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043 『卒業』

『卒業』


 緩やかなクラシックの音楽が流れ、厳かなで落ち着いた雰囲気。綺麗に列を成しながら、三年生が入場し、一番前列に設けられた席についていく。


 そう、今日は卒業式。勿論、練習ではなく本番なので、いちいち格式ばって学生側からしたら退屈で面倒でしかない部分も、ノーカットで進行される。


 そしてようやく、開会の言葉、卒業生入場、国歌斉唱、といった長い前置きが終わる。


『えー、では次は、卒業証書の授与を行います。卒業生は名前を呼ばれたら壇上に上がり、証書を受け取ってください。それでは、一組の生徒は起立してください』


 司会者がそう言うと、卒業生のうち左側の一角の生徒が立ち上がる。そして、そのまま五十音順で名前が呼ばれ、それに伴って壇上に上がり卒業生が証書を受け取っていく。


 僕はそれを見ながら、一組ではないのか、と心の中で呟いた。


 実は、この卒業式で、先輩の名前を知ろうと思っていたのだ。しかし、浅田、安藤、伊藤、上田……、と、呼ばれた生徒の名前から考えて、先輩は一組ではなさそうだ。


 そもそも、もし先輩が壇上に上がったならすぐに分かる。先輩の姿は見慣れていることもあるし、背丈的に明らかに違うので、僕の座る席から壇上は遠くても他の生徒と区別はつく。


『それでは、次は二組の生徒、規律してください』


 考えている間に、一組の授与が終わり、次のクラスの授与が始まる。


 呼ばれた名前は、阿藤、安部、上島……、と続いていく。どうやら、二組も違うらしい。


『三組の生徒、起立してください』


 マイクで広げられた抑揚のない声に促され、三組の生徒が立ち上がる。


 呼ばれるのは、石田、伊野、伊里、海野……、という名前。三組でもないようだ。


『四組の生徒、起立してください』


 そう声をかけられ、右側の一角、最後の四組の生徒が立ち上がった。


 一組でも、二組でも、三組でもないのだとしたら、先輩は四組ということなのだろう。先輩から名前を教えてもらえず、かれこれ一年程。ようやく彼女の名前が分かる日がきたのだ。


 ――けれど、そんな僕の望みは裏切られることになる。


 呼ばれたのは、浅葱、宇都宮、大井……、と続く名前。先輩の名前でありそうなものはないし、まず姿や背丈からして全然違う。一体、どうなっているのか? 先輩は、どこに?


 けれど、僕の混乱など関係なく式は進む。最後の卒業生が呼ばれ、証書の授与が終わった。


 ずっと司会の声と壇上に注目していたのに、先輩らしき人物は一人もいなかった。欠席者も名前を呼ばれていたし、授与の終わりが宣言されたのだから別枠授与ということもない。


 呆然としているうちに、卒業式は終わっていた。どんな内容だったかも覚えていない。


 帰りの学活を終えると、僕はすぐに教室を飛び出した。先輩と過ごした、あの部室へと――、


珍しく、次回へ続く、的な


というわけで、本格的に終幕へ向けてきました。

けど、まだ7話残ってたりします。


多いととるか、少ないと取るかは微妙なところですかね。


それでは、次回もよろしくお願いいたします。

願わくば、最後までお付き合いいただけると嬉しいです。

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