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赤木の森の下影に  作者: 一人雅伸
赤木の森の下影に
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 <倉沢山キャンプ>

 <倉沢くらさわ山キャンプ>


 夏休みが近づくと、学校中が急に騒がしくなって来ました。倉沢山くらさわやまキャンプが始まるからです。

 キャンプは、その頃はレジャーとして騒がれ始めましたが、まだ一般に普及される程ではありませんでした。キャンプ用品を集めるだけでも大変な経費がかかります。それを学校行事として、しかも、倉沢山でテントを張って行うのですから、私もビックリしたものです。


 準備が始まると、さらに驚かされました。テントは古い日除けテントの裾が地面に着くように支柱の長さを決めて作ります。支柱は青竹を使うのです。これで20人程が入れる大テントの出来上がり。それを幾つも作るのです。


 倉沢山には、戦前から青年道場のような建物があり、畳の宿泊所や炊飯用具等も全部揃っていました。テントを張る場所は、青年道場の東へ小さな谷を越えた所にある広場です。当時『姫御殿跡』と呼ばれていましたが、昔、倉沢城が有った頃、城主のお姫様が住んでいたかどうかは不明です。後に、県立の『青年の家』が建てられています。その北には『鳩が峰キャンプ場』があり、この二ヶ所に分かれて5年生の150人の児童が、一泊二日のキャンプを行います。


 山に着くと、児童たちはグループに分かれて、あちこちでお弁当を広げて昼食を摂ります。子供達にはお弁当の時間だけでも大騒ぎでしたが、次のハイキングの時間も子供達の歓声が木霊しました。


 子供たちは、5・6人のグループを作り班毎にコースの略図を手にして、順次、ハイキングに出発します。途中に『仙人』が子供達を待ちうけており、問題を出します。答えられないと先に行けません。


1. この山に生えている草の名前を5つ挙げなさい。

2. 皆で歌を1曲歌いなさい。

3. この山の神様の名前を答えなさい。

 等、他愛もない問題ですが、子供達は皆で相談しながら、大変面白がってハイキングを楽しみました。

 なにしろ、その当時の教育は「押し付け教育」が中心で、子供に考えさせたり、発言させたりする事自体が珍しかったのです。


 また、夕食の『飯盒炊飯』が大騒ぎだったのは言うまでもありません。ジャガイモや人参の皮むきに大騒ぎし、カレーの匂いが漂えば大声を上げ、飯盒のご飯が炊ければまた騒ぎ出す、といった感じです。子供達は、何事にも『わぁー、わぁー』と声を上げ、皆ではしゃぎながらワイワイと楽しんでいます。それだけ感情が豊かで激しいのかもしれませんが、好奇心と感情の高ぶりが、声や表情、行動全部に出ているようです。


 夕食の後は、恒例のキャンプファイヤー。森の中で、赤々と燃える焚き火の光に照らされ、歌やゲームをする皆の顔も赤く燃えるように感じられ、周囲の様子と比較しても、幻想的で楽しい時間でした。


 キャンプファイヤーが終わっても、子供達の興奮は冷めやらず、テントに入ったものの寝付かれない子供達があちらのテント、こちらのテントでおしゃべりを始めます。先生たちは総出でテントを巡回し、子供達を寝かしつけるだけで一苦労、へとへとになってしまいます。


 爽やかな山の朝、子供達は朝食の支度で大わらわです。朝食を作るのも、食べるのも賑やかに、片付けの時間までが楽しくて仕方がないようでした。

 分担して調理器具を全て洗い、片付け、テントをたたみ、各々の荷物を纏めて全員が集まったのは午前の9時頃だったでしょうか。そうして、木尚小学校の5年生は、倉沢キャンプを無事故で全員の笑顔を見ながら、それぞれのクラスの担任を先頭に、お行儀よく列を組んで学校へと行進したのです。


 こういう行事は、子供達の自主性、主体的な行動力の育成には最適な行事だったのかもしれません。子供達の思い出にもなり、友情や仲間意識を育てることも出来たでしょう。



 しかし、先生方の苦労はまだまだ続きます。間もなく6年生150名の「倉沢山キャンプ」が始まるのですから。




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