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赤木の森の下影に  作者: 一人雅伸
天に届け木犀の香
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 <ドッヂボール大会>

 <ドッヂボール大会>


 ある年、市の教育委員会から

『御加茂山西部の広場で、市内の各学校の子供達全員に、スポーツに関連した行事を持つように』

といった通達が有ったようで、職員会議で相談しました。


 大月小学校では学年毎の『ドッヂボール大会』を行うことに決まり、私の学年も、体育の時間を4時間充てて4学級対抗のリーグ戦に決まりました。


 会場に着いてみると、あの、広々とした緑の麦畑や、くねくねとした迷い道は荒地となり、ただ、広々とした平坦な土地、という感じでした。といっても、整地や区画がされている訳ではなく、全体的に「広大な工事中の敷地」という印象を受けます。

 碁盤の目のように赤土が掘り起こされ、その頃は珍しいブルドーザーやダンプカーが敷地の隅に並んでいます。開発工事が始まるのかと思いましたが、あの、美しかった御加茂の山を支えた緑のじゅうたんは跡形も無く、見る影もありません。何か異様な感じがしました。


 やや平らな場所を選んで、石灰を使ってその場でコートを二面作ります。

 何事も手作り、即興です。


 子供達には、広大な荒地の中で、笛が鳴るまで第一次自由行動をさせました。


 自動車も通らなければ、人もいません。お店も無ければ椅子やベンチもありません。ただ、学校のグランドの何倍もある広々とした荒地の中で、子ども達は飛んだり跳ねたり、駆けずり回って遊んでいます。誰も咎める人もいないし、制約もありません。子ども達は、こういう自由な環境が大好きなのでしょう。集合を知らせる笛の鳴るまで、汗をかきながら元気に走り回る子供達の姿が、私には眩しくも見えました。


 即席のコート二面が出来上がり、子供達を集めると、すぐにリーグ戦が始まりました。校庭のように整備されていないので、多少のデコボコや小石や土の塊に悩まされましたが、子供達には全く気にならないようで、広々とした原っぱでのドッヂボールを存分に楽しみ、駆け回り、大喜びだったようです。


 4クラスのリーグ戦を2面で行うので、休む間はありません。この大荒地に、子供達の応援や歓声が天高く響き渡ります。子供達も真剣に戦い、3回戦目が終わる頃には、流石の子供達にも、疲れが見え始めました。


 成績が発表されて、大会は終わりました。


 学校に帰るまでの間、第二次自由時間です。


 あれほど疲れたように見えた子供達が、急に蘇ったように元気になり、広い荒地の果てにと走り去って行きます。子供達には、こういう環境になると、体力が次から次へと湧き出てくるのかもしれません。このようなドッヂボール大会、というか、体育のイベントは、後にも先にも見たことも聞いたこともありません。


 全く『市の教育委員会』も、思い切った事を思いつき、実行したものです。


 今でも工業団地や東産業道路を通る度に、ここが、元は一面の麦畑が広がる緑の大平原で、開発されて広大な敷地(荒地)となって、子供達が駆け回り、ドッヂボール大会をやった場所だと思い出されますが、他の人には想像もつかないことでしょう。

 でも、私の脳裏には、あの時の元気な子供達が走り回る姿が思い出され、その時の歓声が聞こえるようです。


 その後、工事が進み、現在の東産業道路と工業団地の基礎が出来あがります。


 稲榎市が、現在の工業化へと進み始めた頃でした。



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