ユメミ


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4 坩堝学園の王子様 神話の人間宣言


  私はこの世界に王子様がいることを知った。

この幽玄異郷には王族はいない。

貴族はいるけど王とは血筋ではないからだ。

だから王子様もお姫様ま御伽噺の中にしかいない。


彼女が何故《勇者候補》でもなく《学園長の娘》でもなく、《お嫁さん候補》でもないのか。わかった気がした。


まるで彼女は弱いものを《お姫様》のように扱うのだ。

その時の慈しむような蕩けるような瞳と所作や声がけは間近で浴びないと分からない些細な光だ。

でも浴びてしまったら最後もう抗えない光だった。

まるで太陽の光のような人だ。


私は結構ドライな性格だ。

そこら辺、過度に美化したりしない。

親友ほど《神格化フィルター》は働かない。

冷静だ。


佐藤 りんは一見すると気弱な綺麗なだけの物腰の柔らかい少女だ。

周りの雷クラスの面々のほうが容姿は綺羅びやかだし派手で圧もある。強者の圧が。

彼女にはないのだ。

《普通の現し世人類》。

珍しいだけ。希少なだけ。

そもそも現し世人類がこちらの世界に来るには数々の条件があるらしい。

それらをクリアしたなら普通ではないのかもしれないけど。

私の認識はその程度だ。親友には言わないけど。

でも。


今日何故親友が彼女を崇めるのか一端は目撃した気がした。


でも何故彼女は見つけ出せるのか(・・・・・・・・)

親友の私すら分からなかった体調不良のほっちゃんを。


寝不足とは聞いていた。

朝ごはんは食べたとは聞いたのにそれが嘘とは気付かなかった。

考えればわかったはずなのに。

一晩中《魔導道具》に魔素を注ぎ込む修行をしているとは聞いていた。

あの頑張ると猪突猛進のあの子の《一晩中》は文字通りだと早く気づくべきだった。


ーーーあ………。これは嫉妬だ。駄目な感情だ。


呆れながらも輝くほっちゃんの一番は私だと自惚れていたのだ。

結局頼るのは私だしいつも一緒なのは私だ。

それなのに。

私はほっちゃんの隣にいる生徒のはずなのに。

隣にいるのに彼女に認められないと見ることも助けることも出来ない存在だ。



「桃ちゃん!!奉子ちゃんについててあげて!!

仲良しさんが一緒なら心強いから!!

授業公休申請許可とったから!!


