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赤木の森の下影に  作者: 一人雅伸
吾が学び舎と共に
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 <ソフトクラブ後援会>

<ソフトクラブ後援会>


 五口ごくち地区は、稲榎市の南西部に位置する農業の盛んな地域です。水田はもちろん、梨や桃などの果実栽培が盛んで、子供達の家庭も農家が多いのが特徴です。

 地区の南は渡瀬川で隣の県に接し、西は小高い山を挟んで隣の市に接しています。市街地とも水田や果樹園に阻まれている、稲榎市でも独自の雰囲気を持った地域と言えるかもしれません。

 その五口ごくち地区にある学校が、五口ごくち小学校、五口ごくち中学校です。他地区との児童・生徒の通学エリアが限定されている形になるため、後に『実験学校』に指定されるのですが、赴任して最初に受けた印象は、『田舎の純朴な子供達』という感じです。


 受け持ちのクラスは、5年生でした。

 1学年1クラス、30人位でしたが、男子は全員『少年野球クラブ』に入っていて、放課後や土・日曜日には、野球の練習や対抗試合があり、放課後の学級の仕事や指導は出来ませんでした。それで私は、女子児童を相手に、指導や仕事をしていたのですが、ある女の先生から忠告を受けてしまったのです。


一人ひとり先生よ。M先生を見なさいよ。あんなに熱心に野球の指導をしてるじゃないですか。あんたね、タバコばっかり吸って、何もしないで。クラスの女の子達は、皆、野球の練習を羨ましそうに見てるでしょう?』


『成程。』

と思いました。


 しかし、私は、歌と運動神経がすこぶる鈍く、今でも宴会などで苦労している有様です。内心、困ったなぁと思いながらも、女子児童と遊ぶ位なら出来るだろうと思い、女子達に訊いてみました。


『ソフトボールをやるかい?』


『やりたい、やる、やる。』


と言うので、早速、土曜日に、家にあるグローブやバットを持って来るように言いつけます。


 10人位の内、持ってきたのは2~3人で、しかも、野球用の道具だけです。学校の用具は、古いボールとグローブが2~3個でした。

『これは遊びだからね。他のソフトボールチームのように、ユニホームを着て試合などはしないからね。絶対に、親にグローブなどは強請ねだっちゃいけないよ。』

と言いつけ、私は家で、新聞紙を丸めてガムテープで固めた『ボール』を100個くらい作り、ソフトボール遊びに興じたのです。


 1ヶ月くらい経つと、保護者の一人『福地さん』が校庭の隅でタバコを吸いながら、私と女子達の『ソフトボール遊び』を見物するようになりました。それから毎回見物に訪れるようになり、さらに1ヶ月も経った頃、休憩時間に私のところにやって来ました。


一人ひとり先生、先生の(野球チームと、職員や地域の人達との関係、対応等の)複雑な気持ちは分かるけど、これじゃぁ、子供も親もすっきりしないよ。後の事は俺たち父兄に任せて、先生は子供と遊んでいてくれればいいから、女子ソフトクラブを作ると宣言してくださいよ。』


『いや、それは本当にありがたい事だけれど、父兄の皆様や学校に負担と迷惑を掛けたくないから、このままにしていただけませんか?』


『先生や学校には絶対に迷惑を掛けないように、我々も上手くやりますから。任せてください、後援会の準備も進んでいます。先生の気持ちは、皆良く理解していますから、無理をしない程度に後援会を作れば、多くの父兄が協力してくれますよ。』


 私の考え、思いは、すっかり父兄に通じていたのです。


 その頃から、新しいグローブを持つ子も増えてきていました。子供が強請ったわけではなく、親が進んで買ってくれたそうです。ソフトボール用のボールやバットも後援会から届き、監督まで決まりました。


 私は子供を見守り、監督の補助をして、子供達と遊ぶ立場で居る事が出来るようになりました。


 ただ『野良着ユニホーム』を主張し、チームのユニホームだけは作らせませんでした。



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