040 『金』
『金』
「お金って、欠陥があると思わない?」
「また唐突ですね。それで、欠陥ってどこがですか? 欠陥だけじゃ分かりませんよ」
唐突な先輩の問いかけに質問を返す。なんだか、このパターンは久しぶりな気がする。
「それもそうね。色々あると思うのだけれど、一番の欠陥は、保存が利くことだと思うわ」
「保存が利くって、保存できなきゃどうするんです? 寧ろ、それは利点じゃないんですか?」
「確かに、そういう一面もあると思うわ。それにお金は持ち運びも便利だし、物々交換と違い、なんとでも交換できて、価値が一定に保たれている利点もあるわね」
すらすらと、お金のメリットを挙げていく先輩。しかし、欠陥について話しているんじゃなかったのだろうか? これだと、そのままお金を使って何も問題ないような気がする。
「だったら、そのどこに欠陥があるんですか? 今のところ、利点だらけじゃないですか?」
「確かに利点も多いのだけれど、それ以上に深刻な欠陥に繋がるのよ、いまのお金、通貨制度というものはね。例えばの話だけれど、君がもし宝くじか何かで大金を手にしたらどうする?」
「……そうですね、額にもよりますが、軽く欲しいものを買った後、残りは貯金ですかね」
お金なんて、使えばすぐになくなるものだ。だから少し使って、残りは貯金しておくと思う。
「そう、その貯金が問題なのよ。貯金されたお金は使われず、ずっとそのままになるわよね。そうするとお金が使われないから物が売れない、それで更に景気が悪くなってしまうのよ」
「なるほど。そう言われると確かに、そんなような気がしてきます。とりあえず貯金、っていう意識はやっぱりありますからね。だから、貯められるお金は欠陥があるってことですか?」
ようやく先輩の言いたいことが理解できてきた。いつもながら、説明がとても回りくどい。
「えぇ、そうよ。お金は価値が変わらないから貯めることができる、それが一番の欠陥なのよ」
「それは分かりましたけど、じゃあどうするっていうんですか? 問題があっても、お金がないと今の世の中は回りませんよ。まさか、物々交換ってわけにもいかないでしょうし」
「簡単よ、お金に使用期限をつけるの。そうすれば貯金する人は減って、消費も増えるはずよ」
「期限をつけるって、簡単に言いますがどうやってですか? 確かに、お金に期限がつけば、貯金をする人も減るでしょうし、景気も良くなるかもしれませんけど、そんなの無理ですよ」
もし期限なんかがついたら、期限切れ間近のお金の押し付け合いが始まってしまうだろう。
「えぇ、普通の通貨につけるのは難しいと思うわ。けど、電子マネーならどうかしら? 通貨を全て電子マネー製にして、受け取ってから一定期間が経つごとに目減りするようにするのよ」
「むぅ、それなら、確かにまだ問題はありそうだけれど、実現も不可能ではない、かも……?」
「まぁこんなことを考えても、意味は無いのだけれどね。政治家に何て、なれる筈がないもの」
「いつもながら、どうしてそういう全部台無しにすること言いますかね……」
脱力しつつも、こんな先輩と過ごす日々が後どれだけか考え、憂鬱になってしまう僕だった。
……すいません、残業で死んでおりました。
あと、更新予約も忘れていたという。
そんなわけで、連続二話投稿してます。
一話目です。
お金の話。
昔、ガガガの某経済ラノベであったネタの、期限付き通貨というのはよくできてるなぁ、と思った結果書いたもの。
ただ、実際そんなものができたところで、金や土地とかの、現金以外のもので資産を溜め込むだけな気もしますけど。