あなたも顔色悪い。休みながら無理しないで救護室にいてね!!はい!飴ちゃん!!」


「は………はい」


 王子様はいた。

武力もなしにお姫様を助けられる人を王子様と呼ばずになんと呼ぶのか。


姿形はこの幽玄異郷では平凡よりだ。

美しい金髪でも青い瞳でもない。

美しい羽根があるわけでも象牙のような角もない。


美しいことなんか風景なこの幽玄異郷では埋もれる人のはずだ。

なのに。


彼女が動くと空気が輝いた。

私の宝物を大事に扱ってくれる人をどうして見下せるだろうか。


「やば。射抜かれたわ………ほっちゃんの気持ちがやっとわかるわ」



 忙しそうに働く初老のおばあちゃんとお孫さんの巨大の白衣眼鏡がほっちゃんの容体を診てくれているのをぼんやり眺めながら。

桃は角に結んだ虹色のリボンを撫でた。

ほっちゃんからの貢物。

友情の証。

《虹色の聖女様非公式グッズ》のリボンだ。

勿論ほっちゃん手作りである。



「………アルバム作戦手伝ってやろ。

その前にお説教だな」


このあとほっちゃんは、親からもお説教を受けて衝撃の事実を知った。

学園で両親はりん様と面談をしたらしいと。

ほっちゃんの特殊体質対策として《視認ゴーグル》の救護班常備の規約を発令したから《視認ゴーグル発注》の許可を彼女の一族に求めたのだ。


《視認ゴーグル》。

幽霊族を治療する時に必要な医療器具だ。

幽霊族は体調不良を起こすと《存在が理から揺らぐ》。

高度な医療機関には勿論あるものだけど学園にまで備えることはまずない。

だってそれは世間に出回ったら《悪用》される道具だ。

ただの便利アイテムとは違うのだ。

幽霊族は《プライバシー》をことさら大切にする種族だ。

だから本来《門外不出》だ。

治療を受ける際も身内が持参するもの。


だから他者が幽霊族を助けないことは当たり前なのだ。

幽霊族は倒れているのをパトロール中の教諭が発見なんて笑い話になるほどだ。背中に無数の靴跡があることなどざらだ。それが普通。

なのに。


「見えないことと痛いことは違いますよ。

声を出せない事態に備えましょう。

私はどの生徒にも安全で過ごしやすい学園を作りたい学園長の意思を受け継いでます。


細かい所気になります!!

それに私も《視える》側です!!

間に合わない時は私が彼女達を見つけます!!」


他種族。

しかも本来なら《天敵》現し世人類の少女との対面だ。

面談は殺伐とすることが予想された。

現に生徒会長の背後には険しい顔の教諭が全責任は私にありますと言った面持ちで佇んでいたらしい。


でも。


「最早プロポーズでは?」

「最早………婿入り宣言と見た」

「あの熱量を多方面に………?王の器だな………。

姉さん。報われない人好きになったね。あれは好きになったら沼る人だ」



「「「うちの奉子を末永くよろしくお願いいたします」」」


「はい!!」


こうして。

奉子がどんなに一信者を気取ろうが。

外堀は固められていた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 「やっちまったあ………」

「ちまったな」

「やっちゃったね〜。寝不足は私もやるよ。気持ちはわかる」



養護室で項垂れる私。

なんて情けないことか。

りん様の《役に立ちたい》と一念発起したことがりん様の迷惑に繋がるとは本末転倒だ。


「りん様への気持ちがから回るなんて………」

「ほっちゃんは昔からそうだよ」

「奉子ちゃん夢中になると周り見えないタイプ?私も私も」


まだ回復してない気がした。

頭は冴え渡るのにりん様の幻聴がする。


「ああ………。あの《燦燦サングラス(さんさんサングラス)》はわが一族の秘儀。

己の魔素をただのサングラスに注ぎ込むことで《カリスマが溢れるほどそれらを増幅させ吸収、存在を薄くする》効果がある便利グッズ………。


生徒達に囲まれがちのりん様にピッタリのプレゼントだったのにッ………渡すことも叶わないなんて………」


「なにそれ。便利。確かに私ら凡人には無理だわ。使いこなすの。

後光で神様の顔見れない原理か」


「え?そんな凄いプレゼントなの?

もう貰っちゃったのに使えてるのかな??

カリスマ………私。

周りに恵まれてるだけのモブの中のモブ。

凡人の中の凡人。

キングオブ凡なのにな………」


「あはは!!

キングオブつけたら凡人じゃない………王様………面白い」

「「え」」

「あ。気付いた?」


声がしたのに気付かなかった。

ニッコリ笑ったりん様は私が贈った覚えのない《燦燦サングラス》を少しずらした。

その仕草も可憐だった。

途端に虹色の瞳の煌めきが一瞬視界を覆った。

溢れたのだ。りん様のカリスマが。

それはそれは神々しい虹色の光だった。


「いい………いいい?いつから?」


私はパニックだ。

寝起き。

駄弁った口調。

全部見られた。聞かれた。


「うわ。びっくりした。

なんか隣から甘い匂いするな………って思ったら」


桃ちゃんも隣をみて口をあんぐりだ。

私は白いベットの上。

桃ちゃんはその傍らの椅子。

その隣に小さな椅子はあるのは見えていた。

視えていたのに視線は滑ったのだ。

声はするのにまだ視認出来ない。


「桃ちゃんも顔色よくなったね。

よかったあ………。奉子ちゃんが顔色悪いの無線で聞いてはいたから探してはいたの。

イーテディ先輩がね。連絡くれてね?

