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042 『練習』

『練習』


「思うのだけれど、式の練習っておかしくないかしら? ああいう式って、練習するものではなく、その場の雰囲気を感じるものだと思うのだけれど」


「確かに、そうかもしれませんね。けど、当日どうやって並ぶかとか、動きやプログラムの確認はしておく必要があるとも思いますよ。ぶっつけ本番で慌しくなるのは微妙ですし」


「でもスポーツ大会や文学賞の表彰式、結婚式や葬式みたいに、『式』と名前がつくものっで、普通は練習なしでやるものよ? そう考えると、卒業式の練習もいらないと思わない?」


 そう、僕らが話している練習とは、卒業式の予行練習のことである。勿論、卒業生と在校生は別々に行われるし、授与や表彰、祝辞なんかは短縮されているが、やはり変な気分になる。


「まぁ確かにそうなのかもしれませんが、そこら辺は伝統行事ということで諦めるしかないんじゃないですか? まだ練習が一回しかないだけ、この学校はマシな方ですよ」


 僕の前にいた中学校では、何度も練習させられて、毎年うんざりしたものだ。


「一回でも、流石に毎年やれば嫌になるわよ。今回は送り出される側だとはいえ、今年で三回目、代わり映えもしない行事なのだから、いい加減飽きてくるわ」


「そもそも練習に代わり映えや、面白さを求めることが間違ってると思いますよ……」


「そうは言っても、つまらないのだからしょうがないじゃない。別に三年生なら、もうやりなれて練習なんていらないわけだし」


「それじゃあ、サボればよかったんじゃないですか? だってもう、三年生は通常の授業はないんですよね?」


 現に、毎年卒業式の練習は欠席する三年生も多いという。褒められることではないが、面倒で意味の無いことと思うならサボってしまえばよかったのではないだろうか?


「あら、本当に私がサボってしまってもよかったのかしら? 折角君のために来てあげたのに」


「僕のため? どういうことです? 先輩がサボらないことが、僕にどう影響するんですか?」


「だって、考えてみなさい。私が来なかったら、君は部室にどうやって入るつもりだったの?」


「……あっ」


 そういえば、そうである。部活の曜日だから先輩は絶対に来ると思っていたけれど、もし先輩がサボったなら部活にも来ず、鍵のない僕は待ちぼうけする羽目になっていたのだ。


「それじゃあ、先輩は僕のために来てくれた、ってことなんですか?」


「えぇ、そういう一面もあるわ。こうやって、君と先輩後輩として接するのも、もう僅かなのだから、残り少ない部活の日ぐらいは、一緒に過ごすのも悪くないでしょう?」


「あはは、嬉しいですけど、なんか面と向かってそう言われると照れますね……」


 少し芝居がかった先輩の言葉に、照れて苦笑してしまう。けれど、僕自身同じ気持ちだ。


 卒業式は一週間後。あまり考えないようにしてきたが別れはもう、すぐそこまで迫っていた。


卒業式の予行練習。

……しかし、式の練習というのはなんだか色々間違っている気がする、と昔から思ったりするんですよね。


そして、前回言いましたとおり、終盤です。

先輩の正体とか、色々明らかになってく予定です、のこり数話で。

一応、超常的な設定は使っておりませんので、どうか色々と推理してみてくださいませ。


それでは、次回もよろしくお願いいたします。

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