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赤木の森の下影に  作者: 一人雅伸
吾が学び舎と共に
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 <全国道徳教育実験学校 その2>

 <全国道徳教育実験学校 その2>



問題点を話し合う・板書・・・『自分ならどうする』


 司会者を立てて、皆の意見や考えを発表しあいました。7・8人が前に出て、自動販売機の前に立ちます。司会者がボール紙で作った大きな100円玉を渡し、意見や考えを言ってもらいます。100円玉を渡された児童が次々と発表していきます。


『暑くて眼が回りそうなのでしょう。だから、どうしてもという時なのだから、自動販売機でジュースを買って飲んでもいいと思います。』

『いくら暑くても、自分の事だから我慢しなければいけないと思います。』

 この二つの意見にまとめられそうでした。


 そこに、M子が手を上げ、100円玉を持って自動販売機の前に立ちます。

『私、どっちでもいいと思います。その場になったらどうするか、今は分かりません。』

と言うM子の眼からは、ごく自然に涙が流れていました。


『どちらか分からない。』という意見が加わり、3つの考えにまとまりました。


 ここで私の出番です。3つの意見を板書し、皆に問いかけます。


『さぁ、このような事が起こったとき、みんなならどうしますか?』


『僕は、ジュースを買って飲んで、お母さんに訳を話して謝ります。』

『僕は、我慢して、お母さんに約束を守ったよと言って、100円玉を返します。』

『私は、ジュースを飲みたかったけど我慢したから、この100円玉を頂戴、と言います。』

などなど、意見や考えが出てきます。


1.自分の考えを作文にまとめる

『自分ならどうする』という課題で、自分の考えや意見を作文にまとめさせる。その作文を2~3人に発表させて授業は終了しました。


2.研究授業についての研究会

 授業終了後、子供達を下校させて、各教室で研究授業を中心に研究会を開きます。授業についての感想や意見についての発表の場です。私の授業が評価されるのです。


3.参加者の感想・意見

・ 授業の中に話し合いを取り入れるのは良いが、先生のまとめや指導が弱い。道徳教育なのだから、子どもの話し合いだけでは道徳心が身に付かないのではないだろうか。先生がシッカリ道徳を教えるべきである。

・ 子どもの発言力は素晴らしい。相当指導されている様子が伺える。

・ 先生は座っていて、児童に直接指導していない。もっと道徳を教えるべきではないか。

・ 子どもの考えを伸ばす授業ならよいが、道徳の時間である。子どもの考えばかりを重視しないで、道徳の指導をする必要があると思う。

・ 道徳指導の時間に、子どもの意見を発表させるだけにとどまり、指導になっていない。もっと強く道徳を教え、母親との約束を守らせるように指導すべきである。

 等など、多くの意見が出てきました。


 午後には、この3年間の実験学校での研究、経過報告をしなければなりません。この状態では、これまでの3年間の本校の研究は理解してもらえないのではないか、という不安が高まってきました。


 その時、年配の女性教師が手を上げ、発言したのです。


『私は金沢からやって来た田舎教師です。こんな遠くは初めてで、私も道徳教育はよく分かりませんので、勉強したいと思って参りました。私は一泊するつもりで荷物を沢山持ってきたのですが、玄関で戸惑っていると、一人の女の子が

 「控え室はこちらです。お荷物をお持ちしましょう。」

といって控え室に案内してくれました。

 そして入った教室にその女の子がいて、先程、授業で涙を流していたのでびっくりしました。さらに、先生を見て又びっくりです。

 「僕は喋らないから、お前達でしっかり議論して考えを深めなさい」

と言って、びくとも動かないのですから。』


『十分に意見が述べ合えるように、話し合えるように、司会進行を子ども任せ、授業を進めています。子どもの話合いを通して道徳性を高めさせようとする、先生の意図がよく解る授業でした。

 そして、ここは農村地帯です。ここで、これだけの発言力、発表力を育てるのは相当の苦労が偲ばれます。

 その上、女の子が

「どっちにしていいか分からない」

と言って涙まで流す感性の深さ、感受性の強さに感動しました。

 その女の子は、困っていた私に、自然と荷物を持って控え室に案内してくれる道徳性の生活化が滲み出ているのです。

 私は、これが本当の道徳教育だと感激しました。』


 今まで萎みかけていた私の心は、ぱっと開きました。


 改めてその、おばさん(失礼!)先生の柔和なご尊顔を拝し、心の中で叫びました。


『道徳の神様が、金沢から飛んで来たのだ。』


 午後には、これまでの3年間の五口小学校での研究の成果を発表します。その勇気や希望が泉のように湧いてきました。ここに、当校の、私の道徳教育の理解者(神様)がいるのだと、千万の味方を得たような気持ちになったのです。


 その後、会場の雰囲気が変わりました。

 指導主事のアドバイスもあり、

『道徳教育のみに拘らず、全ての教科指導法の根本が、子ども自身の発言・発表等による話し合い・討論によって、一人一人の道徳的思考力や感性を深め、人格形成に係わっていくのであるから、どの教科も、その内容を習得させるための手法は、子どもの言語活動を主体とした授業を進める事が大切です。だから、どのように子供の言語力・発表力を高めていくかが今後の課題でしょう。』

ということになりました。


 午後、五口小学校・五口中学校での実験学校の経過報告と研究発表会を行いました。内容の概略は次のようなことです。

 1.五口小学校と五口中学校の実験学校の概略

 2.その研究について

 3.その評価について

詳細は忘れました。

 道徳性を高めるための指導として、

 ① 道徳の資料を中心に道徳性を培う

 ② 教え込むのではなく、言論活動を通して道徳性を高め、生活化を図る。

 これらのことの理論と実践化を、スライドや視聴覚教材を使って発表しました。


 体育館一杯の参加者の前で発表できたことは、緊張やプレッシャーもありましたが、誇りに思えることでもあります。



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