《視認不可生徒、化粧で体調不良誤魔化しの疑惑あり》って。

遅れてごめんね?」


「わ………りん様。私の体調まで?神やわ」

「ええ〜?友達の変化は分かるよ〜 」

「と………友達?」

「え?話して飴ちゃん受け取ったら友達だよね?」

「ハードル低ッ………いや。選別しましょう?」

「え〜?ここの子みんないい子だもん〜?大丈夫大丈夫」



桃ちゃんとりん様が会話をしている。

バレていた。

今度から化粧では誤魔化せない。

私は頭を抱えた。


「これ澪ちゃんがね?奉子ちゃんのポッケから見つけてね?

あ。琥珀が教えてくれたの。

危険物じゃないけど、りん宛のプレゼント隠し持ってるよって。

宛名が私だったから頂いたの。


素敵な手紙付きだからプレゼントだよね?

勝手に開けちゃった。中身の最低限の確認のためにお母様が検査したから包装紙取ったの。ごめんね?」


「受け取っ………てくれたのですか」

「だって。《打算》も《悪意》もない匂いに《親愛》の友達の匂いだよ?

私。鼻がいいの。

《仲良くなりたい〜》って匂いは敏感だし。

《辛い〜助けて〜》って匂いも敏感」


「「わお」」


驚愕の事実。

メモが欲しい。

《りん様は人の感情を鼻で感じる特殊体質である》と。



「奉子ちゃん。お話があります」


ピシリ。

空気が冷えた。



「プレゼントありがと。

凄い凄い気持ちが入ってるし物質的には価値がないのは聞いたよ。奉子ちゃんからしたら《ちょっとしたプレゼント》かもしれない。

だけどね?

《命削るほど摩耗させた研鑽の先の魔道具作り》は駄目だよ。お母様が言ってたの。一生徒が作る物じゃないって。

褒めてもいたよ?

凄いことだって。

でもね。

好きで命は削らないで。

奉子ちゃんは今《低魔素症候群》なの。

ただの寝不足じゃないの。

|好きに命はかけちゃ駄目。《・・・・・・・・・・・・》だからね」


桃ちゃんの視線が突き刺さる。

あれは「とうとうこいつ。命削って推し活する領域に入りやがった………」って顔だ。

はい。ごめんなさい。


「これ………。うけとれないや。

気持ちだけ。気持ちだけ貰う。


今度は奉子ちゃんが笑顔で渡してくれるかな?

今度は魔素不足が出ないように頑張れるかな?


雷クラスは奉子ちゃんが澪ちゃんと私の友達なの知ってるし。

私も今度奉子ちゃんとランチ食べたりクッキー交換したりしたいの。

ね?私を普通の友達にして?


大事に思ってくれるのは嬉しいけど。

私も奉子ちゃんも大事なこと忘れないで?ね?

ただの友達はお互いに削らないの」


「ひ………?」


神話が《人間宣言》しただと?!


「解釈………すり合わせ………を求む………」


「「うわ!?」」


私はまた推しの過剰摂取で意識を手放した。


私はモブ。下々の民だ。

神は地上に降り立つと《権現(ごんげん)》したという。

自覚のない神話は下々のために簡単に神格化を手放してしまう。


その原因が自分。

それは罪深すぎやしないか?!


「リハビリが必要ですよ。りん様」

「普通の友達………難しいの?」

「ほっちゃんにとってそれは信仰の揺らぎなのですよ。徐々に距離をつめてください」

「臆病な猫ちゃんかあ………頑張る」

「りん様が頑張るとほっちゃんが死ぬんで適当で。

寧ろ加減をお願いします」

「頑張るのだめなの?!」


奉子。14歳。

推しの押せ押せクッキー攻撃に屈すまで後3日である。

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