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赤木の森の下影に  作者: 一人雅伸
赤木の森の下影に
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 <赤木神社>

 <赤木神社>


 赤木神社は、昔から木尚きなお村の村社です。

 周囲には杉の大木が林立し、その森の中に厳かに鎮座しています。

 その赤木神社の傍に建つ、自分の母校でもある木尚きなお小学校へ教師として戻って来ました。何か懐かしいような、照れくさいような気持ちでしたが、何より私が驚いたのは『校歌』が出来ていたのです。


 初めて聴いたときは燃えるような興奮を感じました。

   

   赤城の森の下影に    集いの鐘の鳴るところ

   わが学び舎に誇りあり  慈しみ合い敬いて

   伸び行く心ほがらかに  ・・・・・・・


 私はもともと音痴なので、声を張り上げて歌うのは憚られましたが、子供達に合わせて口ずさむと、心の底から愛校心が沸いてくるのです。


 木尚小学校は、全校生徒が千人も居る大きな学校で、1学年が4クラスもあります。私が担任したのは4年生でしたが、同じ学年の担任の先生方や多くの教職員、そして沢山の子供達に囲まれ、毎日を楽しく過ごすことが出来ました。


 そんな或る日の体育の時間、校庭に出ると女子ばかりしか居ません。男子が一人も居ないのです。女子に訊いても要領を得ません。仕方なく、女子だけで体育の授業を始めました。

 授業時間の半ば頃、男子が南門の方からぞろぞろと校庭に入ってきました。私は子供の頃から神経質で臆病な方で、人の行為を責めるのは苦手な方です。私は、口の前に人差し指を立て、女子達には黙って体育の授業を続けるようにして、そのまま何食わぬ顔で運動を続けていました。

 男子たちは、慌てて、こそこそと女子たちの中に入り込み、体育の授業に参加してきたのですが、これでこの問題は何事もなく済みそうだと安心したのかもしれません。授業時間終了とともに、2・3人の男子生徒が私のところに来て、


『先生ね。皆で赤木神社に行こう、どうせ新米先生だから怒られないよ。だから赤木神社に行って皆で遊んできたのだよ。』と無邪気に言うのです。


 一瞬、怒りがこみ上げ顔に血の気が上りました。怒鳴り出したい気持ちを抑えて、冷静を保ち、校舎に入ろうとしていたクラス全員を呼びとめ、全員の前で言いました。

「よいか、よく聞け!今日の事は、他所のクラスの子にも、両親や家族にも、他の人にも絶対に言うなよ。先生も黙っている。もし、他所のクラスの子等に知られたら、このクラスは大変なことになる。それから木尚小の校歌の心を忘れるなよ。」

出来るだけ顔を強張らせ、真剣に、シッカリした言葉で伝えました。


 それからは子供達の態度が変わってきました。担任の責任問題など子供には分からなかったでしょうが、私の表情や態度で「大変なこと」を理解してくれたのかもしれません。



 それから2・30年経って、そのクラスの一人に逢った時、思い出話の中に「赤木神社事件ね、先生の話を聴いて『新米先生と思っていると大変なことになるぞ。』と皆が思って深く反省しました。」と語ってくれました。




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